試料に中性子,荷電粒子などを照射して,目的とする元素を放射化し,その放射能の測定からもとの元素の定性・定量分析を行う方法。これと類似の用語に放射分析と放射化学分析がある。前者は放射性物質を一種の指示薬として利用する分析法であり,後者は初めから放射性物質を含む試料を対象とした分析であって,いずれも放射化分析とは区別される。
いま分析対象とする安定同位体核種N個を含む試料を時間tだけ照射したとすると,生成する放射性核種の放射能の強さAは次式で表される。
A=Nfσ(1-e⁻λt)
fは照射した粒子束の密度(粒子数/cm2・s),σは目的核種の核反応断面積,λは生成した放射性核種の崩壊定数である。通常σ,λはわかっており,fは実験によって定まるのでAを正確に測定すればNを求めることができる。Aの絶対測定は容易でなく,試料の受けた粒子束fを正確に知ることが難しい場合が多いので,あらかじめ組成のわかった標準試料と並べて照射し,生成する放射能を同一条件で測定して,その相対値よりNを求めることがよく行われる。放射化に利用する核反応は,(n,γ),(n,α),(n,p),(d,p)など種々のものがあるが,原子炉の中で(n,γ)反応を行うのが最も一般的である。
放射化分析の特徴はきわめて検出感度が高いことにあり,対象元素にもよるが,10⁻10~10⁻12g程度まで検出可能な場合もある。金属や半導体中の微量元素の定量や生物試料中の微量成分の定量などきわめて広い範囲で利用されている。
執筆者:石榑 顕吉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
試料に中性子,高エネルギー荷電粒子などを衝撃し,試料中のある核種に原子核反応を起こさせ,試料を放射性のものとし,生成核種からの放射線の種類,エネルギー,半減期,および放射線強度から,もとの元素を分析する方法.分析方法として,感度が高く,元素の化学形に関係なく,一般に迅速で,操作が簡単である.化学分離操作を行わず,非破壊でγ線スペクトロメーターにより定性・定量分析を行うことが多い.熱中性子束密度 1013 n cm-2 s-1 の原子炉で,1時間照射するときの分析感度は,Dy,Euで 10-7 μg,Mn,Inで 10-6 μg,Co,Rh,Ir,Auで 10-5 μg,Ar,Cu,As,Pd,Ag,I,Naで 10-4 μg のオーダーである.加速器の陽子,重陽子,α粒子,重イオン粒子などで試料を衝撃する方法,14 MeV の中性子発生装置からの中性子を用いる方法,あるいは 252Cf からの中性子を利用する放射化分析法も行われている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
非放射性の試料に高エネルギーの粒子、たとえば中性子、陽子、α(アルファ)粒子、γ(ガンマ)線、光子などを衝撃させて、試料中の諸元素から核反応によって生成された放射性核種の放射能の特性とその強さの測定から、その元素の確認、同定、定量を行う方法。1936年にハンガリーのヘベシーらによって始められた。近年原子炉が利用しやすくなったので、そこで多量に発生する熱中性子を照射して試料を放射化することが多い。放射化分析は、化学的にきわめて近い元素でも、生成する核種の放射能の特性が異なるので、化学的に非常に似た元素の混合物の分析や同位体存在率の測定に利用されているのをはじめ、多元素の同時定量ができ、試料が見かけ上なんらの破壊も受けないために、文化財のような貴重試料の分析にしばしば利用されている。
[高田健夫]
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