放射化分析(読み)ホウシャカブンセキ(その他表記)activation analysis

デジタル大辞泉 「放射化分析」の意味・読み・例文・類語

ほうしゃか‐ぶんせき〔ハウシヤクワ‐〕【放射化分析】

試料荷電粒子中性子あるいは放射線で衝撃し、生じた放射性核種人工放射能測定して、試料中の元素検出定量を行う分析法。試料を破壊せずに分析でき、検出感度が高い。

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精選版 日本国語大辞典 「放射化分析」の意味・読み・例文・類語

ほうしゃか‐ぶんせきハウシャクヮ‥【放射化分析】

  1. 〘 名詞 〙 試料に放射線をあて、目的とする元素に人工の放射性を与え、その放射能の特性、強度から、元素の検出・定量を行なう分析法。〔犯人を追う科学(1965)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「放射化分析」の意味・わかりやすい解説

放射化分析 (ほうしゃかぶんせき)
activation analysis

試料に中性子,荷電粒子などを照射して,目的とする元素を放射化し,その放射能の測定からもとの元素の定性定量分析を行う方法。これと類似の用語に放射分析放射化学分析がある。前者は放射性物質を一種の指示薬として利用する分析法であり,後者は初めから放射性物質を含む試料を対象とした分析であって,いずれも放射化分析とは区別される。

 いま分析対象とする安定同位体核種N個を含む試料を時間tだけ照射したとすると,生成する放射性核種の放射能の強さAは次式で表される。

 ANfσ(1-eλt

fは照射した粒子束の密度(粒子数/cm2・s),σは目的核種の核反応断面積,λは生成した放射性核種の崩壊定数である。通常σ,λはわかっており,fは実験によって定まるのでAを正確に測定すればNを求めることができる。Aの絶対測定は容易でなく,試料の受けた粒子束fを正確に知ることが難しい場合が多いので,あらかじめ組成のわかった標準試料と並べて照射し,生成する放射能を同一条件で測定して,その相対値よりNを求めることがよく行われる。放射化に利用する核反応は,(n,γ),(n,α),(n,p),(d,p)など種々のものがあるが,原子炉の中で(n,γ)反応を行うのが最も一般的である。

 放射化分析の特徴はきわめて検出感度が高いことにあり,対象元素にもよるが,10⁻10~10⁻12g程度まで検出可能な場合もある。金属や半導体中の微量元素の定量や生物試料中の微量成分の定量などきわめて広い範囲で利用されている。
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化学辞典 第2版 「放射化分析」の解説

放射化分析
ホウシャカブンセキ
radioactivation analysis

試料に中性子,高エネルギー荷電粒子などを衝撃し,試料中のある核種に原子核反応を起こさせ,試料を放射性のものとし,生成核種からの放射線の種類,エネルギー,半減期,および放射線強度から,もとの元素を分析する方法.分析方法として,感度が高く,元素の化学形に関係なく,一般に迅速で,操作が簡単である.化学分離操作を行わず,非破壊でγ線スペクトロメーターにより定性・定量分析を行うことが多い.熱中性子束密度 1013 n cm-2 s-1 の原子炉で,1時間照射するときの分析感度は,Dy,Euで 10-7 μg,Mn,Inで 10-6 μg,Co,Rh,Ir,Auで 10-5 μg,Ar,Cu,As,Pd,Ag,I,Naで 10-4 μg のオーダーである.加速器の陽子,重陽子,α粒子,重イオン粒子などで試料を衝撃する方法,14 MeV の中性子発生装置からの中性子を用いる方法,あるいは 252Cf からの中性子を利用する放射化分析法も行われている.

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「放射化分析」の意味・わかりやすい解説

放射化分析
ほうしゃかぶんせき
radioactivation analysis

非放射性の試料に高エネルギーの粒子、たとえば中性子、陽子、α(アルファ)粒子、γ(ガンマ)線、光子などを衝撃させて、試料中の諸元素から核反応によって生成された放射性核種の放射能の特性とその強さの測定から、その元素の確認、同定、定量を行う方法。1936年にハンガリーのヘベシーらによって始められた。近年原子炉が利用しやすくなったので、そこで多量に発生する熱中性子を照射して試料を放射化することが多い。放射化分析は、化学的にきわめて近い元素でも、生成する核種の放射能の特性が異なるので、化学的に非常に似た元素の混合物の分析や同位体存在率の測定に利用されているのをはじめ、多元素の同時定量ができ、試料が見かけ上なんらの破壊も受けないために、文化財のような貴重試料の分析にしばしば利用されている。

[高田健夫]

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百科事典マイペディア 「放射化分析」の意味・わかりやすい解説

放射化分析【ほうしゃかぶんせき】

放射性同位元素を利用した分析法の一つ。試料に中性子,γ線,荷電粒子などをあてて目的とする元素を人工放射性元素に変換し,その放射能の種類,強さなどの測定からもとの元素の定性・定量を行う分析法。微量成分の分析法としてすぐれる。→放射化学分析
→関連項目放射性同位元素

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「放射化分析」の意味・わかりやすい解説

放射化分析
ほうしゃかぶんせき
radioactivation analysis

放射性同位体を利用した高感度化学分析法の1つ。試料を原子炉中に入れて熱中性子で照射し,試料中の目的元素を放射性元素に変えたのち化学的に分離し,その放射能強度を測定して目的元素を定量する。熱中性子の利用が一般であるが,ほかの荷電粒子,電子線加速器によって発生した高速中性子,γ線による核反応などを利用することもある。生成放射性核種のγ線スペクトルと生成放射性同位元素の半減期とにより化学的分離を行わずに直接問題の核種を同定,非破壊的に定量できる。現在の元素分析法としては最高の感度をもち,超微量成分の定量に最も信頼すべき方法の1つである。

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