キリストの生涯のできごとを1年を周期として記念するために,キリスト者の間に形成された教会の暦。その1年を〈典礼暦年church year〉という。旧約時代の三大祝日から,過越の祭と五旬祭を受け継いで,教会は主の過越(キリストの受難・死・復活)とその50日目に起こった聖霊降臨のできごとを毎年祝うようになった。これがキリスト教の二大祝日,復活祭と聖霊降臨祭である。とくに,復活祭に洗礼を授ける準備のため,聖書のふさわしい朗読個所が選ばれ,40日ほどの間,洗礼の準備が行われたが,これが四旬節となった。同様に復活祭に洗礼を受けた新しい信者の秘跡教育のために適した聖書の朗読個所が選ばれ,復活節の起源となった。他方,神の栄光の現れという旧約以来の顕現の秘義は,主の降誕や公現のできごとに受け継がれ,クリスマス(降誕祭)と公現祭となった。四旬節や復活節にかたどられて待降節や降誕節もできたが,いずれもキリストのできごとを記念する福音の個所を中心に,その日の聖書の朗読個所が固定したことによって,教会暦に四つの季節の固有な色彩が生じた。
さらに教会暦にとって重要なのは,年の周期ばかりでなく週の周期である。7日目を安息日として労働を休み,礼拝集会を行った旧約の会堂の習慣は,その翌日,週の初めの日にキリストが復活したことを記念するキリスト者によって受け継がれ,週の周期は人類の暦に欠くことのできないものとなった。したがって〈主の日(主日)〉と呼ばれる日曜日は,その日に朗読される福音のできごとが記念される主の祝日であるとともに,毎週祝う小さな復活祭なのである。教会暦はこの主日を中心に構成されている。したがって,キリストのできごとを祝う主の祝日はおもに主日(日曜日)に当たるのであるが,ミトラス教の太陽の誕生日の祭がキリスト教化されるようになり,東西諸教会の交流もあって,クリスマスが12月25日に,公現祭が1月6日に祝われるようになり,月日で定まる祝日が生じた。やがて,キリストの受難死と復活をあかしした聖母や使徒をはじめ,殉教者の記念日がたいせつにされ,あるものは祝日と呼ばれ,教会暦の中に月日によって固定した多くの祝日(固定祝日)ができたので,復活祭をはじめ,月日の一定していない祝日は移動祝日と呼ばれるようになった。右に典礼暦年における典礼季節と主日・祝祭日のおもなものを一覧表にして掲げる。祝日のうちとくに盛大に祝われるものを祭日と呼ぶ。表には〈祭〉〈祝〉の略号を付記した(聖人の祝日(祝)は一部省略した)。主としてカトリック教会の改訂暦による。東方正教会,アングリカン・チャーチ,ルター派教会,そのほかのプロテスタント諸教会にはそれぞれ異なった名称や祝祭日がある。
→祝祭日
執筆者:土屋 吉正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
キリストの救いの生涯を1年間の周期に当てはめて、日々これを記念するようにつくられた教会独特の暦。教会によってその構成はさまざまであるが、カトリック教会ではこれを典礼暦とよび、以下のような構成になっている。
1年は、キリストの降誕を待ち望む「待降節(たいこうせつ)」、その誕生を祝う「降誕節」、キリストの復活祭を迎える準備の「四旬節」、復活を祝う「復活節」の期間と、それ以外の「年間」の時期に区分される。
キリスト教のもっとも大きな祝日は、一般には降誕祭、つまりクリスマスと思われているが、教会で最大の祝日は、キリストが十字架の死によって救いのわざを完成し、死からよみがえったことを祝う復活祭である。復活の大祝日の前の週は聖週間とよばれるが、そのなかでも聖木曜日は最後の晩餐(ばんさん)、聖金曜日と聖土曜日は受難と死去、そして続く日曜日に復活が盛大に祝われるのである。一般社会の暦ではそれぞれの祝日も連関性を欠くが、教会の暦では、冬にはキリストの誕生と聖家族、春にはキリストの受難と十字架の死と復活と聖霊降臨祭、夏には聖母マリアの被昇天祭、秋にはキリストの功徳(くどく)によって救われた天国の諸聖人と諸死者を記念する、というように連関して、キリスト信者がキリストの生涯と教会の歴史に日々の生活をあわせるように構成されている。
四つの典礼季節以外の時期である「年間」は「主の洗礼」の祝日から「王であるキリスト」の祝日までにまたがる期間で、34週にわたり、それぞれの聖節への準備が行われ、また教会で聖人の位にあげられた多くの聖人たちの記念が行われる。
教会では主日(しゅじつ)(日曜日)ばかりでなく、毎日その日の祝いや記念にあわせて、ミサ聖祭が捧(ささ)げられ、1年の周期のなかで、毎日のミサの聖書朗読の箇所が決められているが、主日の朗読箇所は3年周期、週日のものは2年周期に配分され、それぞれの日にあわせて、信者や求道者が旧約・新約両聖書の豊かさに触れるように考慮されている。
ミサ聖祭の祭式は一定しているので、毎日もしくは主日に同じ祭式が繰り返されているようにみえるが、その内容は教会暦(典礼暦)に従って日々これ新たに捧げられているのである。
[安齋 伸]
『カトリック中央協議会編・刊『典礼暦教会所在地』(毎年刊行)』▽『典礼司教委員会編『典礼暦と毎日のミサの聖書朗読』(毎年刊行・カトリック中央協議会)』
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