福井県中央部,若狭湾東端の支湾。西は敦賀半島の立石岬,東は杉津(すいづ)の西の岡崎をもって湾口とし,南に深く入り込んで湾奥に港湾都市敦賀が位置する。断層運動による陥没性の湾入で水深が大きく,海岸沿いに20mの等深線が走り,敦賀港内でも11mに達する。この水深と北西風をさえぎる敦賀半島によって,敦賀港は今も防波堤など大規模な外郭施設を必要としない。南につづく陥没性の低地を笙(しよう)ノ川,黒河(くろこ)川などが埋め立てた敦賀平野を除くと,湾岸は平地が乏しく,山脚が海に迫って所々に小岬を突出させ,その奥の小湾に狭い砂浜が点在する。横浜,杉津,赤崎,鞠山,松原,名子,常宮,沓(くつ)の砂浜はいずれも夏季海水浴客でにぎわう。風景は美しく,全域が若狭湾国定公園に入り,特に湾口に近い杉津と西行の歌で知られ芭蕉も訪れた色ヶ浜は名高い。湾内の漁業は不振で,西岸(西浦)はエビの打瀬網など零細漁業を営むが,東岸(東浦)はすべて海を背にする農村である。国道8号線の通る東浦に対し,西浦は陸の孤島といわれたが,浦底に日本原電敦賀発電所が立地して道路は著しく改善された。しかし,産屋(うぶや)など古い習俗は急速に失われ,半農半漁村で,神功皇后を祭る常宮神社(秀吉の戦利品という新羅王の銘のある国宝朝鮮鐘をもつ)がある常宮などは民宿村に一変した。
執筆者:島田 正彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
福井県中央部、若狭湾(わかさわん)内のもっとも東の湾入。西は敦賀半島の立石(たていし)岬、東は杉津(すいづ)の岡崎を結ぶ線を湾口とする陥没性の湾入で、20メートルの等深線が海岸沿いに走り、敦賀港内でも11メートルに達する。南に続く陥没性低地の敦賀平野を除くと湾岸は平地に乏しいが、小さな岬と湾に砂浜の入り交じる風景が松原海岸以西を若狭湾国定公園、東岸の杉津を越前(えちぜん)加賀海岸国定公園とする。湾内の漁業は不振で、東岸はすべて海を背にする農村である。
[島田正彦]
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