デジタル大辞泉
「乏しい」の意味・読み・例文・類語
ともし・い【▽乏しい/▽羨しい】
[形][文]とも・し[シク]
1 「とぼしい1」に同じ。
「旅費が―・いから」〈宙外・独行〉
2 「とぼしい2」に同じ。「―・い生活を送る」
3 心がひき込まれるようである。珍しくておもしろい。
「―・しき君は明日さへもがも」〈万・三五二三〉
4 うらやましい。自分もそうなりたい。
「身の盛り人―・しきろかも」〈記・下・歌謡〉
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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ともし・い【乏・羨】
- 〘 形容詞口語形活用 〙
[ 文語形 ]とも
し 〘 形容詞シク活用 〙 - ① 物事が不足している。不十分である。少ない。とぼしい。
- [初出の実例]「思ほしき ことも語らひ 慰むる 心はあらむを 何しかも 秋にあらねば 言問の 等毛之伎(トモシキ)子ら」(出典:万葉集(8C後)一八・四一二五)
- 「馬にはわづかに草の糜(かゆ)ともしき程に与へて」(出典:仮名草子・浮世物語(1665頃)一)
- ② 財物が少ない。貧しい。貧乏である。とぼしい。
- [初出の実例]「乏(トモシキ)者(ひと)の訴は水をもて石に投ぐるに似たり」(出典:日本書紀(720)推古一二年四月(図書寮本訓))
- ③ 珍しくて心がひかれる。めったに見られないくらい、すばらしい。まれなので、新鮮な感じがする。
- [初出の実例]「見まく欲り来(こ)しくも著(し)るく吉野川音のさやけさ見るに友敷(ともしく)」(出典:万葉集(8C後)九・一七二四)
- ④ 自分にはないものを持っている人などをうらやましく思う。
- [初出の実例]「日下江の 入江の蓮 花蓮 身の盛り人 登母志岐(トモシキ)ろかも」(出典:古事記(712)下・歌謡)
- 「主人は大分の祿をくだし給はれば何か金銀の小柄なればとて乏(トモ)しくは存ぜざる所なり」(出典:浮世草子・新可笑記(1688)五)
乏しいの補助注記
オソル(恐)とオソロシとの関係と同じく、トム(求)から派生した語であろう。
乏しいの派生語
ともし‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
乏しいの派生語
ともし‐さ- 〘 名詞 〙
とぼし・い【乏】
- 〘 形容詞口語形活用 〙
[ 文語形 ]とぼ
し 〘 形容詞シク活用 〙 - ① 足りない。十分でない。ともしい。
- [初出の実例]「よろづに、とぼしき物、つゆなし」(出典:古本説話集(1130頃か)六二)
- 「東風君の様な経験の乏しい青年諸君は」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉一一)
- ② まずしい。ともしい。
- [初出の実例]「最(いと)痛く貧(トホシキ)者は誠に返す事を得じと唱ふべきを」(出典:私聚百因縁集(1257)八)
乏しいの語誌
( 1 )トモシの子音交替形。中世ではトモシ・トボシ両形が用いられているが、近世に入るとトボシに落ちついた。
( 2 )上代ではトモシの形で、心ひかれる、うらやましい等の意味にも用いられたが、トボシの形では、少ない、乏しい、貧しいの意味でのみ用いられている。
乏しいの派生語
とぼし‐げ- 〘 形容動詞ナリ活用 〙
乏しいの派生語
とぼし‐さ- 〘 名詞 〙
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
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