文官統制(読み)ぶんかんとうせい

日本大百科全書(ニッポニカ)「文官統制」の解説

文官統制
ぶんかんとうせい

防衛省内で、政策の専門家である防衛官僚(文官、背広組、内部官僚)が自衛官(武官、制服組)よりも優位であるという制度。2015年(平成27)に法的根拠であった防衛省設置法第12条の条文が撤廃されたことに伴い廃止された。防衛官僚が文民統制シビリアン・コントロール)を行う防衛大臣ら政治家を支え、自衛官組織の細部にまで介入・統制する仕組みで、「文官優位」ともよばれた。

 日本では第二次世界大戦前、天皇の統帥権の独立を名目に軍部が独走して悲惨な戦争を招いた経験から、旧内務省系官僚が旧軍隊出身の制服組(自衛官)を統制する文官統制が始まった。戦後の歴代内閣は、文官統制を文民統制の一部、あるいは文民統制を強化する制度として容認し、日本国憲法や自衛隊法に定められた国会や内閣による文民統制に加え、文官統制が文民統制を支える機能の一つと考えてきた。このため、防衛官僚幹部が「防衛参事官」として防衛庁長官(後の防衛大臣)を補佐し、事実上、制服組を統制する時代が長く続いた。しかし元防衛事務次官の汚職事件、イージス艦情報漏洩(ろうえい)事件、イージス艦「あたご」の漁船衝突事件などの不祥事が相次ぎ、文官が迅速で正確な情報収集や他省庁との調整を妨げ、汚職の温床になっているとの弊害が指摘されるようになった。このため、2009年に防衛参事官制度が廃止され、新たに防衛官僚幹部に制服組トップの統合幕僚長らを加えた「防衛会議」が発足。2015年の改正防衛省設置法成立で、防衛官僚幹部と自衛官幹部は対等の立場で防衛大臣を補佐するようになった。防衛官僚がトップを務めた「運用企画局」は廃止され、自衛官中心の「統合幕僚監部」に一元化された。これにより日本がミサイル攻撃を受けた際や大規模災害が発生した際には、統合幕僚長から防衛官僚を経ずに直接、防衛大臣へ情報が入るようになった。なお、防衛省の人事や予算編成については、従来どおり防衛官僚が担当する。

[編集部 2015年10月20日]

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デジタル大辞泉「文官統制」の解説

ぶんかん‐とうせい〔ブンクワン‐〕【文官統制】

防衛省で、文官である官僚自衛官より優位に立ち、統制していた仕組み。防衛庁設置当初から、文民統制を厳格化するために制度化。内局官房長や局長ら文官が防衛参事官として長官を補佐し、自衛隊の運用にも主導的に関与した。平成19年(2007)に防衛省となった後も維持されたが、平成21年(2009)に参事官制度を廃止。平成27年(2015)には、文官幹部と各幕僚長らの対等化が図られ、前者が事務、後者隊務について、それぞれ大臣を補佐する制度に改められた。
[補説]廃止により、文民統制がないがしろにされるとの声もあるが、政府は、防衛大臣や内閣総理大臣が文民である国会議員(常勤の自衛官は退官しないと立候補できない)から選ばれている以上、問題はないとしている。

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