統合幕僚監部(読み)トウゴウバクリョウカンブ

デジタル大辞泉 「統合幕僚監部」の意味・読み・例文・類語

とうごう‐ばくりょうかんぶ〔トウガフバクレウカンブ〕【統合幕僚監部】

防衛省の、防衛大臣に直属する特別の機関。陸海空各自衛隊の一体的な行動を円滑に遂行するための計画を立て、統合訓練を行い、防衛大臣命令を執行する。長官統合幕僚長。平成18年(2006)3月従来統合幕僚会議を三自衛隊の統合運用ができるように改組して新設

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「統合幕僚監部」の意味・わかりやすい解説

統合幕僚監部
とうごうばくりょうかんぶ

自衛隊を一元的に統合運用するために、自衛隊創隊以来の抜本的な組織改革によって、2006年3月に統合幕僚会議を廃止して、新たに設置された機関。統合幕僚監部設置に伴い統合幕僚会議議長は廃止され、防衛大臣に対して軍事専門家として一元的に補佐する統合幕僚長のポストが新設される。2004年(平成16)12月に閣議決定された新たな防衛計画の大綱で「統合運用に必要な中央組織を整備する」と明記されたことを受けて、05年に防衛二法(防衛庁設置法、自衛隊法)を改正したことにより設置の準備が整った。これまでは自衛隊の運用(作戦行動)については陸・海・空各自衛隊ごとの運用が基本で、必要により統合運用となっていたが、この組織改革によって統合運用が基本となった。具体的には統合幕僚長が自衛隊の「行動の計画」(作戦計画)を立案し、運用に関しては陸・海・空自衛隊を指揮し、一元的に防衛大臣を補佐し、自衛隊に対する防衛大臣の指揮は統合幕僚長を通じて行い、自衛隊に対する大臣の命令は統合幕僚長が執行することとなる。このための幕僚機関として統合幕僚監部が設置される。この幕僚組織は4部3官8課で構成されている。統合幕僚長と新たに設置された統合幕僚副長の下に、総務部(J-1)、運用部(J-3)、防衛計画部(J-5)、指揮通信システム部(J-6)、首席後方補給官(J-4)、首席法務官、報道官が置かれ、情報本部(J-2)は防衛大臣の直轄組織となり、その下に新たに統合情報部が設置されている。陸・海・空各幕僚長は意思決定プロセスからはずれ、統合幕僚長が一元的に大臣を補佐することになり、また各幕僚長の任務は運用以外の隊務に限定された。これに伴い各幕僚監部にあった運用部門のスタッフは統合幕僚監部に集められ、運用部局は廃止される。これらの措置により、従来より統合運用を基本としてきた米軍と同じスタイルになり、米軍との共同作戦能力が強化されることになる。

[松尾高志]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「統合幕僚監部」の意味・わかりやすい解説

統合幕僚監部
とうごうばくりょうかんぶ

防衛省の特別の機関。防衛大臣の指揮監督を受けて,陸上幕僚監部海上幕僚監部航空幕僚監部の事務を掌理する。 1954年統合幕僚会議として発足。 2006年統合幕僚会議が廃止され,統合幕僚監部となる。統合幕僚監部の長は統合幕僚長。陸上幕僚長には陸上自衛官が,海上幕僚長には海上自衛官が,航空幕僚長には航空自衛官があたり,それぞれ陸上自衛隊海上自衛隊航空自衛隊の隊務に関する事務を掌理する。所掌事務には,防衛・警備計画の立案,教育訓練・行動・編成・装備・配置・経理・調達・補給・保健衛生・職員人事計画の立案,隊務の能率的運営の調査・研究,部隊等の管理・運営の調整などに関することがある。各幕僚監部には幕僚長以下,幕僚副長,部,課が設けられている。

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知恵蔵 「統合幕僚監部」の解説

統合幕僚監部

自衛隊には従来、陸、海、空3自衛隊の調整機関として統合幕僚会議があり、統合幕僚会議議長と陸、海、空の幕僚長らが協議して部隊運用をすることになっていた。だが各自衛隊は日本防衛を考える際にも我田引水の論を唱えて別個の作戦構想を描くことが多く、統合幕僚会議は名目的存在だった。近年、陸上自衛隊が海上自衛隊の輸送艦や、航空自衛隊の輸送機で海外派遣されたり、弾道ミサイル防衛などでも、3自衛隊の緊密な協力が必要となる機会が多く、他国では半世紀も前から行っている「統合運用」を取り入れることとなり、2006年3月、同会議は統合幕僚監部に改組された。統合幕僚会議議長は「統合幕僚長」となって防衛庁長官を一元的に補佐し、作戦に関する長官の指示・命令は全て統合幕僚長を通じて出される。3自衛隊の幕僚監部は作戦以外の訓練や人事、装備などを担当する。だが実際に3自衛隊が十分統一した行動を取れるか否か、疑問の余地は少なくない。

(田岡俊次 軍事ジャーナリスト / 2007年)

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