新撰髄脳(読み)シンセンズイノウ

デジタル大辞泉 「新撰髄脳」の意味・読み・例文・類語

しんせんずいのう〔シンセンズイナウ〕【新撰髄脳】

平安中期の歌論書。1巻。藤原公任ふじわらのきんとう著。成立未詳和歌創作指針を示し、初期歌学書として重要な位置を占める。

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精選版 日本国語大辞典 「新撰髄脳」の意味・読み・例文・類語

しんせんずいのう‥ズイナウ【新撰髄脳】

  1. 平安中期の歌論書。一巻藤原公任著。一一世紀初期の成立。調和的な歌に理想を求め、形式主義的な詠作を排し、和歌の創作の指針を与えており、簡略ではあるが、初期の歌論として注目すべきもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「新撰髄脳」の意味・わかりやすい解説

新撰髄脳 (しんせんずいのう)

11世紀初頭,和歌の権威藤原公任(きんとう)が書いた歌論書。〈凡(およ)そ歌は心深く姿きよげに心にをかしき所あるをすぐれたりといふべし〉という秀歌理念を掲げ,秀歌例を引いたのち,歌病(かへい)論,用詞論,本歌取り論などを解説する。簡潔な記述ながら,前代専門歌人の職人的技巧をおさえ,上流貴族歌人の文芸として,気品ある優美な抒情を尊重した最初の組織的歌論として重要な役割を果たした。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新撰髄脳」の意味・わかりやすい解説

新撰髄脳
しんせんずいのう

平安中期の歌学書。藤原公任(きんとう)著。成立年時は未詳。現存本は序文を欠き、種々不整備な点がみられることから、脱落説、錯簡説などがある。内容は、秀歌論、秀歌例、歌病論、本歌論、歌体論(旋頭歌(せどうか)のみ)、歌枕(うたまくら)論にまで及び、体系だった本格的な歌論書の形態を有している。「およそ歌は心深く、姿清げにて、心にをかしき所あるをすぐれたりといふべし」という秀歌論の叙述はとくに有名で、その「心姿」の論は、公任歌論の真髄を示すものとして、後代の歌論に多大な影響を与えた。

[平田喜信]

『久松潜一・西尾実校注『日本古典文学大系65 歌論集 能楽論集』(1961・岩波書店)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新撰髄脳」の意味・わかりやすい解説

新撰髄脳
しんせんずいのう

平安時代中期の歌学書。藤原公任 (きんとう) 著。成立年未詳。現存伝本には多少の脱落があるらしい。内容は,情感,発想,表現の調和を説き,歴史的に例歌を示した秀歌論,柔軟な態度による歌病論,旋頭歌 (せどうか) について論じた歌体論,歌語について述べた用詞論から成る。和歌の作法書として形骸的な詩論の模倣から抜け出ている点に意義がある。

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世界大百科事典(旧版)内の新撰髄脳の言及

【歌論】より

…歌合のこうした要請から,〈歌論〉は隆盛に向かい,精密化されていったのである。まず,10世紀末から11世紀前半に活躍した藤原公任の著作《新撰髄脳(しんせんずいのう)》と《和歌九品(わかくほん)》がある。〈凡そ歌は心深く,姿清げにて,心にをかしきところあるをすぐれたりといふべし〉(《新撰髄脳》),〈詞たへにして余りの心さへあるなり〉(《和歌九品》)と秀歌の条件が記されているとおり,〈心〉と〈言葉〉の調和を重視しつつ,漠然とながら,余情という一つの価値規準への回路を開き,心詞の関係に歴史的方向性を与えたのであった。…

【姿】より

…したがって姿は生まれつきのものではなく,心によって変えられると考えられた。歌学の用語として姿ということばをとりあげたのは,平安時代中期の藤原公任で,その歌論書《新撰髄脳》は,心と詞の調和を説いた紀貫之の《古今和歌集》仮名序の論を発展させ,心と詞が一体になったときにすぐれた歌が生まれ,それは歌の姿の美しさとしてあらわれると説いている。さらに歌の理想の姿は〈余りの心〉をもたらすという公任の論が,藤原俊成の〈余情〉,藤原定家の〈有心〉へと展開したことが示すように,歌の姿の論議は歌論の中心の一つになった。…

※「新撰髄脳」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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