新聞評議会(読み)しんぶんひょうぎかい(英語表記)press council

改訂新版 世界大百科事典 「新聞評議会」の意味・わかりやすい解説

新聞評議会 (しんぶんひょうぎかい)
The Press Council

新聞の自由,責任,水準を維持するために設けられたイギリスの自主審査機関。第2次世界大戦後におけるマス・メディアの自主規制の一方式。戦前戦中の経験から新聞界の〈独占〉集中化がニュース報道をゆがめ,意見の多様性を抑圧することを恐れる世論にこたえて,イギリス議会は1946年〈新聞に関する王立委員会〉を設置した。委員会は49年報告書を提出,その勧告に基づき,53年より報道内容についての苦情を受け,それを徹底的に審査して公表する機関として発足した。当初業界メンバーのみで運営されていたが,63年,73年,そして78年に改組された。議長1名のほか,業界選出評議員18名と業界外から選出される評議員18名により運営されるようになっている。自由の侵害,集中化,誤報など広範な問題を調査したうえ,結果を公表し,改善のアドバイスはするが,なんらの強制力はもたない。ただの飾りにすぎないとの批判もあるが,定期的に新聞のあり方を公共の話題にのせることで一定役割を果たしている。91年1月,その役割は新聞苦情処理委員会The Press Complaints Commissionに引き継がれた。内容,権限は各国ごとに異なるが,類似制度は旧西ドイツ(1956創設),トルコ(1960),韓国(1961),インド(1965),アメリカ(1973)などにもみられる。これらの大部分はイギリスの新聞評議会をモデルにしている。

 なお,この種の新聞評議会を最初に設けたのはスウェーデンで1916年のことであるが,業界の自主組織である〈新聞界の公正な慣行に関する委員会Pressens Opinionsnämna〉は67年に,一般人も入れて新聞オンブズマンを任命する改革を行い,新聞倫理の水準維持にあたらせている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新聞評議会」の意味・わかりやすい解説

新聞評議会
しんぶんひょうぎかい
press council

新聞を自主的に規制する機関。新聞に対する読者からの苦情や批判にこたえ,新聞の信頼を向上させる目的で設置される。対象に雑誌放送を含めた場合は,ニュース評議会,報道評議会,プレス評議会などと呼ばれる。評議会の名称,形態,組織,活動状況は国によって異なるが,会員は新聞発行人,記者,一般読者,法律家で構成するのが通例。1916年にスウェーデンで設立されたのが世界で最初とされる(→新聞オンブズマン)。最も著名なのはイギリスの新聞評議会で,1953年に「新聞に関する王立委員会」の勧告で設置され,(1) 新聞の自由の維持,(2) 新聞界の水準の維持,(3) 新聞に対する苦情の処理などを目的に掲げた。しかし,大衆紙によるプライバシー侵害に対して新聞評議会が機能していないとの批判が高まると,プライバシー問題を調査する政府の諮問機関(カルカット委員会)は,新聞評議会を解散し新聞界から独立したかたちで新聞苦情処理委員会 Press Complaints Commission; PCCを新たに置くよう勧告,新聞界もそれを受け入れ 1991年から開始した。アメリカ合衆国では 1973年に全国ニュース評議会が誕生したが,初めから一部有力新聞の協力が得られず,資金難から 1983年頃解散。日本にはこうした新聞界共通の苦情処理機関はない。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android