国家と国民、企業と消費者、企業と従業員などの非対等者間で発生する不平・不満を、裁判などとは違い簡易、迅速かつ平和的に処理するための機関。紛争の発生を未然に防止することをねらいとしている。
[吉田美喜夫]
国家と国民との間では、行政に関する国民の不平・不満を解決するために各種の行政苦情処理制度が設けられている。たとえば日本の場合、行政相談委員法(昭和41年法律第99号)では、総務大臣の委嘱を受けて行政相談委員が行政苦情相談をすることになっている。またスウェーデンでは、行政苦情処理も行うオンブズマンombudsman(行政監察委員)制度が設けられている。
[吉田美喜夫]
企業と消費者との間では、たとえば日本の場合、消費者基本法(昭和43年法律第78号)において、国、都道府県市町村に対し、消費者の苦情処理体制の整備に努めるべき旨が定められている。同法には、国民生活センターの役割が規定されており、国民の消費生活に関する情報の収集・提供や、事業者と消費者との間に生じた苦情の処理の斡旋(あっせん)などを行う機関であることが明記されている。また、製造業者などの無過失責任を基本とした製造物責任法(PL法)の施行(1995)と前後して、民間の企業が業種団体別にPLセンターとよばれる機関を設立し、製品についての相談を受け、紛争解決の斡旋、調停、あるいは裁定を行っている。なお、スウェーデンでは、消費者オンブズマン制度があり、消費者保護のために事業者活動の監視や苦情処理を行っている。
さらに、公害に関しても、たとえば自治体が公害苦情相談員を置いて苦情処理に当たらせている(公害紛争処理法第49条)。
[吉田美喜夫]
企業と従業員との間では、労働者が法令、労働協約、就業規則の解釈適用に関して抱く不平・不満を、団体交渉という対抗的方法ではなく、親和的方法で解決するために、普通、労働協約のなかで苦情処理機関の設置と運営方法などを定めている。労働協約などは労働条件等について一般的基準を定めるものであるため、それを労働者個々人に適用する場合に不平・不満が生ずることがある。こうした個人的な苦情を集団的、組織的に解決することを通じて、集団的な労使紛争に発展することを防止するのがねらいである。ただし、苦情処理手続が定められている場合でも、当該苦情を対抗的性質をもつ団体交渉の対象にすることはできる。また、企業の本社等において、企画、立案、調査、分析の業務に従事する労働者に裁量労働制(労働を時間ではなく成果もしくは業績によって量る制度)を導入する場合、労使同数の代表者で構成される労使委員会を設置しなければならないが、この委員会は、裁量労働制のもとで働く労働者からの苦情の処理に関する措置を決議で定め、それを使用者が実施することになっている(労働基準法第38条の4)。
なお、日本の行政執行法人の労働関係に関する法律第12条および地方公営企業労働関係法第13条では、労使同数からなる苦情処理共同調整会議の設置が義務づけられている。
[吉田美喜夫]
このほか、男女が互いにその人権を尊重しつつ責任も分かち合い、性別にかかわりなく、その個性と能力が発揮できるような社会の実現を理念とする男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)では、このような社会の形成に関する政府の施策について、苦情の処理のために必要な措置をとることを国に求めている(第17条)。
[吉田美喜夫]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
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