新航路(読み)しんこうろ(その他表記)Neuer Kurs ドイツ語

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「新航路」の意味・わかりやすい解説

新航路
しんこうろ
Neuer Kurs

ドイツ皇帝ウィルヘルム2世ビスマルク退陣 (1890) 後に採用した世界政策。彼がザクセンワイマール大会への電報で用いた「航路は旧に同じ」の語を裏返していったもの。ドイツ統一 (71) 後の資本主義発展の結果,ビスマルク体制の動揺を克服するため,社会主義と労働運動の弾圧緩和帝国主義的海外発展を目指した。すなわち「新航路」は新しい時代への希望を示したが,実際には資本家保護によりユンカー反発を買い,帝国主義と軍備拡張により列強から反撃され,対露再保障条約の不更新 (90) による露仏同盟成立を促した。しかもウィルヘルム2世の気まぐれな性格によって,その諸政策は一層統一性に欠けたものとなり,第1次世界大戦を迎えることになった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「新航路」の意味・わかりやすい解説

新航路
しんこうろ
Neuer Kurs ドイツ語

ビスマルク失脚後のドイツ皇帝ウィルヘルム2世と帝国宰相カプリービの政治に対する標語。1890年3月ビスマルクが辞表を提出すると、ウィルヘルム2世は同月22日、ビスマルクに反対していたワイマールのゲルツ伯に電報を送って宰相の更迭を伝え、そのなかで「針路は旧(もと)のまま、全速前進」と述べた。新宰相カプリービは、4月15日の所信表明演説でこれを引用し、ドイツの政策の連続を説明したが、世人はむしろ政局転換を感じ取り、新政府の政策を逆に「新航路」と称するようになった。事実、「新航路」政府は、ドイツ、ロシア間の再保障条約の不更新、新通商条約による穀物関税の引下げ、イギリスとの植民地交換、社会主義者鎮圧法の廃棄、社会保障の拡大などの政策を通じて、ビスマルクの政策からしだいに離れることになった。

[岡部健彦]

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百科事典マイペディア 「新航路」の意味・わかりやすい解説

新航路【しんこうろ】

世界政策とも。ドイツ皇帝ウィルヘルム2世の対外政策をさす。1890年ビスマルク失脚直後,皇帝が国家軍艦にたとえて〈針路は前と同じ,全速力で前進〉といったことに由来する。実際には皇帝はビスマルクのヨーロッパ大陸中心の保障政策を捨て,帝国主義的な海外膨張政策をとった。
→関連項目カプリービ

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「新航路」の解説

新航路(しんこうろ)
Neuer Kurs

大陸中心の安全保障政策を行ったビスマルクの失脚(1890年)ののち,20世紀初頭にかけて皇帝ヴィルヘルム2世が行った帝国主義的海外膨張政策。この表現は皇帝が国家を軍艦になぞらえて「針路は前と同じ,全速力で前進」といったことに由来する。

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旺文社世界史事典 三訂版 「新航路」の解説

新航路
しんこうろ
Neuer Kurs

ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世が,1890年のビスマルク引退後とった世界政策
アフリカ・太平洋・近東への積極的な海外進出を目的とした。皇帝自身のモロッコなどの訪問に端的に現れ,その帝国主義的な膨張策は第一次世界大戦の遠因となった。

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