日米貿易摩擦(読み)にちべいぼうえきまさつ

共同通信ニュース用語解説 「日米貿易摩擦」の解説

日米貿易摩擦

1960年代後半以降、日米両国貿易収支が不均衡となり、米国の対日貿易赤字に転じたことで起こった経済的な摩擦。米側の要求を受け、日本は繊維やカラーテレビ、自動車などの対米輸出規制や、牛肉オレンジなど農産物の輸入自由化に順次応じた。90年代のコメの市場開放を巡る交渉は、国内農業保護の観点から大きな政治課題となった。当初は部分的な開放だったが99年に関税化を決定。貿易だけでなく、投資や金融市場の参入障壁の高さも問題視された。

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百科事典マイペディア 「日米貿易摩擦」の意味・わかりやすい解説

日米貿易摩擦【にちべいぼうえきまさつ】

日米間の輸出入をめぐる経済的紛争のこと。従来は個別商品をめぐる紛争が中心的課題であった。当初は繊維,鉄鋼などの2〜3品目にすぎなかった対米輸出ラッシュが,日本の高度経済成長に伴い,広範囲の品目(自動車,カラーテレビ,VTR,工作機械,半導体など)に広がり,1960年代以降の日米間での恒常的な貿易不均衡となって米国の膨大な貿易赤字の原因ともなり,経済摩擦様相となった。 この貿易不均衡を是正すべく米国は,日本の市場開放,輸入拡大といった輸入体制・制度の問題にまで転化し,市場開放をめぐる議論進展。〈日米構造協議〉(1989年−1990年)では,日米貿易不均衡の原因である構造的な障壁を解明し,日本市場の透明性と開放を求めた。日本製自動車や半導体の対米輸出制限,1990年3月に合意をみた米国製スーパーコンピューターの導入,自動車・携帯電話の米モトローラ社方式の導入,医療機器,保険,自動車部品,農産物輸入など多方面にわたって市場開放が論争の焦点となった。 1990年代以降は日本の商習慣や輸入検査・認証の厳しさへの批判など構造面へと摩擦が拡大し,輸出製品の技術特許使用をめぐる訴訟の増加も問題となったが,WTO成立以後,交渉の主な舞台は日米協議の場からWTOの場へ移った。→日米包括経済協議日米自動車協議日米半導体協定

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「日米貿易摩擦」の意味・わかりやすい解説

日米貿易摩擦
にちべいぼうえきまさつ
Japan-U.S. trade friction

日米間の貿易に関する摩擦で,(1) 日本の輸出に関する摩擦,(2) 日本の市場開放に関する摩擦,(3) 日本の構造的問題に関する摩擦,の過程を経てきた。日本の輸出は高度成長期に入り大幅に拡大し,1969年には日米貿易摩擦の幕開けとなる日米繊維摩擦が生じた。その後は産業構造の変化に伴い鉄鋼,カラーテレビ,自動車,半導体の分野で摩擦が生じ,現在に至っている。 80年代になると農産物,コンピュータの貿易品目のみならず建設,通信,金融,弁護士などサービス分野において日本の市場開放に関する摩擦が生じてきた。日米両国は 85年の MOSS協議を通じて摩擦の解消にあたってきたが,アメリカ議会はより強力な手法を求め,88年には一方的に不公正貿易国を認定し,対抗措置が講じられるいわゆるスーパー 301条を成立させた。 89年には日米の貿易不均衡を是正するために貯蓄・投資バランス,流通,企業形態などの両国に存在する構造的問題を解消することこそが重要という認識が生まれ,日米構造協議が開始された。 90年にはその最終報告書が発表された。

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世界大百科事典(旧版)内の日米貿易摩擦の言及

【アメリカ合衆国】より

…正式名称=アメリカ合衆国United States of America面積=936万3123km2(本国のみ)人口(1995)=2億6303万人首都=ワシントン Washington,D.C.(日本との時差=-14時間)主要言語=英語通貨=ドルdollar略称USA。たんに合衆国とも,また米国,アメリカとも通称する。United States of Americaの訳語としては,1854年調印の日米和親条約で〈亜米利加合衆国〉の名称が使用された。…

【日米繊維交渉】より

…一方,日本側の姿勢の変化をみると,日米繊維交渉のころよりは,国際的相互依存の論理をかなり理解するようになり,狭い〈国益〉を追求するかたくなな態度は避けるようになってきてはいる。しかし,年々拡大していく日米貿易不均衡が引金となって,アメリカが日本側に農産物,高度技術,資本・金融などの市場開放を要求するという形での貿易摩擦(これには日米貿易摩擦だけでなく日欧貿易摩擦もある)が多発してきており,それに対する日本の外圧依存型の受身の姿勢はいまだ変わっていない。アメリカが以前のように自由貿易体制維持のための強力な指導力を発揮できなくなっている今日,西側第2の経済大国となった日本は中・長期的展望に立って,国内的要請と対外的要請との間のバランスをとりつつ,自由化政策を主体的に推進していく必要がある。…

【貿易】より

…一般に国と国との間の商業取引をいう。ふつう商品の輸出および輸入からなるが,最近は運輸・旅客サービスだけでなく,電気通信サービス,金融・保険サービスや技術・情報サービス等も国境を越えて取引されるようになり,こうしたサービス貿易が注目されてきている。 もっとも国の概念が成立する前から,中国や地中海の文明圏を中心に,各地域の特産品を交換し合う交易は始まっていた。古代から中世へと文明圏が拡大し,交通手段が発達するのにともなって,貿易の範囲は広まったが,取引されたのは主として,金銀,絹,毛皮,装身具,香料等の高価な嗜好品であった。…

※「日米貿易摩擦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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