旧法が新法により改廃され,また法秩序が一新される場合のように,二つの法または法秩序が時間的に先後関係にあるとき,ある法的事実がどちらの法に支配されるべきかを定める法則である。法の改正のときには,通常,ある事実に新法が適用されるか旧法が適用されるかについて経過法(経過規定)により明文で定められるが,同位の形式的効力をもつ法の間では〈新法は旧法を変更する〉の原則が妥当する。ただし,新法と旧法が同位の形式的効力を有する法であっても一般法と特別法の関係にあるときは,〈一般的新法は特別的旧法を変更しない〉という反対の原則が妥当する。また旧法時代に成立した事実は新法によって影響を受けないのが原則である(法律不遡及の原則)。とくに刑罰法規については罪刑法定主義に基づき,事後法の禁止によって遡及効は禁止されている。その他の場合にも,既得権の尊重と法的安定性の確保ということから不遡及の原則が立てられるが,これは必ずしも絶対的なものではなく,既得権をある程度侵害しても新法を遡及させる必要がある場合などにはこの原則が破られることもありうる。たとえば,第2次大戦後の民法の家族法の規定の全面的改正の際に,附則4条により新法の遡及効の原則が立てられたことなどは,この例であろう。
執筆者:桂木 隆夫
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法の改廃や国家法秩序の一新の際は時間的に先後関係にある二つの法秩序や法規が両立しないことが生ずる。法は統一的でなければならないから、この場合にこの矛盾する法秩序ないし法規のいずれが適用されるかを定める法原則が必要である。これを時際法という。一般には経過規定により明文の解決がなされるほか、上位法は下位法に優先し、同一の形式的効力をもつ法規、たとえば法律と法律との間では、後法は前法を廃するが、特別法は一般法に優先するという不文の法原則がある。また、旧法時代に完結した事実は新法の影響を受けないのが原則であるが(法不遡及(ふそきゅう)の原則)、公務員給与のベースアップ法のように相手方に利益となる遡及立法は許される。
[阿部泰隆]
… 最もわれわれになじみの深いものは,法律の〈時間的〉抵触intertemporal conflict,つまり新法と旧法との関係であろう。新法の不遡及,一定の限度内での遡及,その場合の権利関係の調整,これらの問題の規律は時際法intertemporal lawによってなされる。国際私法【場 準一】。…
※「時際法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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