有価証券届出書(読み)ユウカショウケントドケデショ

デジタル大辞泉 「有価証券届出書」の意味・読み・例文・類語

ゆうかしょうけん‐とどけでしょ〔イウカシヨウケン‐〕【有価証券届出書】

株式社債などの有価証券募集(新規発行)・売り出しを行う際、発行総額が1億円以上となる場合に、発行者財務局を通じて内閣総理大臣提出する書類。有価証券の条件や企業の経理状況事業内容などを記載し、情報開示を行う。発行総額が1千万円以上1億円未満の場合は有価証券通知書を提出する。→有価証券報告書情報開示義務

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改訂新版 世界大百科事典 「有価証券届出書」の意味・わかりやすい解説

有価証券届出書 (ゆうかしょうけんとどけいでしょ)

多数の者(50名程度以上)に対し新たに発行される有価証券の取得の申込みを勧誘し(募集という。証券取引法2条3項),または多数の者に対し均一の条件で既発行の大株主の株式の分売申込みをする(売出しという。同条4項)場合,その発行価額または売出価額の総額が5億円以上となるときは,発行者が募集または売出し(〈募集・売出し〉の項参照)の届出大蔵大臣にしなければならず(4条1項),この届出は有価証券届出書(狭義)およびその添付書類を提出することによって行われる(5条)。広義の有価証券届出書は,この届出書および添付書類および訂正届出書(後出)の総称である(2条7項)。提出された広義の届出書は,大蔵省会社本店・主要支店,証券取引所または証券業協会に備え置かれて,公衆縦覧に供せられ(25条),他方,大蔵省の係官はその内容の審査を開始し,原則として受理日から15日経過後に届出の効力が生ずる(8条)。発行者,売出人,引受人または証券会社は,届出書の提出後に有価証券の投資勧誘を行うことができ,届出の効力発生後に有価証券を取得させまたは売り付けることができる(15条1項。なお〈目論見書〉の項参照)。この届出制度は,一般投資者に必要な情報を開示させることによって投資者を保護しようとするものである。狭義の届出書には,営業や経理の状況等の投資判断に必要な事項が記載される。これらの開示要件は省令による。そして財務関係書類には公認会計士等の監査証明が要求される(193条の2)。広義の届出書の記載事項に不備・虚偽記載等があれば,自主的な訂正または訂正命令による訂正届出書の提出が必要となる。大蔵大臣は,投資者保護のために届出の効力停止を命ずることもできる。届出書の不提出・虚偽記載等に対しては,罰則規定があるだけでなく厳しい民事責任が課せられる。ただし,有価証券報告書等の記載内容をそのまま組み込むこと(組込方式,5条2項),さらに有価証券報告書等の存在を言及すること(参照方式,5条3項)で足りるという制度が導入されており,後者の場合には企業内容の開示(ディスクロージャー)はそこにはほとんどなされないこととなっている。これは,そのような開示をするまでもなく企業情報が周知のものとなっていることを前提としたものといえる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「有価証券届出書」の意味・わかりやすい解説

有価証券届出書
ゆうかしょうけんとどけいでしょ

金融商品取引法(5条)に基づいて,有価証券の募集,売り出しに際して内閣総理大臣に提出すべき届出書。新しく市場で発行される有価証券の真実かつ詳細な内容を公開し,投資家が当該有価証券の実体を把握できるよう,判断資料の提供と保護を目的とする。記載事項は企業開示内閣府令で定められている。具体的には,当該有価証券の内容,発行者に関する概況,営業状況などで,これに添付される定款,目論見書,その他内閣府令で定める添付書類および訂正届出書を含めた総称。有価証券届出書の提出は,有価証券の発行価額,売出価額の総額が 1億円以上で 50人以上に勧誘する場合,または適格機関投資家以外に勧誘する場合に適用され(1億円未満のものについては有価証券通知書の提出を要し,100万円以下の場合は提出不要),効力発生時から 5年間,公衆の縦覧に供される。

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M&A用語集 「有価証券届出書」の解説

有価証券届出書

発行価額もしくは売出価額が1億円以上の有価証券の募集等を行う場合、当該有価証券の発行者が原則として提出しなければならない書類。当該募集又は売出しに関する事項(証券情報)及び発行者である会社の属する企業集団及び当該会社の経理の状況、事業の内容等に関する事項(企業情報)等が記載される。

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株式公開用語辞典 「有価証券届出書」の解説

有価証券届出書

一定規模(金額1億円、対象人数50名)以上の有価証券の募集・売出を行う際に、管轄の財務局へ届出を行う書類のこと。記載内容は有価証券報告書とほぼ同様。証券取引法第4条に届出義務が規程。

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投資信託の用語集 「有価証券届出書」の解説

有価証券届出書


有価証券の投資判断に役立つように、有価証券を発行するに当たって財務局に届け出なければならない書類のこと。公募の投資信託は届け出なければならない。

出典 (社)投資信託協会投資信託の用語集について 情報

世界大百科事典(旧版)内の有価証券届出書の言及

【財務諸表】より

損益計算書は経営成績,貸借対照表は財政状態,財務諸表付属明細表は損益計算書および貸借対照表における重要な項目の内訳明細あるいは変化の状態,利益処分計算書は株主総会の決議によって当該期間の利益の処分の結果を表示するものである。 証券取引法の財務諸表規則(証取規則)は企業会計原則にのっとったものであるが,その規定によれば,発行価額または売出価額の総額が1億円以上の有価証券を募集または売り出すさいには大蔵大臣への届出が必要であるが,この届出のさい,その発行者は特別な利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明をうけた財務諸表を含めた有価証券届出書を提出しなければならない。また,証券取引所に上場されている有価証券を発行している会社,流通状況が上場されている有価証券に準ずるものとして政令で定める有価証券を発行している会社,上記の有価証券届出書の提出会社は事業年度ごとに,特別な利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明をうけた財務諸表を含めた有価証券報告書を提出しなければならない。…

※「有価証券届出書」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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