椅子(いす)の一種。曲禄,曲とも書く。背もたれの笠木がカーブしているか,または背もたれとひじ掛けとがカーブした1本の棒でつながっていることが特徴である。曲彔という言葉は曲彔木の略で,彔は木をはつるという意味であるから,木をはつってカーブをつくった椅子ということになる。脚が折りたたみ式の交椅(こうい),座が円形の円椅(えんい),方形の方椅(ほうい)などがある。交椅は胡床,摺畳椅(たたみあぐら)とも呼ばれる。鎌倉時代ころに中国(宋)から入ったが,中国では曲彔とはいわずに交椅とか椅子と呼んでいる。日本では初め禅林で用いられ,後に他の宗派,また世俗でも使うようになった。室町時代から近世初期にかけて曲彔は大流行し,茶会や花見,遊山,あるいは芸能の舞台などでさかんに使われた。このため蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)などではなやかに作られるようになった。現存する京都瑞光寺の南蛮人交椅,高台寺の菊蒔絵交椅などはそうしたものの一つである。江戸時代以降は主として僧侶用として使われるようになる。
→椅子
執筆者:小泉 和子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…鎌倉・室町時代には禅宗の移入とともにいすが再び中国からもたらされ,種類も多くなり,禅僧が多くこれを用いた。中でも曲彔(きよくろく)が流行し,自然木を利用したいすや竹いすなども作られた。禅堂では,四脚形式のものは上に趺座し,交椅は腰掛け,背もたれには法被を掛け承足を置いた。…
※「曲彔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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