曲彔(読み)キョクロク

デジタル大辞泉 「曲彔」の意味・読み・例文・類語

きょく‐ろく【曲×彔/曲×椂】

法会ほうえの際などに僧が用いる椅子いす。背のよりかかりを半円形に曲げ、脚をX字形に交差させたものが多い。

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精選版 日本国語大辞典 「曲彔」の意味・読み・例文・類語

きょく‐ろく【曲&JISEAB9;・曲

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。僧家で用いる椅子。主として僧が法会などで用いる。背のよりかかりを丸く曲げ、四本の脚は牀几(しょうぎ)のようにX形に作ってあるもの。全体を朱または黒の漆で塗り、金具装飾を施す。曲木(きょくもく)
    1. 曲彔<b>①</b>〈京都府妙心寺蔵〉
      曲彔〈京都府妙心寺蔵〉
    2. [初出の実例]「悦堂老子、主席東林時、曲彔床上撒屎撒溺」(出典:明極楚俊遺稿(14C中か)跋秋田主座所書、悦堂和尚語録後)
  3. 主として、江戸時代、出産時に産婦が腰掛けた、よりかかりのある椅子形の牀几。
    1. [初出の実例]「十月目に曲祿へ乗る山の神」(出典:雑俳・柳多留‐五四(1811))

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改訂新版 世界大百科事典 「曲彔」の意味・わかりやすい解説

曲彔 (きょくろく)

椅子(いす)の一種。曲禄,曲とも書く。背もたれの笠木がカーブしているか,または背もたれとひじ掛けとがカーブした1本の棒でつながっていることが特徴である。曲彔という言葉は曲彔木の略で,彔は木をはつるという意味であるから,木をはつってカーブをつくった椅子ということになる。脚が折りたたみ式の交椅こうい),座が円形の円椅えんい),方形の方椅(ほうい)などがある。交椅は胡床摺畳椅(たたみあぐら)とも呼ばれる。鎌倉時代ころに中国(宋)から入ったが,中国では曲彔とはいわずに交椅とか椅子と呼んでいる。日本では初め禅林で用いられ,後に他の宗派,また世俗でも使うようになった。室町時代から近世初期にかけて曲彔は大流行し,茶会や花見,遊山,あるいは芸能の舞台などでさかんに使われた。このため蒔絵(まきえ)や螺鈿(らでん)などではなやかに作られるようになった。現存する京都瑞光寺の南蛮人交椅,高台寺の菊蒔絵交椅などはそうしたものの一つである。江戸時代以降は主として僧侶用として使われるようになる。
椅子
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「曲彔」の意味・わかりやすい解説

曲彔
きょくろく

主として僧侶(そうりょ)が使う椅子(いす)の一種。背もたれの笠木(かさぎ)が曲線を描いているか、または背もたれと肘掛(ひじか)けとが曲線を描いた1本の棒でつながっているのが特徴である。曲彔ということばは曲彔木の略で、彔は木を削(はつ)る(そぎ落とす)の意であるから、木を削って曲線をつくった椅子ということになる。鎌倉時代に中国から渡来したもので、最初は禅林で用いられたが、のちには他の宗派でも、また一般でも使うようになった。とくに桃山時代には大流行した。

[小泉和子]

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「曲彔」の解説

きょくろく【曲彔】

法要などで導師が座る椅子(いす)。背もたれに曲線状の木を使い、座面には布や皮を張り、脚は朱・黒塗りで、蒔絵(まきえ)を施すこともある。鎌倉時代に禅宗とともに宋(そう)から伝わった。折りたたみ脚のものを交椅(こうい)、固定脚のものを円椅(えんい)という。

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世界大百科事典(旧版)内の曲彔の言及

【いす(椅子)】より

…鎌倉・室町時代には禅宗の移入とともにいすが再び中国からもたらされ,種類も多くなり,禅僧が多くこれを用いた。中でも曲彔(きよくろく)が流行し,自然木を利用したいすや竹いすなども作られた。禅堂では,四脚形式のものは上に趺座し,交椅は腰掛け,背もたれには法被を掛け承足を置いた。…

※「曲彔」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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