戦国時代の医師。永正(えいしょう)4年京都に生まれる。名は正盛(まさもり)また正慶(まさよし)とも称し、字(あざな)は一渓(いっけい)、号は雖知苦斎(すいちくさい)、盍静翁(こうせいおう)、寧固(ねいこ)、院号は翠竹院(すいちくいん)のちに亨徳院(こうとくいん)。1528年(享禄1)足利(あしかが)学校に学び、田代三喜(たしろさんき)について李朱(りしゅ)医学を修め、1545年(天文14)京都に帰り、将軍足利義輝(よしてる)、細川晴元、三好長慶(みよしながよし)、松永久秀(ひさひで)らの厚遇を受け、学舎啓迪院(けいてきいん)を創立して門人を養成、1574年(天正2)『啓迪集』8巻を撰述(せんじゅつ)して正親町(おおぎまち)天皇に献上し、翠竹院の院号を賜った。道三の名は全国に知れ渡り、織田信長、豊臣秀吉(とよとみひでよし)、徳川家康らにも重んじられ、日本医学中興の祖と称されるようになった。文禄(ぶんろく)3年没。享年88。著書には前述の『啓迪集』をはじめ、『雲陣夜話』『薬性能毒』『切紙』『診脈口伝集』『百腹図説』などがある。
なお、2代曲直瀬道三は甥(おい)の玄朔(げんさく)(1549―1631)が継いで活躍、『医学天正記(いがくてんしょうき)』はその著である。
[矢数道明]
(宗田一)
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安土桃山期の医師。京都柳原に生まれ,幼くして両親を失い仏門に入った。本姓は堀部氏(勝部とも),曲直瀬の姓は蘇東坡の詩にちなみ,医学の流れが時代が下るにつれ曲がりくねって不浄となったのを,往古の直にして清らかな流れに戻そうとする使命感から改姓したといい,道三の名は師の田代三喜導道から採ったとも,山東を往来するとき東海・東山・北陸の三道を通り禅門を訪ねたので,その三道にちなみ一道に偏しない医学を志したためともいわれる。翠竹院の号は,もと雖知苦斎(すいちくさい)と称していたのを,正親町天皇より天下万民を救う医業に苦の字があるのは好ましくないと同音の号を賜ったという。学僧として足利学校に遊学中,田代三喜の名声をきき三喜に師事して中国金元医学(とりわけ李朱医学)を学び,1545年(天文14)39歳で京都に帰り翌年還俗して医を専業とし,李朱医学の日本化をはかり,医学校の啓迪(けいてき)院を開いて全国から医生を集め新しい医学教育を行い,その学風は全国をおおい当時の医界の天下者となった。将軍足利義輝に重用され,医学面だけでなく茶道,香道の文化面を通じて多くの戦国大名と交友があり厚遇された。フロイスの《日本史》や《イエズス会日本年報》に道三のキリスト教入信の記事があり,77歳で洗礼を受けたとされるが,日本側の記録は知られていない。主著に《察証弁治啓迪集》があり,《雲陣夜話》《薬性能毒》ほか多数の著書がある。甥の玄朔(東井)が養嗣子として2代目道三を名乗り,道三流医学を普及した。
執筆者:宗田 一
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1507.9.18~94.1.4
戦国期~織豊期の医師。堀部親真の子という。名は正慶(まさよし)または正盛,字は一渓・道三。雖知苦斎(すいちくさい)・翠竹院・亨徳院と号す。京都生れ。下野国の足利学校に学び,この地で田代三喜(さんき)の門に入り,京都に帰って還俗し医を開業。将軍足利義輝の病を癒し,細川晴元・正親町(おおぎまち)天皇からも厚遇された。京都に日本初の医学校啓迪(けいてき)院を創設。三喜からうけた明の新しい李朱医学をさらに親試実験して医療の実際に用い,1574年(天正2)医書「啓迪集」を著した。
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…いずれも,著者の独自の見解がおもに編されている。室町時代に有名な医師として特記すべきものに,田代三喜,曲直瀬道三(まなせどうさん),永田徳本らが挙げられる。田代は,足利学校で学んだのち明に渡り,12年間とどまって,新しい医学を修得して帰った。…
…武士を兼ねた金創医は創傷治療を主としていたが,助産や婦人病,さらに小児病などをも治療の範囲としていたから,必然的にこの分野の専門医を生み,実質的な医療の分化をうながした。 戦国期に広まった実地医療を体系づけたのは,田代三喜とその門人曲直瀬道三(まなせどうさん)である。三喜は明に留学して李朱医学を伝え,これをもとに気,血,痰の治療秘訣を明らかにして臨床医学の端緒を開いた。…
※「曲直瀬道三」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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