書面審理主義(読み)ショメンシンリシュギ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「書面審理主義」の意味・わかりやすい解説

書面審理主義
しょめんしんりしゅぎ

訴訟審理の方式に関して、当事者および裁判所の訴訟行為、とくに弁論や証拠調べが書面によりなされることを要するとする主義をいう。書面主義ともいい口頭主義に対立する。書面主義は訴訟材料の提出・保存が確実であり、かつ反復審理が可能という長所があるが、他面、訴訟書類が膨大となり、その閲読に多くの時間と労力が費やされ、また弁論に集中しがたく、事件の真相を明らかにするためには、口頭主義よりも不便な面が多い。また合議制や公開主義にも適しないという欠点もある。そのため民事訴訟法においては、口頭主義が原則であって、書面主義はとくに必要かつ重要な事項や補充的な場合に併用されている。たとえば、起訴の方式(民事訴訟法133条)、訴えの変更(同法143条2項)、訴えの取下げ(同法261条3項)などである。

[内田武吉]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「書面審理主義」の意味・わかりやすい解説

書面審理主義
しょめんしんりしゅぎ
Schriftlichkeitsprinzip

訴訟審理の方式に関し,訴訟行為 (当事者の弁論,裁判所の証拠調べ) を書面を通じて行なうことを必要とする主義。口頭審理主義と対立する。現行民事訴訟法は口頭審理主義を原則としているが,重要な訴訟行為,すなわち訴えの提起,訴えの変更,当事者参加,控訴上告再審の訴えの提起などについては,書面審理主義を採用している。刑事訴訟法でも判決は原則として口頭弁論に基づかねばならないが,実質的には事実審でも上級審では依然として書面審理主義の傾向が強い。

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