有機溶剤中毒、シンナー中毒(読み)ゆうきようざいちゅうどく、シンナーちゅうどく(英語表記)Organic solvent and thinner poisoning

六訂版 家庭医学大全科 の解説

有機溶剤中毒、シンナー中毒
ゆうきようざいちゅうどく、シンナーちゅうどく
Organic solvent and thinner poisoning
(中毒と環境因子による病気)

どんな中毒か

 トルエンキシレンベンゼン、その他の各種脂肪族炭化水素(しぼうぞくたんかすいそ)からなる、いわゆる石油製品は、有機溶剤総称されます。有機溶剤は肺、腸管、皮膚のすべての経路から吸収され、麻酔作用がありますが、いずれも急性毒性はそれほど強くありません。

 有機溶剤は揮発性のため、閉鎖空間で使用すると吸入による事故が生じます。

 一方、石油製品の経口摂取での死因の多くは、中毒ではなく、誤飲時や胃洗浄時に誤嚥(ごえん)したために激烈な化学性肺炎を引き起こすことです。したがって催吐(さいと)(吐かせること)や胃洗浄は行ってはいけません。

 シンナーとは、塗料や接着剤などの希釈液(きしゃくえき)の総称でトルエン、キシレンが主成分ですが、メタノールを含むものもあるので、注意を要します。摂取経路により毒性が異なり、50%致死量(摂取した人の半数が死亡する量:LD50)で比較すれば、経気道摂取は経口摂取の140倍の毒性を発揮します。

症状の現れ方

 急性中毒では多幸感(たこうかん)、頭痛、めまい耳鳴り、吐き気・嘔吐不穏(ふおん)、意識障害などが現れます。死因は、過度の麻酔作用による呼吸抑制、心室細動(しんしつさいどう)肺水腫(はいすいしゅ)などです。

 有機溶剤には皮膚刺激作用があり、接触によって発赤、びらん、水疱(すいほう)形成などが生じます。シンナー遊びでは羞恥心がなくなり、幻覚(げんかく)幻聴(げんちょう)が現れ、少々の刺激で異常行動を起こします。慢性中毒では造血機能の低下、中枢神経系の変性(脳萎縮(のういしゅく))が注目されています。

治療の方法

 催吐や胃洗浄は禁忌(きんき)です。吸着剤活性炭)の投与対症療法で対応します。

応急処置はどうするか

 新鮮な空気のもとに移動させます。皮膚汚染時や眼に入った時は、流水で十分に洗浄します。

吉岡 敏治

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

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