江戸時代の読本(よみほん)。曲亭馬琴作、歌川豊広(とよひろ)挿絵。30巻30冊。初編は1815年(文化12)、2編は1817年、3編は1819年(文政2)、4編は1821年、5編は1822年、6編は1828年に大坂の河内(かわち)屋太助から刊行された。中絶後の7編、8編は松亭金水が継続して、1855年(安政2)、1858年に刊行。木曽義仲(きそよしなか)と鞆絵(ともえ)の遺児阿三丸(あざまる)は安房(あわ)朝夷で乳母(うば)栞手(しおりで)に養育され、文武の道を励み、朝夷三郎義秀と名のる。義秀は源範頼(のりより)の遺児吉見冠者義邦(よしみかんじゃよしくに)と親友となり、2人は刀野時夏(たちのときなつ)、修羅五郎経任(しゅらごろうつねとう)の奸計(かんけい)に苦しめられるが、これを討ち、また義秀は北条時政(ときまさ)父子の陰謀を面責して義邦の窮地を助ける。この後の構想が第6編末尾に示されているが、それは建保(けんぽう)の和田合戦のおりに義秀を脱出させて、諸島を巡歴させるというもので、史上不遇の英雄を順境に転じさせる意図に基づいていた。中国清(しん)代の白話(はくわ)小説『快心編』に学んだ雄大緻密(ちみつ)な構成は高い評価を得ている。
[徳田 武]
『『朝夷巡島記』(博文館・続帝国文庫)』
出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報
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