出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
小説家、評論家。岡山県生まれ。早稲田(わせだ)大学英文科卒業。『文章世界』ほかへの投書時代に田山花袋(かたい)に励まされ文学を志す。春秋社の発展に貢献し、安部磯雄(あべいそお)の日本フェビアン協会の創設、賀川豊彦(とよひこ)の農民学校の建設、日本労農党の出版部長、同党教育部長の歴任など社会運動にも挺身するかたわら、改造社の『現代日本文学全集』、新潮社の『世界文学全集』などの編集企画にかかわるなど、多面にわたる出版文化への功績が大きい。小説『兎と妓生と』(1923)ほか、『小説研究十六講』(1925)、『文芸東西南北』(1926)、『明治文学展望』(1928)などの評論、『日本スポーツ文化史』(1956)、『日米文学交流史の研究』(1960)、『比較文学新視界』などの研究、そして『座談集明治の春秋』など、ユニークな著作がきわめて多い。大衆文学への功労や、明治文化研究会会長として『明治文化全集』『幕末明治新聞全集』『明治文化研究』などを刊行、『稿本早稲田大学百年史』第1巻上を執筆していることなども忘れられない。
[榎本隆司]
『谷沢永一編『木村毅博士著作目録』(『明治文化研究5』所収・1970・日本古書通信社)』
大正・昭和期の小説家,評論家。明治文学研究の先駆者。岡山県に生まれる。1917年早稲田大学英文科を卒業し,隆文館,のち春秋社で編集者として活躍するかたわら評論活動をする。23年退社し,近代小説の理論的研究を行う(《小説の創作と鑑賞》1923,《小説研究十六講》1925)。一方,24年には日本フェビアン協会の創設に参加し,日本労農党の出版部長を務める。また明治文化研究会に入り,第3代会長となる(1948)。46年自由出版協会理事長,東京都参与,早大講師などを務める。原資料に立脚し,博覧と想像力とを学際的に駆使して明治文化研究をし(《明治文化研究》全6巻,1968-72),文化史的考証に業績を残した。
執筆者:高峰 慧
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