厚板(読み)アツイタ

デジタル大辞泉 「厚板」の意味・読み・例文・類語

あつ‐いた【厚板】

厚みのある板。⇔薄板うすいた
厚地織物の一。生糸横糸練り糸縦糸として、模様を織り出した絹織物。多く帯地に用いる。厚絹。厚板織り。
能装束の一。2の生地や唐織を用いた小袖物。男体なんたいの着付けに用いる。
オシダ科常緑、多年生のシダ。暖地の山林に自生。葉には切れ込みがなくて厚く、長さ10~30センチ。葉柄は太く、褐色の鱗片りんぺん密生。あついたしだ。

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精選版 日本国語大辞典 「厚板」の意味・読み・例文・類語

あつ‐いた【厚板】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 厚みのある板。木材、鋼板、板ガラスなど板状のものにいう。⇔薄板。〔日葡辞書(1603‐04)〕
  3. 厚い地の織物。経(たていと)は練糸、緯(よこいと)は生糸を用いて、地紋を織り出した絹織物。女帯地を主とし、袋物などに用いる。厚板織。厚板物(あついたもの)。厚絹。⇔薄板。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「あつ板のしめに色どりて、女三の宮の立姿絵にもおよばぬ色くらべ」(出典:浮世草子・傾城武道桜(1705)初)
  4. 能装束の一つ。厚板織の小袖物。模様の中の赤色の有無によって、紅入(いろいり)と紅無(いろなし)に分ける。色合や模様によって、いろいろな曲に用いる。多く男役の着付(下着)に用いるが、上着に用いる時もある。また、まれに厚板唐織といった、唐織模様のものもある。
    1. 厚板<b>③</b>
      厚板
  5. シダ類ウラボシ科の多年草八丈島、紀伊半島以南の暖地で湿気の多い場所の岩上や樹上に生える。根茎は横にはい、葉柄は硬く、褐色の鱗片を密生する。葉は長さ一〇~三〇センチメートルの長披針形で厚い。あついたしだ。

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改訂新版 世界大百科事典 「厚板」の意味・わかりやすい解説

厚板 (あついた)

織物の組織,また能装束の一つをいう。織物組織の場合,通例は平組織の地に多彩な色糸や金銀糸の絵緯(えぬき)を織り入れて,経糸の地搦(じがらみ)で押さえたもの。堅固な風合いをしめし,江戸時代後期から明治期には帯として盛んに用いられた。近世初頭中国から舶載された織物類は,主として板に巻きつけてあった。錦など重厚な織物は厚い板を芯にするところから厚板物と呼ばれた。また対照的に綸子(りんず)などは薄板に巻き,薄板物と称したという(《西陣天狗筆記》)。

 能装束としての厚板は,主として男役の着付とする小袖形式のもので変化に富んでいる。荒神鬼畜に用いる華麗な中国風の文様のもの,老人用の渋い色目の品格あるもの,大小の格子をあらわしたものなどがある。組織も唐織,錦,綾織物,浮織物など多様で,ときには老女などの表着(うわぎ)にされることもある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「厚板」の意味・わかりやすい解説

厚板
あついた

織物の名称の一つ。厚板(厚板織)とは特定の織物をさすのではなく、室町期以後、舶載された唐織(からおり)などの厚手の織物が厚手の板に巻かれていたことによる名称。それが国産化されたとき、平織の地(じ)組織に絵緯(えぬき)には練染(ねりぞめ)糸、金銀糸などを使って文様を織り出し、地搦(じがらみ)糸で部分的に押さえた地質の厚い織物につけられた。これは袋地、帯地などに使う。また能装束のなかで、男役、あるいは荒神鬼畜(こうじんきちく)の着付衣装にこの織物を用い、衣装名となっている。

[角山幸洋]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「厚板」の意味・わかりやすい解説

厚板
あついた

能装束の一種。本来は唐織 (からおり) ,縫箔 (ぬいはく) などと同様染織技法の名称であるが,能装束の固有名詞として使われる場合は,男役の着付けとする厚手で張りのある衣装をさす。通常は平織組織で練り絹を縦に,色糸を横にして文様を織出し,ときに金銀糸を組入れる。唐織ほど色糸の浮きを長くせず,固く織出される。

厚板
あついた

厚鋼板」のページをご覧ください。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「厚板」の解説

厚板 (アツイタ)

学名:Elaphoglossum yoshinagae
植物。オシダ科の常緑多年草

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の厚板の言及

【鋼板】より

…鋼塊を圧延してつくる板状の材料の総称。鋼板には厚板とそうでない薄板とがある。厚板plateと呼ばれる鋼板はふつう厚さ3mm以上のものをいい,とくに成分と製造の際の温度履歴とが注意深く管理されている。…

※「厚板」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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