日本映画。1964年(昭和39)作品。内田吐夢(うちだとむ)監督。原作はアレクサンドル・デュマ(父)の『モンテクリスト伯』をヒントにした水上勉(みずかみつとむ)の同名小説。敗戦直後、青函(せいかん)連絡船が台風で沈没し、身元不明の遺体が、網走(あばしり)刑務所出所者で質屋一家殺害と放火事件の3人の犯人のうち2名と判明。3人目の容疑者、犬飼多吉(いぬかいたきち)(三國連太郎(みくにれんたろう)、1923―2013)は下北半島に上陸したが、出会った娼婦八重(左幸子(ひだりさちこ)、1930―2001)に庇(かば)われて追っ手を逃れた。10年後、犬飼は京都の名士樽見京一郎(たるみきょういちろう)となっていたが、地元の刑事(伴淳三郎(ばんじゅんざぶろう)、1908―1981と高倉健(たかくらけん)、1931―2014)に逮捕され、護送中の連絡船から身を投げる。16ミリで撮影したフィルムを拡大してワイド画面で上映したため、粒子の粗い画調に北国の風土感や時代色が印象深く表現されて重量感のあるドラマとなった。3時間を超える長尺だったが、東映が無断で短縮版にして公開し、これがもとで内田は東映を退社する。注目を集めた大作であり、内田監督の力量をみせた代表作である。
[千葉伸夫]
…ウォルト・ディズニーの長編記録映画《砂漠は生きている》(1953)も,16ミリ(カラー)で撮影されてから35ミリにブローアップされたもので,《小型映画の世界》の著者宇野真佐男は,これを〈ブローアップ映画〉と呼んでいる。〈ブローアップ映画〉としては,ほかに,例えば,表現上の方法論として〈東映W106方式〉と名付けられたブローアップ方式による内田吐夢監督《飢餓海峡》(1964)の実験もある。これはドラマの内的世界を粗い画調で表現しようとするもので,硬調と軟調の16ミリフィルムを使い分けてソラリゼーション(現像処理によって濃淡の階調をつぶしてネガ出しのような画調を作ることで,銅版画が動いているように見える効果)を使ったり,マン・レイが初めて使ったといわれる〈サバチエ方式〉(現像過程で意識的に光線を入れてネガフィルムに感光させ,光の波が走っているような画像を作り出す方法)を導入するなど,〈小型映画〉のもつ実験的特性を遺憾なく発揮させた作品である。…
※「飢餓海峡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加