本朝麗藻(読み)ほんちょうれいそう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「本朝麗藻」の意味・わかりやすい解説

本朝麗藻
ほんちょうれいそう

平安中期、寛弘(かんこう)年間(1004~1012)の宮廷官僚詩人漢詩文を集めた漢詩文集。撰者は高階積善(たかしなのもりよし)。上下2巻。ただし現存本は上巻の始めと終りを欠く。成立は、入集作品数上位の具平親王(ともひらしんのう)、藤原伊周(ふじわらのこれちか)、大江以言(おおえのもちとき)が1009年7月から翌年7月にかけて相次いで死去していることから、具平親王を中心とする3人の死を哀悼し、一条天皇の寛弘期漢文学の栄光を記念するという意図のもとに1010年7月の前後に編纂(へんさん)されたと考えられる。現存の詩数は150首、詩序は4編で、一条朝の詩宴の多さを反映して詩酒遊宴の作が全体の約3分の2を占める。類型的な表現が目立つが、繊細華麗で情趣的な花鳥風月を詠んだ作品も多い。

[柳澤良一]

『川口久雄・本朝麗藻を読む会編『本朝麗藻簡注』(1993・勉誠社)』『今浜通隆注釈『本朝麗藻全注釈』1・2(1993・1998・新典社)』『柳澤良一・本間洋一・高島要注釈『本朝麗藻』試注1~7、『本朝麗藻 巻下』注解1~16(『北陸古典研究』1~7、9~24)』

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改訂新版 世界大百科事典 「本朝麗藻」の意味・わかりやすい解説

本朝麗藻 (ほんちょうれいそう)

平安中期の漢詩集。高階積善(もりよし)編。1008-10年(寛弘5-7)ごろ成立。完本は伝わらないが,全2巻,約200首の規模。上巻は四季に部類されていたらしく,下巻は山水以下15部より成る。作者は具平(ともひら)親王,藤原伊周(これちか),大江以言(もちとき)ら一条朝寛弘期の詩人をほぼ網羅して36名に及ぶ。七言律の多いこと,押韻の類型性,平仄(ひようそく)のゆるみ,対句機構における弛緩典故凝固,句題詩への傾斜,虚題的世界の追求,などが特徴。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「本朝麗藻」の意味・わかりやすい解説

本朝麗藻
ほんちょうれいそう

平安時代中期の漢詩集。高階積善 (たかしなのもりよし) 撰。上下2巻。寛弘7 (1010) 年頃成立か。一条天皇時代の公卿の漢詩を集めたもの。上巻は首尾ともに欠けているが,春,夏,秋部にあたる 51首,下巻は山水,仏事,神祇,山荘,帝徳,法令,書籍,賢人,讃徳,詩,酒,贈答,餞送,懐旧,述懐の 15部から成り,約 100首の詩を載せる。全体に七律が多く,なかには詩序の長いものもある。全般的に形態に腐心しすぎ,気力に乏しいとされるが,平安前期にはみられなかったような表現もみえ,和臭を帯びてきていることがうかがわれる。作者は一条天皇,具平 (ともひら) 親王,藤原伊周 (これちか) ,藤原道長,藤原為時ら。一条天皇時代の漢詩を知るうえに重要な資料である。

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百科事典マイペディア 「本朝麗藻」の意味・わかりやすい解説

本朝麗藻【ほんちょうれいそう】

平安中期の漢詩文集。高階積善(もりよし)撰。1010年頃の成立。一条天皇朝の頃に活躍した代表的な詩人達の作品を集録する。全2巻。上巻は首尾を欠くが,内容的に春・夏・秋と配列してあり,四時部だったと推定され,51首の詩と3編の詩序が残る。下巻は雑題部で山水・仏事・神祇・山庄・閑居・帝徳・法令・書籍・賢人・讃徳・詩・酒・贈答・餞送・懐旧・述懐と細分され,102首の詩と10編の詩序が収められている。当時の宮廷や摂関家での詩会の盛行をうかがわせる。

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