ほんもつ‐がえし ‥がへし【本物返】
〘名〙
中世、買戻し特約付きの不動産
売買形態。主として
田畑の
売主が
年月にかかわらず売った
値段(
本物)を買主に支払って買戻す
契約のものと、
特定の
期間を経過した後に同じく本物を支払って買戻す契約のものとがあるが、その期間の田畑からの
収益が
利子となる。
米穀などの
現物をもって買戻すものを本物返し、
銭貨で買戻すものを
本銭(ほんせん)返しという。
※
東寺百合文書‐り・元応二年(1320)一一月二一日・源鶴寿丸田地寄進状「本物返に雖令沽却之」
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本物返
ほんものがえし
買戻し特約文言つきの売買をさす中世,近世法上の用語。実際には入質 (占有質) と同様の機能を果すことが多い。その記載の文言によって,今日の売渡し担保に相当するもの,無期限有合せ次第で買戻しが可能なもの,一定年期が経過したのちに買戻しが可能となるものの3種に分類される。年紀売と類似するが,年紀売は一定期間経過後に物の返還が行われるが,本物返は買戻し行為があって,初めて返還が可能となり,この点が大きく異なる。永享 12 (1440) 年,室町幕府は,所領について,その収益が本銭1倍 (200%) に達したときには,これを売主に返還せしめるという令を下した。したがって,ここにおいて,本物返と年紀売との区分は,きわめて曖昧となった。近世における本物返は,江戸幕府の田畑永代売買禁止令を脱法するために使用されることが多く,買戻し文言は付されていても,それは形式にすぎない場合が大部分であった。
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本物返
ほんもつかえし
中世〜近世において,売ったときの価格相当の物品=米布帛(本物)を返せば,いつでも買い戻しうる売買方法
「ほんものかえし」とも読む。銭で売買する場合を本銭 (ほんせん) 返という。田畑の売買に行われ,室町時代には徳政の対象になった。江戸時代には質入れと同一視され,いつでも買い戻せることから田畑永代売買禁止令にふれず,事実上の売買として盛んに行われた。
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