改訂新版 世界大百科事典 「東京夢華録」の意味・わかりやすい解説
東京夢華録 (とうけいむかろく)
Dōng jīng mèng huá lù
中国,北宋の都汴京(べんけい)(河南省開封)の都市繁盛記。10巻。孟元老の著。南宋初め,1147年(紹興17)の序をもつ。北宋末,徽宗(きそう)時代(1101-25)の国都の繁栄の姿を,そこに身をおいた著者が,女真(金)によって破壊されたあとで追憶しつつ記述したもの。東京は西京(洛陽)に対し,宋代では開封を指す。内容は都城の制度,宮殿,官庁,寺院などの叙述から,歳時記の形をとった市民,宮廷の人々の生活描写,飲食,娯楽,風俗など,生きた当時の都市生活におよぶ。現存するまとまった中国の都市繁盛記としても最古のもので,12世紀初めの100万都市開封の,他の文献にみられぬ側面を鮮やかに浮かびあがらせ,中国都市研究のみならず,文学,演劇,民俗学,社会経済史など多方面に貴重な材料を提供してくれる。著者は名もない市井の一員と思われ,文章も拙劣で偏った叙述がある点は否めない。日本の静嘉堂文庫の元刊本がテキストとして最良である。現代日本語の全訳もある。
執筆者:梅原 郁
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報