東秩父(読み)ひがしちちぶ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「東秩父」の意味・わかりやすい解説

東秩父(村)
ひがしちちぶ

埼玉県西部秩父郡にある村。外秩父山地(そとちちぶさんち)北東部にあり、集落は槻(つき)川沿いに広がる。総面積の約75%が山林である。古くは手漉(てすき)和紙細川紙)の生産が盛んで、現在も少数の業者によって続けられ、その技術は国指定重要無形文化財、和紙の製作用具および製品は同重要有形民俗文化財。また、「和紙の里」では紙漉(す)きの体験ができる。細川紙は2014年(平成26)には「和紙―日本の手漉和紙技術」として、岐阜県美濃(みの)市の「本美濃紙」、島根県浜田市の「石州半紙(せきしゅうばんし)」(石見半紙)とともにユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。花卉(かき)栽培が盛んで、ミカンなどの観光農業も行われている。西部は県立長瀞玉淀(ながとろたまよど)自然公園に属し、秩父盆地との境をなす二本木(にほんぎ)、粥新田(かゆにた)、定峰(さだみね)などの峠は、ハイキングに好適である。面積37.06平方キロメートル、人口2709(2020)。

[中山正民]


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改訂新版 世界大百科事典 「東秩父」の意味・わかりやすい解説

東秩父[村] (ひがしちちぶ)

埼玉県西部,秩父郡の村。人口3348(2010)。秩父山地の東縁に位置し,荒川の支流槻(つき)川の上流域を占める。村域の大部分は山林である。秩父市とは定峰峠で通じるが,自動車道路は1955年になって開通したもので,経済的・行政的には東接する小川町や東松山市とのつながりが強い。かつては養蚕とともに木炭手すき和紙の生産が盛んで,特に和紙は小川和紙の発祥地といわれ,江戸時代末までは生産の中心地であった。山間斜面ではコンニャクや茶,シイタケが生産される。花卉栽培も行われる。北部長瀞玉淀県立自然公園に指定され,南部の堂平(どうだいら)山(876m)には国立天文台堂平観測所がある(2000年閉鎖)。村立文化財収蔵庫には手すき和紙用具(重要民俗文化財)が展示されている。
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百科事典マイペディア 「東秩父」の意味・わかりやすい解説

東秩父[村]【ひがしちちぶ】

埼玉県中央部,比企丘陵の西端に位置する秩父郡の村。南端を源流とする槻川が中部から東部へと流下しており,山林の面積が大半を占める。西端の二本木峠から大霧山にかけて秩父高原牧場が広がり,酪農も行われる。南西端の定峰峠は桜の名所として知られ,東部には円錐形の山体が美しい笠山や,頂上に天文台を有しだいだらぼっち伝説も残る堂平山があり,四季を通じて登山者が多く訪れる。また槻川は清流でも知られ,東隣の小川町とともに古くから伝統工芸品として和紙細川紙を産することでも有名で,2014年11月に〈和紙:日本の手漉和紙技術〉としてユネスコ無形文化遺産への登録が決定したことで注目が集まっている。37.06km2。3348人(2010)。

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