関東山地の中核をなす山地。長野,山梨,群馬,埼玉,東京の都県境付近を占める。関東山地からほぼ妙義・荒船山塊を除いた地域を指し,北を鏑(かぶら)川,西を千曲川,南を桂川に囲まれた広い範囲を含み,東は関東平野に面する。山地西部は奥秩父と呼ばれ,金峰(きんぷ)山(2599m),国師ヶ岳(2592m),甲武信ヶ岳(こぶしがたけ)(2475m),雲取(くもとり)山(2017m),大菩薩嶺(だいぼさつれい)(2057m)など標高2000mを超える高峰二十数座を含み,日本アルプス以外の日本の山地としては有数の高度をもつが,火山は一つもない。山地の北東寄りには断層盆地の秩父盆地があり,その東部から北部にかけての周縁部は標高1000m以下の低山性山地で,外秩父山地と呼ばれる。
秩父山地の特色は深い谷と急峻な山地斜面をおおう森林にある。荒川,笛吹川,多摩川,千曲川などとその支流は,山地を浸食して奥行きのある深い谷をつくり,いたるところに峡谷や渓谷を生んでいる。昇仙峡,中津峡,西沢渓谷,丹波川(たばがわ)渓谷などは水量が多く,滝や淵,早瀬が連続し,周囲の森林とともに日本の代表的な渓谷美をつくり出している。森林は近年,二次林が増えつつあるが,源流部にはブナの自然林が広く残り,雲取山から金峰山にかけての主稜線沿いには,コメツガ,シラビソなどからなる亜高山性の針葉樹林が分布する。金峰山西方の瑞牆(みずがき)山や,秩父盆地西方の両神(りようかみ)山,あるいは日原(につぱら)周辺の石灰岩山地には,岩石のつくる奇勝がある。石灰岩からなる山地が多いため鍾乳洞も多く,また武甲(ぶこう)山を中心に石灰岩を原料にしたセメント工業が発達している。
外秩父山地には古くから定峰峠,正丸(しようまる)峠などを通る峠道があって江戸と秩父を結び,奥秩父から甲府盆地へは雁坂峠が通じ,近世には秩父往還または甲州裏街道として交通の要路であった。奥秩父を中心に1950年秩父多摩国立公園に指定され,首都東京に近いため,登山,ハイキング,釣りの好適地として広く利用されている。
執筆者:小泉 武栄
秩父山地は東北日本と西南日本を境するとされる糸魚川-静岡構造線よりも東方に位置しているが,中・古生界基盤地質のうえからみると西南日本外帯に属する。外帯一般と同様に,北から三波川(さんばがわ)結晶片岩帯,秩父累帯,四万十(しまんと)帯に分けられるが,はじめの2帯の名称は秩父山地に由来しており,その意味でこの山地は外帯地質研究の発祥の地である。三波川・秩父両帯の境付近には御荷鉾(みかぼ)山(1286m)に由来する御荷鉾(みかぶ)緑色岩類が発達する。秩父累帯の中央部には西北西~東南東にのびる白亜系からなる凹地帯があり,山中(さんちゆう)地溝帯と称される。その南北両側は先白亜系からなり,石炭紀~ジュラ紀の化石を産出する。その主部は古くから秩父古生層と称されていたが,近年そのかなりの部分が中生層であることが判明した。なお,山中地溝帯東縁には新第三系からなる秩父盆地が局部的に発達するが,これを除くと,秩父山地は後期新生界にとり囲まれた地塁状基盤で,構成地質体は西北西~東南東の一般走向をもち,南北性の赤石山脈とは鋭く屈曲して配置する。
執筆者:市川 浩一郎
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関東地方西部にある関東山地のうち、北部の山地をいい、南部の丹沢(たんざわ)山地、御坂(みさか)山地と相対する。埼玉、東京、山梨、長野、群馬の1都4県に広がる。地質はほぼ北西―南東の帯状構造を示し、北東部が長瀞(ながとろ)変成岩、ついで秩父地方を中心に、大塚専一が秩父古生層と命名した古生層、次に中生層、南西部の長野・山梨方面には火成岩が広がる。山地の北東部には第三紀層からなる陥没した秩父盆地があり、最高部は山梨・長野・埼玉3県境付近で、金峰(きんぷ)山、国師(こくし)ヶ岳、甲武信(こぶし)ヶ岳など2500~2600メートル級の山が連なる。南西部は秩父多摩甲斐(ちちぶたまかい)国立公園に含まれる。
[中山正民]
…関東平野の西にあり,中部地方の東縁部にまたがる山地。広義には丹沢山地を含めることもあるが,ここでは秩父山地を中心としその北に連接する山地域を含める。大菩薩嶺(2057m),甲武信(こぶし)ヶ岳(2475m),三国山(1828m),荒船山(1423m),物見山(1375m)をつらねる南北方向の主山稜は,西に偏してあり,その西斜面は急で短く,東斜面には東に長く延びる支山稜が平行している。…
※「秩父山地」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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