柵戸(読み)きのへ

精選版 日本国語大辞典 「柵戸」の意味・読み・例文・類語

き‐の‐へ【柵戸】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「き」は城柵(じょうさく)、とりでをさす ) 奈良平安時代陸奥出羽越後などに設けた城柵の中に土着させた民家。柵を守る民であり、後の屯田兵にあたる。きへ。
    1. [初出の実例]「渟足(ぬたり)の柵(き)を造りて、柵戸(キノヘ)を置く」(出典日本書紀(720)大化三年是歳(北野本訓))

き‐へ【柵戸】

  1. 〘 名詞 〙きのへ(柵戸)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「柵戸」の意味・わかりやすい解説

柵戸(きのへ)
きのへ

「さっこ」とも読み、『万葉集』では「きへ」とも読んでいる。古代東北経営のため送り込まれた屯田兵(とんでんへい)。律令(りつりょう)時代になって、蝦夷(えぞ)経営が本格化すると、建設された城柵(じょうさく)の周辺には、数多くの柵戸が送り込まれた。647年(大化3)渟足柵(ぬたりのき)をつくり、柵戸を置いたのが初見。それは、東は尾張(おわり)(愛知県)以東、北は越前(えちぜん)(福井県)以北の東国北国の民に限られていた。初めは富戸中心だったが、のちには浮浪人罪人などが徒刑(とけい)として送り込まれた。彼らは「堡村(ほそん)」とよばれる柵戸村を形成し、東北開拓の先兵となった。

高橋富雄


柵戸(さっこ)
さっこ

柵戸

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「柵戸」の解説

柵戸
さくこ

「きのへ・きへ」とも。古代,東北地方や南九州地方にたてられた城柵に付属した民。東北地方の蝦夷(えみし)に対した城柵の柵戸が著名。政府は城柵をたて,柵戸を諸国から移配し,城柵の周りに住まわせて開拓させ,しだいにその地域に律令制支配をうちたてていった。はじめ一般民戸を戸単位に移配したが,やがて人単位となり,8世紀中頃以降,浮浪人や罪人が送りこまれるようになった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の柵戸の言及

【木戸】より

…現代では,戸外にある木製の簡単な構造の戸をさすが,古代・中世には柵戸,ないし城戸と書かれ,柵や城郭の出入口を意味した。ついで近世では,城下町の郭内への出入口などの軍事的要素の強い門のこともいうが,主として江戸・大坂などの大都市の表通りの町境の要所に設けられた門のことを意味するようになる。…

※「柵戸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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