格子エネルギー(読み)コウシエネルギー

化学辞典 第2版 「格子エネルギー」の解説

格子エネルギー
コウシエネルギー
lattice energy

絶対零度において結晶格子を形成している構成粒子(原子イオン分子)を,互いに相互作用がなくなるまで引き離すのに要するエネルギー固体凝集エネルギーと同じである.イオン結晶の場合はH. Bornによって理論的に求められた.すなわち,高エネルギーはイオン間にはたらく静電エネルギー

-αe/4π ε0r
(αは格子構造によって決まるマーデルング定数rはイオンの最近接距離,eは電子電荷),ファンデルワールスのエネルギー,二つのイオン間にはたらく反発のエネルギー,格子の零点エネルギーの和として表される.イオン結晶の格子エネルギーを直接実測することはできないが,ボルン-ハーバーのサイクルによって間接的に求められ,上の計算値とよい一致を示している.分子性結晶の場合は,格子エネルギーは絶対零度における昇華熱に等しい.理論的には,永久双極子間の配向効果によるエネルギー,永久双極子によって引き起こされる誘起効果のエネルギー,分散力によるエネルギー(ファンデルワールスのエネルギーに対応する)などの和として表され,実測の昇華熱とよい一致を示している.しかし,大部分の分子性結晶ではほかの引力斥力のエネルギーは互いに打ち消されるので,分散力のエネルギーを格子エネルギーとみなすことができる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「格子エネルギー」の意味・わかりやすい解説

格子エネルギー
こうしエネルギー
lattice energy

原子,分子,イオンなどが結晶を形成するときの凝集エネルギー。原子間相互作用の位置エネルギーと,原子の運動エネルギーとから成る。分子結晶では絶対零度における昇華熱に等しい。イオン結晶では単独陽イオン陰イオンに分解するのに必要なエネルギーで,イオン間の静電エネルギーが主となる。

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