桂林(読み)けいりん

精選版 日本国語大辞典 「桂林」の意味・読み・例文・類語

けい‐りん【桂林】

[1] 〘名〙
カツラの林。転じて、美しい林。
※類聚句題抄(11C中)早涼秋尚嬾〈藤原為時〉「蘆浦波幽花未白、桂林露宿葉無紅」 〔司馬相如‐上林賦〕
② 文官または文人のなかま。
[2] 中国、広西(カンシーチワン)族自治区北東部の都市。秦の始皇帝が南越を征服して郡を置いてから、漢代には県、明代には府が置かれ、民国では広西省の省都となった。古来華中華南を結ぶ交通の要地で、商業の中心地でもある。近郊には景勝の地が多い。

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デジタル大辞泉 「桂林」の意味・読み・例文・類語

けいりん【桂林】[地名]

中国広西チワン族自治区観光都市。珠江支流に臨む水陸交通の要地で、石灰岩地域特有の奇峰が多い。コイリン

けい‐りん【×桂林】

カツラの林。また、美しい林。
文人の仲間。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「桂林」の意味・わかりやすい解説

桂林
けいりん / コイリン

中国南部、広西(こうせい)チワン族自治区北東部の地級市。珠江(しゅこう)水系に属する桂江(けいこう)上流の江(りこう)に沿う観光都市として知られる。臨桂(りんけい)など6市轄区、陽朔(ようさく)、興安(こうあん)など9県および2自治県を管轄する(2016年時点)。人口526万5000(2014)。長江(ちょうこう)(揚子江(ようすこう))水系と珠江水系を結ぶ霊渠(れいきょ)運河の南の要地として開け、かつては広西省の政治、文化の中心地で、軍事上の重要地点でもあった。現在は湘桂(しょうけい)線(衡陽(こうよう)―憑祥(ひょうしょう))や2013年開通の湘桂高速鉄道(衡陽―南寧(なんねい))が通じ、また市街近郊には桂林両江国際空港があり、広西チワン族自治区の北東の入口となっている。米、綿花、絹などの集散地で、鉄鋼、紡織、化学肥料、電機などの工業が発達している。

 古くから「桂林の山水は天下に冠たり」とたたえられた絶景の地で、自治区第一の観光地であり、外国人の観光客も多い。市内および市周辺を囲むように石灰岩地域特有の孤峰が林立し、鍾乳洞(しょうにゅうどう)も発達、世界に類のない奇観を呈する。市の中心部には独秀峰、その北に対峙(たいじ)して畳彩(じょうさい)山がそびえ、それらの山頂からは眼下に洑波(ふくは)山、江を隔てて七星山、月牙(げつが)山、屏風(びょうぶ)山、江の下流に象鼻(ぞうび)山などが一望のもとに望まれる。ほかに蘆笛岩(ろてきがん)の鍾乳洞も美しい。これらのカルスト地形は2014年に「中国南方カルスト」の構成資産として世界遺産の自然遺産に追加登録された(世界自然遺産)。江下りも有名である。

[青木千枝子・河野通博・編集部 2017年8月21日]

『久保田博二著『久保田博二写真集 桂林夢幻』(1982・岩波書店)』『中国人民美術出版社編『中国カラー文庫4 桂林の旅』(1981・美乃美)』


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改訂新版 世界大百科事典 「桂林」の意味・わかりやすい解説

桂林 (けいりん)
Guì líng

中国広西チワン(壮)族自治区北東部の都市。西江の支流である桂江上流域にあり,湘桂鉄道(衡陽~友誼関)が通る。人口80万(2000)。桂林地区の8県,2自治県を管轄する。秦代に桂林郡,漢代に始安県が置かれ,唐代に臨桂県と改められた。明・清代には桂林府の治所であった。1940年,臨桂県から分離して桂林市が置かれた。もと広西省の省都(現,南寧)であり,古来,中原から嶺南へ行くにも,逆に嶺南地方から中原に北上するにも必ず通らねばならない要衝の地で,非常に古い歴史都市である。秦・漢代には嶺南を支配する軍事的要地とされ,後代にも政治的・軍事的重鎮として重視されてきた。石灰岩の奇峰に囲まれた台地の上にあり,展望が非常によく,唐代に築かれた石灰岩の切石の城壁がある。市が管轄する桂林地区はトン(侗),チワン,ヤオ(瑶),ミヤオ(苗)族などが居住し,丘陵,山地が多いが,古くから水利施設の整備により水田が開かれた。湘江,桂江は地区内に源を発する。秦代に霊渠(湘桂運河)が開削されて両江が通じ,長いあいだ長江(揚子江)と珠江の両流域を結ぶ水運の要道となっていた。解放後,補修が行われ,この地区の灌漑面積は拡大された。気候温暖で,年降水量は1400~2000mmに達する。米,いも類,ラッカセイ,チョマ,油茶(アブラツバキ),アブラギリなど農産物が豊かである。市内では解放前近代工業は未発達であったが,解放後,機械,紡績,化学,セメント,製薬などの工業が発達し,また鉄器,織布,くし類,毛筆など伝統的手工業も復興した。市内の風景は秀麗で,〈桂林の山水は天下に甲たり〉とたたえられ,独秀峰,畳彩山,洑波山,南渓山,象鼻山,蘆笛岩,七星岩,桂海碑林等はとりわけ有名である。また桂林地区でも陽朔県の灕江両岸には石灰岩の奇峰や鍾乳洞が多く,眺望は絶佳である。海外からも多くの観光客が訪れる。
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普及版 字通 「桂林」の読み・字形・画数・意味

【桂林】けいりん

桂の林。〔晋書、郤伝〕()、雍州の刺に累す。武、東堂に會す。に問うて曰く、、自ら以て何如(いかん)と爲すと。對(こた)へて曰く、臣、賢良對策に擧げられ、天下第一と爲るも、ほ桂林の一枝、崑山の片玉のごとしと。、笑ふ。

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百科事典マイペディア 「桂林」の意味・わかりやすい解説

桂林【けいりん】

中国,広西チワン族自治区北東部の都市。旧省都。湘桂鉄路(衡陽〜友誼関)に沿い,付近一帯の農産物を集散するとともに湖南省南部とも密接な連絡を有し,近年著しく商工業が盛んとなった。漓江に臨み,石灰岩地帯独特の奇岩の多い景勝地で知られる。125万人(2014)。
→関連項目平楽

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世界大百科事典(旧版)内の桂林の言及

【桂】より

…唐・宋以後,江南の開発にともない,桂はこの地方に多いモクセイを指す場合が多くなる。桂林,桂陽の地名もモクセイにちなむ。【梅原 郁】。…

※「桂林」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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