(読み)マ

デジタル大辞泉 「麻」の意味・読み・例文・類語

ま【麻】[漢字項目]

常用漢字] [音](慣) [訓]あさ お
〈マ〉
草の名。アサ。「麻紙麻布大麻白麻快刀乱麻
アサに似た草の名を表す語。「亜麻黄麻おうま胡麻ごま蕁麻じんま苧麻ちょま蓖麻ひま
しびれる。「麻酔麻痺まひ麻薬鈍麻
[補説]3は「」と通用する。
〈あさ〉「麻糸麻縄麻布・麻袋」
[名のり]ぬさ
[難読]𦯶麻いちび蕁麻いらくさ麻幹おがら苧麻からむし綱麻つなそ麻疹はしか麻雀マージャン麻婆豆腐マーボどうふ真麻まお

あさ【麻】

アサ科一年草。高さ1~2.5メートル。茎はまっすぐに伸び、葉は手のひら状の複葉で対生。雌雄異株。夏、黄緑色の小花を穂状につけ、秋に実が熟す。中央アジアの原産で、熱帯から温帯にかけて栽培され、茎の皮から繊維をとり、麻糸にする。種子からは油をとる。大麻たいま大麻草たいまそう。あおそ。 夏》「ゆり出だす緑の波や―の風/惟然
茎の靭皮じんぴから繊維をとる麻・亜麻苧麻ちょま黄麻こうまや、葉から繊維をとるマニラ麻サイザル麻などの総称。また、それらから製した繊維や織物。
[類語]羊毛純毛ウールカシミアモヘア木綿綿めん純綿真綿まわたコットンジュート本絹正絹しょうけん人造絹糸シルク化学繊維

お〔を〕【麻/×苧】

《「」と同語源か》
の古名。〈和名抄
麻またはからむしの茎の繊維から作った糸。
「―をりて」〈土佐

そ【麻】

あさ。多く、他の語と複合して用いる。「山」「すが
「娘子らが続麻うみをのたたり打ち―掛けうむ時なしに恋ひ渡るかも」〈・二九九〇〉

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精選版 日本国語大辞典 「麻」の意味・読み・例文・類語

あさ【麻】

  1. 〘 名詞 〙
  2. クワ科の一年草。中央アジアの原産と考えられるが、日本への渡来も古く、古代より、重要な繊維原植物として栽培されている。高さ一~三メートル。茎は四角柱で細毛がつく。葉は掌状に三~九裂し、各片は細長く、先がとがり、縁には鋸歯(きょし)がある。雌雄異株で、夏、淡黄緑色の雄花と、緑色の雌花が咲く。実は「おのみ」と呼ばれ、灰色の卵円形で食用となるほか油をとる。インド産のものは麻酔性物質を多く含む。茎の皮から繊維をとり、布や糸、綱などとする。古代、麻でつくった衣服は喪服として用いた。また、皮をはいだ残りの茎は「おがら」と呼ばれ、懐炉灰の原料、わら屋根の下ぶきなどのほか、お盆の「迎え火、送り火」としてたくのに用いる。大麻。→苧(お)麻(そ)。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「小垣内(をかきつ)の 麻(あさ)を引き干(ほ)し 妹(いも)なねが 作り着せけむ 白栲(しろたへ)の 紐をも解かず」(出典:万葉集(8C後)九・一八〇〇)
    2. 「身を隠さんとて日を暮らし、麻(アサ)や蓬(よもぎ)の生ひ茂りたる中に隠れ居たれば」(出典:太平記(14C後)二)
  3. 大麻のほか、亜麻、苧麻(ちょま)、黄麻(こうま)、マニラ麻、ニュージーランド麻などの植物からとれる強靱な有用繊維の多くの種類をさす総称的な呼び名。また、それらの原植物の名。
  4. 麻糸で織った布類およびそれで作った衣類の総称。→あさ(麻)の衣(きぬ・ころも)
    1. [初出の実例]「藤の衣、あさのふすま、得るにしたがひて肌(はだへ)を隠し」(出典:方丈記(1212))
  5. あさがみしも(麻上下)」の略。
    1. [初出の実例]「御門番大名、御規式御成の節御成還御共麻にてつとめる也」(出典:随筆・幕朝故事談(1789‐1801か))

【麻・苧】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物「あさ(麻)」または「からむし(苧)」の異名。
    1. [初出の実例]「桜麻の苧(を)ふの下草露しあれば明かしてい行け母は知るとも」(出典:万葉集(8C後)一一・二六八七)
  3. 麻、苧の茎の皮の繊維で作った糸。緒にするもの。→お(緒)
    1. [初出の実例]「あさ乎(ヲ)らををけにふすさにうまずとも明日きせさめやいざせ小床(をどこ)に」(出典:万葉集(8C後)一四・三四八四)

麻の補助注記

オ(尾)・オ(緒)もこの麻糸のオに関係があると思われる。


そ【麻】

  1. 〘 名詞 〙 あさ。「あかそ赤麻)」「かみそ紙麻)」「すがそ(菅麻)」「まそ(真麻)」「やまそ(山麻)」などと複合して用いることが多い。
    1. [初出の実例]「三輪山の山辺真蘇(ソ)木綿(ゆふ)短か木綿かくのみからに長くと思ひき」(出典:万葉集(8C後)二・一五七)

麻の補助注記

上代から「あさ」「お(を)」の語もあり、この「そ」との間の関係は明確ではない。


ま【麻】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 植物の麻(あさ)。〔日葡辞書(1603‐04)〕 〔荀子勧学
  3. 麻の皮。また、麻で作った糸・布・衣・帯。中国で喪服に用いた。〔礼記‐檀弓・下〕

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普及版 字通 「麻」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 11画

(旧字)
11画

[字音]
[字訓] あさ・もふく

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
旧字はに作り、广(げん)+(はい)。〔説文〕七下に「と同じ。人の治むるなり。屋下に在り。广に從ひ、に從ふ」とし、屋下にを治むる意とする。〔伝〕には文首に「(あさ)なり」とあり、(し)字条七下に「なり」とあるのと互訓。广は宮の象。を神事に用いる意を示すものであろう。わが国の白香(しらか)の類にあたる。禦祀を示す(御)の初文は、卜文では幺(よう)に従い、幺は麻たばを拗(ね)じた形。喪礼にも多く麻を用いた。唐代には、麻紙を詔勅に用いた。

[訓義]
1. あさ、あさいと、お、あさぬの。
2. 喪服、喪章。
3. 麻の紙、詔勅。
4. ごま。
5. 痲(ま)と通じ、しびれる。

[古辞書の訓]
〔和名抄〕 乎(を)、一に阿佐(あさ)と云ふ 〔名義抄 ヲ・アサ

[部首]
〔説文〕〔玉〕に麾など十三字を属するが、麾のほかはほとんど用例のない字である。

[声系]
〔説文〕に声として糜・靡・(摩)・縻など八字を収める。みなの披靡する意を承ける字である。

[語系]
mea、靡miaiは声近く、麻の乱れ靡くことを靡という。(磨)muaiは捫munと声義の通ずる語である。

[熟語]
麻鞋・麻案・麻衣・麻烟・麻・麻・麻・麻・麻姑・麻衰・麻索・麻・麻紙・麻子・麻糸・麻脂・麻実・麻・麻蒸・麻縄・麻疹・麻仁・麻制・麻茶・麻・麻紵・麻田・麻・麻煩・麻痺・麻風・麻沸・麻弁・麻冕・麻履
[下接語]
亜麻・麻・胡麻・黄麻・山麻・子麻・糸麻・紙麻・脂麻・麻・詔麻・制麻・績麻・麻・桑麻・叢麻・大麻・治麻・麻・紵麻・長麻・鈍麻・白麻・披麻・布麻・牡麻・油麻・乱麻

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

化学辞典 第2版 「麻」の解説


アサ
hemp

広義に麻とは,靱皮を利用する,大麻(hemp),亜麻(flax),ちょ麻(ラミーramie),ジュート(黄麻:jute)と,葉繊維を利用するマニラ麻,サイザル麻などの植物自体とその繊維の両者をいう.しかし,通常,繊維としての麻は大麻をさすことが多い.これはアサ科の1年生草本の靱皮繊維である.単繊維は長さ15~25 mm,幅16~50 μm 程度,色は暗褐色,漂白すると強度はいくぶん弱くなるが,綿,亜麻よりも強い.耐水性,耐食性が大きく,キャンバス,ホース,なわ,ロープに用いる.大麻繊維の形態上の特徴は,円筒状で先端がまるく,分岐することもあり,まるくない亜麻と区別できる.主成分はセルロースであり,分子量,結晶化度,配向度いずれも大きい.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

旺文社日本史事典 三訂版 「麻」の解説


あさ

古代から広く利用された繊維植物
縄文時代の出土例があり,『魏志』倭人伝にも記載がある。令制では布(麻布)は調・庸の対象となる。大麻 (たいま) ・黄麻・亜麻・苧麻 (ちよま) があり,最も一般的な庶民の衣料原料として普及。織物としては,中世に信濃(長野県)・越後(新潟県)で多く生産され,近世では,木綿におされたが,なお四木三草の一つにあげられ,奈良晒 (さらし) ・越後上布 (じようふ) ・近江蚊帳 (かや) などの名が高い。またさらした繊維を緒 (お) といい,魚網・綱・縄などの原料ともなった。

出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報

動植物名よみかた辞典 普及版 「麻」の解説

麻 (アサ・マ)

学名:Cannabis sativa
植物。クワ科の一年草,薬用植物

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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