改訂新版 世界大百科事典 「森林気候」の意味・わかりやすい解説
森林気候 (しんりんきこう)
森林の内部にみられる固有の気候。林外と比べて,林内では風速が弱く,湿度が高く,光が弱く,気温は日平均気温や日最低気温がやや高く,日最高気温がやや低いのが特徴である。森林は樹木の影響で,内外の空気の流通が妨げられ,また樹冠が大気中で一種の境界層の役割をするため,その上と下とで風速などの気候要素に大きな差を生じることがある。たとえば風速が樹冠の上では5m/s近いとき,林内では1m/s程度という例もある。樹冠は昼間は日射を遮るため林内の気温上昇がおさえられ,夜間は地表面からの長波長放射を遮るため,林内の気温低下が和らげられる。また葉面からの蒸散作用のため水蒸気量が多くなる。森林気候は落葉期よりも葉の茂っている季節に顕著に現れる。
執筆者:河村 武
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報