樅ノ木は残った(読み)モミノキハノコッタ

デジタル大辞泉 「樅ノ木は残った」の意味・読み・例文・類語

もみのきはのこった【樅ノ木は残った】

山本周五郎の長編歴史小説。江戸時代初期に仙台藩で起きたお家騒動題材に、藩取り潰しの陰謀に立ち向かう家老原田甲斐の孤独な闘いを描く。昭和29年(1954)から昭和31年(1956)にかけて「日本経済新聞」に断続的に連載。昭和33年(1958)刊行。第13回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)受賞NHK大河ドラマなど、数多くの映像化作品がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「樅ノ木は残った」の意味・わかりやすい解説

樅ノ木は残った
もみのきはのこった

山本周五郎の長編小説。1954年(昭和29)7月から『日本経済新聞』に連載、後半は書き下ろしで58年完稿。山本の決定打的作品の一編となった。作品の背景寛文(かんぶん)事件ともよばれた伊達(だて)騒動で、紛争渦中の人となった国家老原田甲斐(かい)の苦衷と忠誠とを描き、歴史小説の最高の果実として絶賛を浴びた。既往の原田甲斐悪人説への勇敢な挑戦と解するむきに、山本自身は「史料を忠実に読みさえすれば、自然に浮かび上がってくるはず」の人間像を描いたまで、と反発している。

[木村久邇典]

『『樅ノ木は残った』全二冊(新潮文庫)』

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デジタル大辞泉プラス 「樅ノ木は残った」の解説

樅ノ木は残った

①山本周五郎の長編歴史小説。1958年刊行。江戸時代、仙台藩で起こったお家騒動(伊達騒動)を題材とする。第13回毎日出版文化賞受賞(辞退)。三隅研次監督、長谷川一夫主演の映画「青葉城の鬼」(1962)の原作
②1970年放映のNHKの大河ドラマ。①を原作とする。仙台藩の御家騒動・伊達騒動における家老・原田甲斐の苦悩を描く。脚本:茂木草介。音楽:依田光正。出演:平幹二朗、吉永小百合、栗原小巻ほか。

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世界大百科事典(旧版)内の樅ノ木は残ったの言及

【原田甲斐】より

…仙台藩奉行(家老)。伊達騒動(寛文事件)で有名。名は宗輔。知行地4183石で宿老の家柄に生まれ,1648年(慶安1)評定役,63年(寛文3)奉行に進む。幼君亀千代の後見として専権を振るう一門伊達兵部少輔宗勝と結び,伊達安芸宗重らの門閥・家臣団,他の奉行と対立した。政争は拡大し幕府への出訴となり,敗訴が決定的となった3月27日大老酒井忠清邸で安芸を斬り,みずからも斬られた。【難波 信雄】
[作品化]
 伊達騒動は実録本や講釈に文芸化され,なかでも実録本《伊達厳秘録》(宝暦(1751‐64)ごろ成立か)が著名。…

※「樅ノ木は残った」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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