東南アジアや東インド産の香木の一種である白檀(びゃくだん)、紫檀(したん)、栴檀(せんだん)など檀木を素材としてつくった彫像。中国ではすでに漢代の文献に檀像のことがみられ、仏像としては六朝(りくちょう)の宋(そう)の泰始(たいし)年間(3世紀なかば)に何敬叔(かけいしゅく)がつくったのが初めだとされる。隋(ずい)・唐ごろに盛んにつくられたが、現在中国には遺品がなく、日本に現存する法隆寺九面観音(かんのん)像(『法隆寺資財帳』によれば養老(ようろう)年間、8世紀初めの請来(しょうらい)品で、白檀製、造高37.1センチメートル)、高野山(こうやさん)の枕(まくら)本尊(『弘法(こうぼう)大師御将来目録』記載のものと推定される白檀製の仏龕(ぶつがん))などが唐からの請来品である。檀木の堅さと香りのよさ、木目の美しさ、希少性を生かすため、彫像のすべての部分を一材から彫り出して緻密(ちみつ)な彫刻を施し、彩色や漆箔(しっぱく)をしない(髪の毛、眉(まゆ)、瞳(ひとみ)、唇など、ごく一部に彩色するものもある)のが特色で、ほとんどが小像である。平安時代以降は日本でもこの檀像の影響を受けて、彩色をせずに木肌を現した細かい彫刻の像が日本産の代用材(榧(かや)、桜、檜(ひのき)など)でつくられているが、これを檀像様(よう)彫刻とよんでおり、広義の檀像にはこれらも含められる。
[佐藤昭夫]
南方産のビャクダン(白檀),シタン(紫檀),センダン(栴檀)などの檀木を素材とした仏像。芳香があり,木目が緻密であるという檀木の性質に加えて,インドで優塡(うでん)王が釈迦在世中に作った最初の仏像が牛頭(ごず)栴檀製であったという説話《増一阿含経》に象徴されるように,仏像を作る木材として最も珍重され,インドで早くから製作されたと思われる。中国でも南北朝宋代,泰始年間(465-471)の造像を伝える記録があり,以後造像を記す文献は多い。日本への将来像も少なくなく,719年(養老3)唐から将来されたと考えられる白檀製の法隆寺九面観音像(像高37.1cm)が著名である。これは瓔珞(ようらく),天衣などの本体から離れた部分まで一材から彫出され,髪部などを除いて素木で仕上げられている。このような細密な彫技を示す素木の小像が檀像の特徴である。平安時代初期には檀龕像が多く将来され,日本での製作も盛んになった。日本では材料が入手し難いので,おもにカヤ,サクラ,ヒノキ等の代用材が用いられ,広義に檀像という場合はこれらを含める。おもな遺品としては,白檀製のものに京都府勝持寺薬師如来像,高野山金剛峯寺の諸尊仏龕(枕本尊)などがあり,代用材製のものに奈良県霊山寺十一面観音像などがある。
執筆者:副島 弘道
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