武鑑(読み)ぶかん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

江戸時代,諸大名旗本のすべてについて出身,格式職務石高家紋など,武家大要がわかるように列挙した刊行物。「大名」と「旗本武鑑」に分れる。寛永年間 (1624~44) に出た『治代普顕記』所収のものが原型といわれる。正保4 (47) 年に出た『正保武鑑』が形式の整ったもので,慶安4 (51) 年の『大名武士鑑』や貞享5 (88) 年の『本朝武鑑』などが有名。正徳6 (1716) 年江戸の人で須原屋茂兵衛の出した『正徳武鑑』以後は,毎年改版再刊され出雲寺版と競争した。刊行当時職員録としての需要にこたえたことはいうまでもないが,後世の研究にも便利で,森鴎外野村胡堂は常に座右に置いて執筆した。江戸時代の武鑑を集大成したものとして橋本博編『大武鑑』 (13冊,1935~36) がある。

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百科事典マイペディアの解説

江戸時代の大名・幕府役職者の系譜・紋・格式・石高・職務・所領・居城・・献上品目等が一覧できる書物総称。1647年の《正保(しょうほう)武鑑》が古く,1688年の《本朝武鑑》は有名。廃藩置県まで年次改訂して出版された。おもなものは橋本博編《大武鑑》(1935年)に収録。

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世界大百科事典 第2版の解説

江戸時代,諸大名の氏名,本国,居城,石高,官位家系,相続,内室,参勤交代期日,献上および拝領品目,家紋,旗指物重臣などを掲載した小型本。寛永年間(1624‐44)の《治代普顕記》所収の〈日本六十余州知行高一万石以上〉の一編が先蹤であるが,形態が整ったのは《正保武鑑》(1647)で,《大名武士鑑》(1651年,江戸日本橋中野仁兵衛刊),《知行附》(1656年,伊勢屋刊),《江戸鑑》(1659)などが早いものである。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

江戸時代に刊行された大名・旗本・幕府役人の名鑑をいう。それぞれ「大名武鑑」、「旗本武鑑」(『国字分名集(こくじぶんめいしゅう)』)、「御役(おやく)武鑑」とも称し、民間の書肆(しょし)によって刊行された。幕府編纂(へんさん)の「分限(ぶんげん)帳」とは類を異にする。体裁は半紙半截(はんせつ)の縦本(たてぼん)4冊(巻1・巻2は「御大名衆」、巻3は「御役人衆」、巻四は「西御丸附(にしおまるづき)」)を典型とし、ほかに折本(おりほん)や懐中(かいちゅう)本などがあった。そこには大名の場合は、本姓、本国、系図、姓名、席次、家督、官位、内室、嫡子(ちゃくし)、参勤、時献上、家紋、槍印(やりじるし)、纏(まとい)、屋敷地、菩提寺(ぼだいじ)、家臣、石高(こくだか)、封地、里程、城主歴代、旗本の場合は本姓、本国、家紋、石高、屋敷地、姓名、役人の場合は役名、支配、役席、役高、本人および父親の姓名、石高、前職、分掌、就任年次、家臣、屋敷地、家紋、槍印などが記載されている。

 幕藩体制の確立する寛永(かんえい)・正保(しょうほう)(1624~48)のころから内容の簡単なものがみえ始め、明暦(めいれき)の大火(1657)後まもなく『大名御紋尽(ごもんづくし)』『江戸鑑(かがみ)』が刊行されて、後世武鑑の体裁が整った。『武鑑』の名称も、1685年(貞享2)松会刊行の『本朝武鑑』を初見とするという。この直後の元禄(げんろく)年間(1688~1704)その刊行はにわかに盛んとなるが、享保(きょうほう)(1716~36)以降、大書肆須原(すはら)屋刊行の年号を表題に付した武鑑、幕府御書物師出雲寺(いずもじ)刊行の『大成武鑑』に代表されるようになる。武家社会の情報をてっとり早く得たい庶民、国元への土産(みやげ)にしたい江戸勤番の武士など、買い求める者は多かった。しかし、私版であるうえに人事異動や屋敷替えなどその都度(つど)の訂正には限界もあり、記載内容には正確さを欠くきらいがあった。それでも今日、武家社会の研究にしばしば利用され、活字化されたものもある。

[北原章男]

『橋本博編『大武鑑』全13冊(1935・大洽社/復刻版・全3巻・1965・名著刊行会)』『石井良助監修『文化武鑑』全7巻(1981~82・柏書房)』『石井良助監修『文政武鑑』全5巻(1982~92 ・柏書房)』


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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 江戸時代、武家の姓名・紋所・知行高・居城・家来の姓名などを記載した書。本朝武鑑・太平武鑑・大成武鑑・鎌倉武鑑・足利武鑑の類。
※島崎金次郎宛大田南畝書簡‐享和元年(1801)八月一二日「此武鑑此方にて甚めづらしく候」

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旺文社日本史事典 三訂版の解説

江戸時代,大名・旗本の名簿
大名の本国・居城・石高・家系・家紋や旗本の知行所・職務などが中心で,1647年刊の『正保武鑑』から形式が整い,年号を付して逐次改版して刊行された。

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世界大百科事典内の武鑑の言及

【本屋】より

…江戸ははじめ上方有力本屋の出店が多かったが,18世紀後半から江戸で成長した本屋が活躍した。《武鑑》や江戸地図,さらに漢学・蘭学の本を出した須原屋茂兵衛とその一門,歌麿や写楽の浮世絵を刊行し,黄表紙にベストセラーを出した蔦屋重三郎(つたやじゆうざぶろう)など特色ある本屋が現れた。江戸の本屋は19世紀初めで80軒ほどであった。…

※「武鑑」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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