六訂版 家庭医学大全科 「母体の変化」の解説
母体の変化
ぼたいのへんか
Body changes during pregnancy
(女性の病気と妊娠・出産)
子宮の変化
非妊娠時に50gくらいの子宮は、妊娠末期には1㎏にまで大きくなります。この変化は、子宮筋の増殖によるものではなく、一つひとつの筋細胞が肥大化して起こります。大きさだけでなく、形も非妊娠時の西洋ナシ形から卵円形に変化し、硬度も軟らかくなります。
胎児に栄養を与えるために子宮の血流量は大いに増え、妊娠末期には、母体の全血流の5分の1から6分の1が子宮に供給されるようになります。また、子宮や腟からの分泌物も増え、腟粘膜は充血のために暗紫赤色になります。
子宮以外の変化
①循環器、血液系
血液量は、妊娠30週ころをピークにして、非妊娠時の1.4倍にまで増えます。白血球や血小板も増え、血液が固まりやすくなります。赤血球量も体全体としては増えますが、血液量の増加に追いつかず、その濃度は低下し、貧血になります。血清中の蛋白濃度も低下します。
心臓は、血液量が増えるのに伴って拍出量も増え、妊娠30週ころのピーク時には、非妊娠時の1.3~1.6倍にまで増加します。このため、もともと心臓に病気がある女性は、この時期に心機能が悪化して心不全になることがあります。血圧は、正常妊娠であるかぎり動脈圧は上がりませんが、静脈圧は大きくなった子宮の圧迫によって下半身で上がり、
また、妊婦があお向けに寝ると下大静脈が子宮で圧迫され、心臓に血液がもどりにくくなるので、拍出量が減って血圧が低下し、気分が不快になりやすくなります(
②呼吸器系
大きくなった子宮で
③
緊張や皮下脂肪のために伸び広がり、
④皮膚
顔面、
⑤乳房
妊娠8週ころから大きくなり始め、10週には水のように透明な
⑥泌尿器系
大きくなった子宮が膀胱を圧迫するため、
また、妊娠中は腎臓から糖がもれやすくなり、糖尿病でなくても尿糖が検出されやすくなります。
⑦消化器系
唾液の分泌が多くなり、味覚の変化が起こります。胃は上方に圧迫され、消化機能が低下します。
⑧骨、関節
分娩に備え、骨盤を形成する
⑨内分泌系
妊娠中の黄体や胎盤から出る性ステロイドホルモンによって、
⑩代謝系
妊娠中は、胎盤や副腎から血糖を増加させるホルモン(グルココルチコイドなど)が増えるため、膵臓のインスリン分泌はむしろ増えているにもかかわらず、血糖が上がりやすくなります。このため、妊娠中にだけ起こる
藤井 知行
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報