改訂新版 世界大百科事典 「水文気象」の意味・わかりやすい解説
水文気象 (すいもんきしょう)
hydrometeorology
地球上での水が蒸発,凝結,流動などの諸過程を通して気圏・水圏・地圏の中を循環しているようすを気象学的立場から研究することをいう。その研究には水文学,気象学,地下水学などの分野が関連する。
長雨あるいは集中豪雨のように,降雨現象には地域的・時間的・空間的分布特性があり,その原因としては,その地域の気候特性や地形の影響があるとともにそのときの大気じょう乱の特性が関係をもっているが,このようにして空から地面に達した降水は,地表の条件や河川の形状,こう配,河道の性状に従っていろいろな流出形態を示す。また降水の一部は地下水として流下し一部は気温,風速,日射や植被状況に応じて蒸発する。海に入った水もまたその表面の気象条件に応じて蒸発し,水は地中,地表,大気の中を,水,水蒸気,氷雪とその姿を変えながら循環する。降水が降雨の場合と降雪の場合では,その後の流出に大きな差がでる。すなわち積雪は自然の巨大なダムの役割を果たし,積雪後の気象状況によって融雪流出の早い遅いの差が生ずる。
水文気象は水資源や治水計画にとって重要なものであり,水文気象統計は単なる降雨の統計だけでなく,水位や流量も合わせて統計を行い,総合的な水管理システムの確立に役だつ。世界的にも水文気象は重視され,地球上の水資源の実態を調査するために,1965年からユネスコ主催の国際水文学十年計画(IHD)が実施され,日本でも多くの機関がこれに参加した。75年以降は国際水文学計画(IHP)として今も引き続いている。
執筆者:中島 暢太郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報