翻訳|hydraulics
主として水を中心として,流体(液体)の流動現象を対象とする科学。その流動現象を解析する原理としては,もっぱら力学の法則を用いる。したがって,水理学は水に関する力学を基礎的概念とし,水に関する実際の現象,とくに土木工事などに関連する現象を解明するとともに,実用的な課題を解き,実際の工事設計に役だつことを目的として発展してきた学問である。水力学も水理学とほぼ同様な学問的基盤に立脚しているが,応用面としては主として機械およびその関連の工学的解明および設計に役だつことを目的としている。
水がわれわれの生活と密接な関係があるのは,人類出現以来のことであり,したがって水理学の研究は古来からあったといえる。とくに古くはアルキメデスが静水力学と浮力の解析を行ったことはよく知られており,水理学を実質的に誕生させたともいえよう。しかし,水理学が飛躍的に発展したのは,ガリレオやニュートンによる力学の誕生以後のことである。とくにD.ベルヌーイは,数学的才能にも恵まれるとともに,物理的理解にも優れ,流体の静力学と動力学を扱い,現在の水理学の基礎を確立したといえる。L.オイラー,A.C.クレロー,J.ダランベールもまたそれぞれ水に関する力学の基礎を作り,これら18世紀の学者たちによって水理学は力学に基礎をおく学問的体系を確立したということができる。19世紀半ば以降には,実際の河川や水路における水理学的研究や実験的研究も急速に進み,欧米を中心にその応用は著しく拡大し,水工技術の発展に貢献することとなった。20世紀に入ると,実験的研究の進歩とともに理論的発展も著しく,実在流体の実験的研究と理想流体の数学的研究とが分離する傾向を生じ,学問としては流体力学が独立誕生するに至っている。
日本においては,明治に入って西欧の科学技術導入期に,そのころようやく急速な発展段階にあった水理学が水工技術とともに輸入され,その後の土木技術発展の基礎としての役割を果たした。現在では水理学は河川・港湾,発電水力,上下水道などの水工土木事業の基礎理論として,実際の水理現象,水工構造物の設計,水利計画などに,必須の学問としての役割を担っている。
執筆者:高橋 裕
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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水の流れを力学的に解析する学問。土木工学の一分野。水理学では実用的な解を得るために流れを単純化して扱うが、できるだけ厳密に流れを解析するためにコンピュータを使った数値解析も行われる。水理学が対象とするおもな流れは開水路の流れおよび管路の流れであるが、地下水の流れ、浸透流、密度流や流砂、移流・拡散・分散など水の流れに関連する現象も扱われる。
[鮏川 登]
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…流体や気体のように自由に変形する物質を固体と対比して流体というが,流体が流れるときの圧力変化や周囲の物体に及ぼす力を調べる学問は,水力学,流体力学,空気力学,レオロジーなど,さまざまな名まえで呼ばれる。このうち,空気力学aerodynamicsは高速の気体の流れを,レオロジーはコロイドや高分子のように複雑な構造をもつ液体の流れを主として取り扱い,独立した分野を形づくっている。 一方,水力学と流体力学は,流れの問題を幅広く取り上げ,その間に一線を画すことはむずかしい。…
※「水理学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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