日本大百科全書(ニッポニカ) 「水産教育」の意味・わかりやすい解説
水産教育
すいさんきょういく
農業や工業と並ぶ産業教育の一分野であり、主として高等学校の水産科の教育をいい、広義には、大学の水産学の教育や、企業や公共団体の行う水産講習などを含む。
日本の水産教育は、初め勧農行政の一環として、また農業教育の一部として推進された。明治20年代に府県立の水産試験場や水産講習所が設立され始めたが、大日本水産会が1889年(明治22)に設けた水産伝習所は、1897年に農商務省の直轄する国立の水産講習所(のちの東京水産大学。現、東京海洋大学)となった。
文部省(現、文部科学省)は、初め実業補習学校の一部として水産教育を助成したが、1901年(明治34)の水産学校規程で水産学校の独立を定め、それらが第二次世界大戦後に高等学校水産科となった。2017年(平成29)時点で水産関連学科を設置している高等学校は46校(うち24校が水産関連学科のみからなる)を数える。国立大学法人の東京海洋大学(2003年東京水産大学と東京商船大学が統合して成立)のほか、水産学部あるいは水産関連の研究科・講座をもつ大学・大学院があり、大学に準じた水産大学校がある。四面海に囲まれた日本では、本来水産業のもつ役割は大であり、遠洋漁業や養殖漁業の発達や水産資源をめぐる状況の変化に伴い、新しい技術開発のための水産および海洋教育の振興が期待されている。
[三好信浩]
『影山昇編著『水産教育と水産学研究』(1995・成山堂書店)』