江戸家猫八(読み)エドヤ ネコハチ

新撰 芸能人物事典 明治~平成 「江戸家猫八」の解説

江戸家 猫八(3代目)
エドヤ ネコハチ


職業
ものまね芸人 俳優

本名
岡田 六郎

生年月日
大正10年 10月1日

出生地
東京・巣鴨

学歴
江戸川平井高小〔昭和12年〕卒

経歴
ものまね芸では名人といわれた初代江戸家猫八の六男。幼いころから父親に伴われて旅興行などについて回った。昭和16年古川緑波一座へ入ったが、召集されて各地を転戦、広島で原爆に遭う(59年初めて被爆者手帳をもらう)。戦後復員し、25年3代目猫八を襲名。父親譲りのウグイスコオロギなどの動物の鳴きまね芸で寄席で活躍。その後、NHKテレビ「お笑い三人組」に三遊亭小金馬、一龍斎貞鳳とトリオで出演、親しみやすい芸風容貌で一躍人気者に。38年落語協会に入り、54年から落語芸術協会に所属。父の1代記や自らの被爆体験なども盛り込んだ“猫八ばなし”という新しいスタイルを開拓。落語以外の色物としては珍しくトリを務めた。54年と56年に独演会話芸で芸術祭大衆芸能部門優秀賞受賞。60年浅草芸能大賞、63年紫綬褒章受章。動物ものまねの第一人者として知られた。俳優としても映画お葬式」、テレビ「鬼平犯科帳」に出演するなど好脇役として評価が高かった。著書に「吾輩は猫ではない」「兵隊ぐらしとピカドン」「おかあちゃんは二人いらない」などがある。

所属団体
落語芸術協会

受賞
紫綬褒章〔昭和63年〕 芸術祭賞優秀賞〔昭和54年・56年〕,花王名人大賞(名人賞)〔昭和56年〕「従軍被爆体験記」,浅草芸能大賞(第2回)〔昭和60年〕

没年月日
平成13年 12月10日 (2001年)

家族
父=江戸家 猫八(初代),長男=江戸家 猫八(4代目),長女=江戸家 まねき猫(ものまね),娘=江戸家 家猫ハッピー

伝記
定本 寄席界隈艶噺定本 寄席界隈艶噺きょうも命日寄席紳士録女の学校おかあちゃんは二人いらない 三遊亭 円右 著,林 秀年 編三遊亭 円右 著,林 秀年 編長薗 安浩 著安藤 鶴夫 著佐藤 幸子 著江戸家 猫八 著(発行元 三樹書房三樹書房中央公論新社平凡社柴田書店筑摩書房 ’10’08’03’00’96’89発行)


江戸家 猫八(初代)
エドヤ ネコハチ


職業
ものまね芸人

本名
岡田 信吉

生年月日
慶応4年 4月3日

出身地
栃木県

経歴
もと歌舞伎俳優の片岡市蔵(3代目)の門下の女形役者で、市之介を名乗る。明治31年鉛毒で手が不自由になり、廃業。38年三遊亭小円朝一門から噺家として半馬の名で寄席に出るが、まもなく廃業。明治末頃ものまねに転向。3代目柳家小さんの門に入り、初代江戸家猫八として寄席に復帰した。動物や鳥のものまね、駄洒落問答、毒舌をまじえた客とのかけ合い等を得意とした。

没年月日
昭和7年 4月6日 (1932年)

家族
六男=江戸家 猫八(3代目),孫=江戸家 小猫,江戸家 まねき猫,江戸家 家猫ハッピー

出典 日外アソシエーツ「新撰 芸能人物事典 明治~平成」(2010年刊)新撰 芸能人物事典 明治~平成について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「江戸家猫八」の意味・わかりやすい解説

江戸家猫八
えどやねこはち

物真似(ものまね)専門の芸人。

初代(1868―1932)本名岡田信吉。当初、歌舞伎(かぶき)の三世片岡市蔵の門下に入り、片岡市之助と称して女形を務めたが、1898年(明治31)鉛中毒のため左手が不自由になったのを機に廃業した。その後、落語の三遊亭小円朝の弟子を経て物真似に転向、動物や鳥の鳴き声などの物真似で人気を集め、江戸家猫八を名のる。駄洒落(だじゃれ)や毒舌を交えた客との掛け合いを得意とした。

2代(1911―1986)本名長谷川栄太郎。13歳のとき初代に入門、子猫八の名で舞台にあがった。初代の死後2代目を襲名するが、のち漫談に転じ、徳川夢声に対抗する意味で、1935年(昭和10)木下華声(かせい)と改めた。従来の物真似に加えて、時の有名人の物真似も得意とした。

3代(1921―2001)本名岡田六郎。初代の六男。1941年(昭和16)、古川緑波(ろっぱ)一座に入座したが、1943年に応召、各地を転戦ののち、1945年に広島で被爆。1949年に3代目を襲名。物真似のほか俳優としてテレビや舞台などで活躍した。芸術祭賞(1979、1981)、浅草芸能大賞(1985)など受賞、紫綬褒章(しじゅほうしょう)(1988)受章。著書に『兵隊ぐらしとピカドン』(1983)などがある。なお、長男の江戸家小猫(1949―2016)、長女の江戸家まねき猫(1967― )がともに父の芸を継いでいる。

[向井爽也]

『『兵隊ぐらしとピカドン――吾輩は猫ではない2』(1983・ポプラ社)』『『二足のわらじをはいた猫――吾輩は猫ではない3』(1984・ポプラ社)』『『猫とまたたび』(1989・筑摩書房)』『『キノコ雲から這い出した猫』(1995・中央公論社)』『『おかあちゃんは二人いらない』(ちくま文庫)』『『魚に釣られた猫――猫八のおもしろ釣れづれ人生』(中公文庫)』『『吾輩は猫ではない』(ちくま文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

20世紀日本人名事典 「江戸家猫八」の解説

江戸家 猫八(3代目)
エドヤ ネコハチ

昭和・平成期のものまね芸人,俳優



生年
大正10(1921)年10月1日

没年
平成13(2001)年12月10日

出生地
東京・巣鴨

本名
岡田 六郎

学歴〔年〕
江戸川平井高小〔昭和12年〕卒

主な受賞名〔年〕
芸術祭賞優秀賞〔昭和54年・56年〕,花王名人大賞(名人賞)〔昭和56年〕「従軍被爆体験記」,浅草芸能大賞(第2回)〔昭和60年〕,紫綬褒章〔昭和63年〕

経歴
ものまね芸では名人といわれた初代江戸家猫八の六男。幼いころから父親に伴われて旅興行などについて回った。昭和16年古川緑波一座へ入ったが、召集されて各地を転戦、広島で原爆に遭う(59年初めて被爆者手帳をもらう)。戦後復員し、25年3代目猫八を襲名。父親譲りのウグイス、コオロギなどの動物の鳴きまね芸で寄席で活躍。その後、NHKテレビ「お笑い三人組」に三遊亭小金馬(のち金馬)、一龍斎貞鳳とトリオで出演、親しみやすい芸風と容貌で一躍人気者に。38年落語協会に入り、54年から落語芸術協会に所属。父の一代記や自らの被爆体験なども盛り込んだ“猫八ばなし”という新しいスタイルを開拓。落語以外の色物としては珍しくトリを務めた。54年と56年に独演会の話芸で芸術祭大衆芸能部門優秀賞受賞。60年浅草芸能大賞、63年紫綬褒章受賞。動物ものまねの第一人者として知られた。俳優としても映画「お葬式」、テレビ「鬼平犯科帳」に出演するなど好脇役として評価が高かった。著書に「吾輩は猫ではない」「兵隊ぐらしとピカドン」「おかあちゃんは二人いらない」などがある。


江戸家 猫八(1代目)
エドヤ ネコハチ

大正・昭和期のものまね芸人



生年
慶応4年4月3日(1868年)

没年
昭和7(1932)年4月6日

出身地
栃木県

本名
岡田 信吉

経歴
もと歌舞伎俳優の片岡市蔵(3代目)の門下の女方役者で、市之介を名乗る。明治31年鉛毒で手が不自由になり、廃業。38年三遊亭小円朝一門から噺家として半馬の名で寄席に出るが、まもなく廃業。明治末頃ものまねに転向。3代目柳家小さんの門に入り、初代江戸家猫八として寄席に復帰した。動物や鳥のものまね、駄洒落問答、毒舌をまじえた客とのかけ合い等を得意とした。

出典 日外アソシエーツ「20世紀日本人名事典」(2004年刊)20世紀日本人名事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「江戸家猫八」の解説

江戸家猫八(3代) えどや-ねこはち

1921-2001 昭和-平成時代の寄席芸人,俳優。
大正10年10月1日生まれ。初代江戸家猫八の6男。父について地方を巡業,昭和16年古川緑波(ろっぱ)一座にはいる。24年3代をつぎ,動物の物まねがうけた。NHKテレビ「お笑い三人組」で人気をあつめ,舞台,映画でも活躍。60年浅草芸能大賞。平成13年12月10日死去。80歳。東京出身。本名は岡田六郎。著作に「兵隊ぐらしとピカドン」など。

江戸家猫八(初代) えどや-ねこはち

1868-1932 大正-昭和時代前期の寄席芸人。
慶応4年4月3日生まれ。歌舞伎の3代片岡市蔵の弟子であったが廃業。落語家から動物や鳥などの鳴き声のものまねに転向。3代柳家小さんにみとめられ,弟子となる。客席との毒舌をまじえた掛け合いで人気をあつめた。昭和7年4月6日死去。65歳。栃木県出身。本名は岡田信吉。

江戸家猫八(2代) えどや-ねこはち

1911-1986 昭和時代の寄席芸人。
明治44年7月6日生まれ。2代三遊亭金馬,5代三升家小勝門下の落語家をへて初代猫八の弟子となり,小猫八から昭和4年2代を襲名。のち木下華声を名のった。漫談と声帯模写で知られた。昭和61年5月27日死去。74歳。東京出身。本名は長谷川栄太郎。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

367日誕生日大事典 「江戸家猫八」の解説

江戸家 猫八(3代目) (えどや ねこはち)

生年月日:1921年10月1日
昭和時代;平成時代の寄席芸人
2001年没

江戸家 猫八(2代目) (えどや ねこはち)

生年月日:1911年7月6日
昭和時代の寄席芸人
1986年没

出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の江戸家猫八の言及

【声帯模写】より

…以後ラジオの発展とともにこの名称で盛んに行われ,流行歌手を専門にまねる〈歌謡声帯模写〉などもあらわれた。現代では桜井長一郎,三遊亭円竜らが知られ,鳥獣の声帯模写では3代江戸家猫八(1921‐ )などが著名である。なお,似たような芸に〈ものまね〉がある。…

※「江戸家猫八」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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