声色(こわいろ)のこと。あるいはそれの〈現代化〉したもの。芸能人や政治家など有名人の声を模倣する演芸。鳥獣の声をまねるのもこの部類に入る。正徳(1711-16)のころにあやめ屋の平治が歌舞伎役者の声色で名人といわれた。幕末期に寄席演芸となり,《鸚鵡石》という声色本も出た。大正末に喜劇役者の古川緑波(ろつぱ)が声色を〈声帯模写〉と称し,まねる対象も歌舞伎役者以外にも大きくひろげて活気づけ,続けて,多くの巧者があらわれた。以後ラジオの発展とともにこの名称で盛んに行われ,流行歌手を専門にまねる〈歌謡声帯模写〉などもあらわれた。現代では桜井長一郎,三遊亭円竜らが知られ,鳥獣の声帯模写では3代江戸家猫八(1921-2001)などが著名である。なお,似たような芸に〈ものまね〉がある。
執筆者:関山 和夫
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他人の声を模倣する演芸で、声色(こわいろ)が現代的に変形したもの。初めてこのことばが使われたのは大正末期で、喜劇俳優古川緑波(ロッパ)の造語によるものとされている。のちラジオの発達と相まってこれを専門とする芸人も増え、全体を漫談調に仕立てたり、ある一定の筋をもたせてそのなかにいろいろな人物が登場してくるといった演出法も生まれた。従来の声色がもっぱら歌舞伎(かぶき)俳優の台詞(せりふ)回しを模倣していたのに対し、範囲は広く、ことに第二次世界大戦後は政治家、評論家といった分野の人々も扱うようになった。また歌手の声帯模写を専門とする歌謡声帯模写(歌まね)も流行した。
[向井爽也]
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…流しは,銅鑼(どら)と拍子木を持った二人連れが普通で,花柳界や夏の大川端の夜の景物であった。近代に入り〈声帯模写〉と呼ばれるようになって寄席芸として定着し,現代に伝わる。《婦系図(おんなけいず)》の〈湯島の境内〉に見られる声色の姿は,明治時代の流しを写している。…
…東京では昭和30年代以後林家正楽が紙切りとして一家をなしている。 声色(声帯模写)は,江戸時代から行われた大衆演芸の一つだが,昭和の現代に及んでも衰えていない。歌舞伎・新派・新国劇・新劇の俳優,浪曲師,歌手,政治家,テレビタレントの声から鳥獣の鳴き声までまねて人気がある。…
…技芸としての物真似は,肉体による表現に言語をも伴うものへと変化する。後には〈声色〉〈声帯模写〉へと移行していく。〈少将物真似師吉兵衛を呼び,五郎さま朝比奈のこわいろの上手ゆへ頼みました〉(《傾城嵐曾我》1708),〈近年はやり出て役者の物まね,身ぶりを其まゝにうつして〉(《役者正月詞》1726)などの用例がある。…
※「声帯模写」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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