油田の地下に存在する油層から坑井を通じて原油を地表に採り出すこと。一般に採油工学(採油技術)には,油層中の流体の流れを取り扱う油層工学技術,坑井の掘削や仕上げ法に関するさく(鑿)井技術,地表でガスを分離したり,水分や砂をはじめとする不純物を除去するなどの処理を行い,精油所などへ原油として出荷するまでの過程を扱う処理技術などが含まれる。しかし狭い意味での採油技術は,生産中の油田における坑井管理や地表施設の運転・保守などの生産操業に関する技術のみを意味する。
原油は一般に,油層岩の岩粒の間にできる狭いすきまに蓄積された状態になって存在し,高圧下で水やガスと共存するのが普通である。このようにして存在する原油はとくに好条件に恵まれないかぎり,全埋蔵量の30~40%程度以上を地上に回収することは一般に困難なので,巨費を投じて発見した原油を効率的に回収することは採油技術上の重大な課題となっている。そのために岩石中における原油,水,ガスの挙動について,とくに運動学的見地から研究が進められ,発展・体系化されたのが油層工学と呼ばれる技術である。地下に存在する原油の総量を原始埋蔵量と呼び,これに対して地上に回収できる原油量を可採埋蔵量という。この可採/原始埋蔵量の比が原油の回収率である。油層工学の目的を簡単にいえば,油層の特性に応じ,油層内での流体の挙動を分析することにより,原油の回収率の向上のための手段を見いだすことにある。採油効率は一般に,この回収率の意味のほかに油田の生産性を意味する場合もある。
回収率は油層の特性によって,大きく異なる。また同様の油層特性でも,油層内流体が本来もつ排油エネルギーをいかに有効に利用するかで大きな差が生ずる。さらに本来の排油エネルギーに加えて,人工的に水や天然ガスを圧入することにより,油層内排油エネルギーを増加させて回収率の向上を図る方法がある。これを一般に二次回収法という。最近では排油エネルギー増加の手段として,界面活性剤を加えた特殊流体を圧入したり,油層を加熱するなど種々のさらに手の込んだ方法が応用されている。これらの方法を総称して増進回収法と呼ぶ。
一般に地質特性,油層岩特性,流体特性の三つに大別される。地質特性とは,地質構造の形状や広がり,岩相の性質や分布状況,断層や不整合面の存在などの地質学的特徴を意味する。油層岩特性とは岩石の物理的性質を意味する。流体の油層内流動の観点から,岩石そのものあるいは岩石粒子のもつ性質よりは,むしろ岩石粒子間の狭いすきまである孔隙の物理的性質に力点が置かれている。油層岩特性を示す指標の代表的なものとして,孔隙率,浸透率,飽和率などがある。流体特性とは,原油,ガス,水の油層内流体が,圧力,温度の変化に応じて示す相互の溶解または分離挙動,体積変化,粘性変化などを意味する。流体特性を表す指標のいくつかを紹介する。初期状態の油層中では原油中にガスが溶解されており,生産が進むに伴い油層の圧力が低下し,ある圧力において,溶解ガスが分離しはじめる。すなわち,この圧力状態で飽和状態に達したことになる。この圧力値を飽和圧力と呼ぶ。油層圧力が飽和圧力より低い状態では,油層中にガス相が形成され,油層内での原油の流動現象に大きな影響を与える。単位容積当りの原油に溶解しているガス量を溶解ガス油比と呼ぶ。飽和圧力以下の油層圧では,圧力低下に伴い溶解ガス油比も小さくなる。原油の粘性は一般に,飽和圧力以下の油層圧力では圧力が高いほうが多くのガスを溶解しているので粘性は低く,飽和圧力以上の状態では溶解ガス量は変化しないので,圧力が高くなると粘性も高い値を示す。すなわち飽和圧力において原油は最も低い粘性を示す。
→油層
油層から生産井への原油の排油過程を自然のエネルギーの働きだけに頼る回収法を一次回収法という。この方法では大半の原油を取り残してしまう場合が多いため,人工的に水やガスを圧入して回収率を向上させる方法が応用されている。これを二次回収法という。水を圧入する水攻法は歴史も古く,1930年ころからアメリカを中心に,最も広く実施されている。これは,圧入する流体としては水が最も安価で豊富に得られるし,取扱いも容易であることによる。水攻法を実施するに当たっては,生産井のほかに水圧入用の坑井が必要である。地表設備としては,圧入水に溶存している酸素,バクテリア,浮遊物を取り除くなどの処理施設が必要である。このように水攻法の開始に当たっては余分な投資が必要であり,その実施により期待される回収増油量を十分検討のうえ,実行の可否を判断する必要がある。水攻法による原油回収率は水による原油の置換効率により左右される。この置換効率はミクロ的置換効率とマクロ的容積掃攻率に分けて考えるのが普通である。圧入水が孔隙中の狭い流路を通って原油と置換する過程で全量をピストン状に置換できるわけではなく,一部の原油が取り残される。ミクロ的置換効率は,掃攻孔隙中でのこのような取残し原油量の割合を表す指標である。一般に粘性が高く,流れにくい原油ほど取残しが多く,置換効率は低い。圧入水は水圧入井から生産井の方向へ孔隙中の流路を通って,原油と置換しながら流れるが,両坑井の間には流れやすい流路もあれば,流れにくい流路もある。このため,すべての孔隙を水で掃攻するのは困難であり,水が通らない孔隙部分の原油は置換されないで取り残される。マクロ的容積掃攻率は油層の孔隙量と水で掃攻された孔隙量の比率で表され,油層岩特性が不均質であれば低い掃攻率を示す。また圧入井と生産井の相対位置を適正配置にすることにより,この掃攻率の改善に役立つ。水攻法の回収効率は,上述の置換効率と容積掃攻率を乗じて求められる。
水の代りに天然ガスを圧入するガス圧入法は,原油との置換に対する基本的考え方においては水攻法と同様である。しかしガスの粘性は水の粘性に比べ極端に小さく,油層中をガスが先行して流れ,多くの原油を取り残してしまう場合が多い。そのため特殊な場合を除き,ガス圧入法では水攻法に比べ,低い回収効率しか得られない傾向がある。このためガス圧入法は水攻法ほど広範囲には採用されていないが,立地条件が悪く水源が得られない油田とか,ガスの販売先が当面得られないために原油に伴って生産される随伴ガスを保存の目的を兼ねて再圧入する場合などに多く採用されている。
略してEORともいわれる。水攻法やガス圧入法は歴史も古く,技術的にも確立された方法といえる。最近では,さらに複雑な方法で,より多くの原油を回収する試みがなされている。それらを総称して増進回収法というが,そのうちおもなものは熱回収法,ガス・ミシブル攻法,ケミカル攻法に大別される。熱回収法は熱エネルギーを油層に与え,油層中の原油の粘性を低下させて回収率の向上を図る方法で,もともと粘性の高い重質油の回収に効果的である。熱エネルギーを油層に与える方法は二つに大別される。第1の方法は地上で発生させた熱エネルギーを圧入井を通して油層内に与える方法で,圧入流体には水蒸気または熱水が用いられる。第2の方法は油層中の原油の一部を油層内で燃焼させることにより熱エネルギーを発生させる方法で,火攻法と呼ばれる。この場合,燃焼のため圧入井を通して空気を連続的に油層中へ圧入する必要がある。ガス・ミシブル攻法は油層中へガスを圧入し,原油と置換する点は通常のガス圧入法と同様である。通常のガス圧入法では置換される原油と置換するガスが液相と気相の2相状態であるが,比較的軽質の原油を埋蔵する油層中に比重の大きいガスを圧入すると,高圧力下ではガスと原油の接触面では両者が1相状態(ミシブル状態)になる。このような状態で置換が進めば,圧入ガスが原油を取り残して生産井のほうへ先行する現象がなくなり,置換効率が向上する。この方法に利用される圧入ガスは,プロパンやブタン分を多く含んだ炭化水素ガスであるが,最近では炭酸ガスの利用も多くなっている。ケミカル攻法は,水攻法の圧入水に界面活性剤などの化学薬品や軽油を添加し,原油と圧入水との間の界面張力を低くしたり,ポリマーと呼ばれる高分子化合物を添加して原油と圧入水の粘性のちがいを小さくすることにより置換効率を向上させる方法である。これらの方法のほかに,特殊なバクテリアを油層内で繁殖させ,その際に発生する熱,ガスあるいは油の粘性低下などの効果による方法,油層内で核物質を爆発させ油層を大きな空洞にしてしまう方法など,種々の方法が提案されているが,まだ実験段階以前のものが多い。
油田の生産性向上には,坑井の生産能力と地表設備の操業効率の両面を考慮する必要がある。
坑井の生産性を高く維持できれば,少ない坑井数で目標生産レートを達成できるわけである。油田の開発においては一般に坑井掘削に多額の費用を要する点からも,その経済効果は大きい。この生産能力向上法には坑井刺激法と人工採油法の2種の方法がある。坑井刺激法は,坑井周辺の油層岩特性を改質して,油層から坑井への原油の流入量を増加させることを目的としている。現在多く用いられている方法には酸処理法と水圧破砕法がある。前者は,油層部に塩酸またはフッ化水素酸などの酸性物質を坑井仕上げ時に圧入して,坑井周辺の油層の岩石粒子を溶解し,原油の流路を広げる方法である。後者は,坑井仕上げ時に高圧流体を圧入し,坑井周辺の油層岩を破砕して割れ目をつくり,同時に送り込んだ支持材によって割れ目のふさがるのを防止し,原油の流路を広げる方法である。人工採油法とは,油層の圧力が低下すると,原油を坑底から地表へ押し上げるのが困難になり,生産量が低下したり停止したりするので,この場合,人工的に坑底の原油をくみ上げることにより,生産量を増加させる方法をいう。人工採油法はガスリフト採油とポンプ採油に大別される。前者は,圧縮ガスを坑底に送り込み,坑底にたまった原油と混合した状態で坑井内を上昇させ,この間のガスの膨張エネルギーにより原油をくみ上げる方法である。後者のポンプ採油は,坑底に降下したポンプを運転して原油をくみ上げる方法である。この方法には,地表の上下動をサッカーロッドと呼ばれる細い鉄棒で坑底のポンプの上下動に伝達するサッカーロッドポンプ,坑底に多段式タービンポンプを降下し,電力により駆動するサブマーシブルポンプ,プランジャー型ポンプを降下し,地表から油圧パイプにより伝達される油圧で駆動するハイドロリックポンプの3種の型式がある。
地表設備の役割には,多数の坑井から原油を処理基地に集める集油機能,原油を天然ガスと分離し,さらに水その他の不純物を除去する処理機能,貯蔵機能およびパイプラインやタンカー輸送のための出荷機能がある。これらを果たすのに必要な諸設備に加え,宿舎,事務所,倉庫,鉄工所,発電所,飛行場,港湾,通信設備などの付帯設備が周辺環境に応じ必要となる。さらに二次回収や増進回収法のための各種設備が追加的に必要になる。これらの設備を安全かつ効率的に運転するには,建設段階において油田の能力を適切に把握するとともに,将来の生産挙動の変化にも対応できる柔軟性のある設備の設計が重要である。さらに生産段階においては設備の運転・保守に必要なデータに加え,油層の管理に必要な地下のデータも十分収集し,適正な生産管理を実施する必要がある。
→石油 →油田
執筆者:和田 恭彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
油層から原油を採取することをいう。
[田中正三]
油が油層内を流れる機構を排油機構または油の駆動機構という。油層内には原油のほかに天然ガスと塩水が存在する。天然ガスは油層上部に遊離ガスとして、また原油中に溶解ガスとして存在する。遊離ガスの存在する油層部分をガスキャップという。塩水は油層周囲に存在する。この塩水を端水(はすい)という。これら天然ガスと端水が油層から石油井へ向かって油を押し流していくエネルギー源である。油層開発が始まり油層圧力が低下すると、原油中の溶解ガスは分離膨張し、ガスキャップ中の遊離ガスは膨張し油を石油井へ駆動していく。前者が主要な作用をするときは溶解ガス押し型排油、後者の働きが著しいときはガスキャップガス押し型排油という。端水も油層圧力低下とともに油層へ浸入してきて、油を伴って石油井へ流れる。これを水押し型排油という。油田の産油量の変化はこれら排油機構により左右される。水押し排油を受ける油田の産油量は減退が小さく、長期にわたり一定のレートで産油する。中東の油田には水押し型油田が多い。溶解ガス押し型排油はもっとも減退が早い。
[田中正三]
以上のどの排油機構であっても、油層圧力が大きければ、原油は油層が本来もつエネルギーにより石油井へ流れていくが、油層圧力の低下とともに産油量は減少し、ついには経済的に油田が維持できなくなる。この段階でも油層には多量の油が残留している。採収率は排油機構により異なり、溶解ガス押し型は5~30%、ガスキャップガス押し型は20~40%、水押し型は35~70%と推定されている。この残留している油を採収しようというのが二次採収である。その前の油層本来のエネルギーで油を採収する段階を一次採収という。
二次採収でもっとも広く採用されている方法が水攻法である。水攻法は、地表より油層へ水圧入井を通して水を圧入し、油層圧力を維持し、水の作用で油を石油井へ押し流していく方法である。水攻法はアメリカで1950年代から広く採用されるようになり、世界中に広まっていった。初めのうちは油層圧力が枯渇した油田で採用されていたが、最近では油層圧力が高くとも、油層圧力の減退を防ぐため積極的に油田開発の初期の段階で水圧入が実施されるようになった。旧ソ連地域、中東、北海などの大油田でも水攻法が実施されており、油田開発計画のなかには当初から水攻法の計画が織り込まれている。かかる状況下では一次採収と二次採収の区別は意味がないが、二次採収という用語は依然として用いられている。二次採収として水攻法のほかにガス圧入法がある。この方法は油層から産出した天然ガスをふたたび油層頂部に圧入し、油層圧力の減退を防ぎ採収率を増加させる方法である。天然ガス資源の浪費を防ぎ、油層エネルギー補給のため、油田の華やかな景観であるガスの放散燃焼を禁止し、ガス圧入を義務として実施する趨勢(すうせい)にある。
二次採収を実施してもまだ多量の油が残留する。油層中の油を水で押す実験をすると、水の置換により孔隙(こうげき)中に残る油は、当初の20~30%に下がるが、実際の油層ではこのように効率よく採収されるとは考えられない。そこで二次採収後残留した油の採収が考えられるようになった。これを三次採収あるいは採収率増加法という。
[田中正三]
石油価格の上昇により、石油の採収費が高くなっても経済的に採算がとれるようになったことと、石油資源の増加を図る方法として、三次採収の油田への適用と実験室の研究は盛んに行われるようになった。三次採収法として熱採収法、化学攻法およびガスミシブル法がある。熱採収法には水蒸気圧入と、油層に空気を圧入し、油を燃焼させそのエネルギーを利用する火攻法がある。水蒸気圧入は、カリフォルニアの重質油層などに広く適用され、油層を加熱し油の粘度を下げ、水蒸気で油を石油井へ押し流していく。化学攻法は、界面活性剤の溶液やアルカリ溶液を油層へ圧入し増油を図る方法である。ガスミシブル法は、炭化水素系のガスや炭酸ガスを油層へ圧入し、油とガスの間に油やガスの両方ともによく溶解しあう中間相をつくり採収率をあげることを目的としている。
[田中正三]
一次採収から三次採収まで、油層中の油は天然ガスや水の作用により石油井へ流入し、石油井を通って地表へ産出する。油層まで掘削された孔にケーシングとよばれるパイプが挿入され、その周囲はセメントで固められる。石油井の油層部分は、ガンパーホレータとよばれる穿孔(せんこう)装置で火薬や弾丸で孔をあけ、石油井と油層とを連結する。石油井にはチュービングとよぶパイプを挿入し、油はチュービングを通って地表へ流出する。石油井の坑口装置を別名クリスマスツリーという。坑口にはビーンとよぶ流量調節用の器具を取り付ける。ビーンは金属棒に小口径の孔をあけたものか、流量調節用の特殊なバルブで、石油井の産油量を制限している。石油井から流出した油とガスはセパレーターで分離される。産出したガス量を油量で割った値をガス油比という。原油はタンクに蓄えられ、天然ガスはパイプラインで消費地へ送られる。
[田中正三]
油層中の油はガスや水により押し流されて石油井へ流入するが、ガスや水は油より粘性が低く流れやすいため、坑口装置の流出口を広く開き石油井の圧力を低くすると、ガスや水は油を押さずバイパスして油層を流れてしまうので油層の採収率は悪くなる。このため坑口にビーンを取り付け、ガス油比を低くし、産油量を制限して採油が行われている。油田で原油の増産をしようとして、坑口のバルブを広く開くと、油の産出が早期に止まってしまう事態がおこる。
[田中正三]
油田開発の当初、油層圧力が高いと石油井は自噴する。油層圧力が低下するにつれ、油の流出は間欠的となり、ついには停止する。この段階でガスリフト採油や、ポンプ採油が行われる。ガスリフト採油は石油井へ圧縮ガスを圧入し、ガスの膨張する力で油を流出させる。ポンプ採油は、チュービングの下端に採油ポンプを取り付け、ポンプのプランジャーを地表より降ろしたサッカーロッドとよぶ細長い鉄棒で上下させて採油する。
[田中正三]
石油井の産油量を増加させるには、坑井周囲の油層岩石の浸透性を大きくする必要がある。増油のための坑井処理を坑井刺激法といい、酸処理と水圧破砕法がおもな方法である。酸処理は、石灰岩でできている油層を塩酸を主成分とする酸溶液で処理する方法で、石灰岩の油層が多い中東をはじめ各地で広く用いられている。水圧破砕は坑井に液体を満たして圧力を加え、地層に垂直または水平の亀裂(きれつ)をつくり、そこに砂利を充填(じゅうてん)する作業である。直接的な増油法ではないが、坑井のケーシングの外側に砂利を充填し、油層から坑井への砂の流入を防ぎ、石油井の採油中の事故防止をする砂利充填法も広く用いられている方法である。
[田中正三]
石油井はそれぞれ特定の産出能力をもっている。中東の大油田では1本の石油井から1日に1000キロリットル以上の原油を産出しているが、油田開発当初でも産油量が1日1キロリットル以下という石油井もある。かかる石油井の産出能力を表す指数が産出指数である。産出指数は、産油量を油層の圧力と石油井の圧力の差で割った値である。石油井の産出指数に差があるため、1日当り約100万バレルの産油量を得るのに、メキシコでは60本の石油井で足りるが、旧ソ連地域では6000本、アメリカでは5万6000本必要であるともいわれている。
[田中正三]
石油井の産出能力のテストのためには、坑井にケーシングを挿入し仕上げしてから試油を行い、ある一定期間採油して、安定してとれる産油量を決定する。この方法では、産油量が少ないとき、ケーシング挿入などによる損失を受けるので、掘管(ほりかん)の下端にフォーメーションテスターとよぶ器具を取り付け、裸坑に降ろし、産油量を試験する方法が多く用いられている。このテストを掘管テストあるいはDSTという。DSTで地表へ流出した油は特殊なバーナーで燃やし、その炎は石油井の成功を印象づける。
[田中正三]
海底油田が発見されると、プラットホームの上に採油設備が設置され、産出した原油と天然ガスは海底パイプラインで陸上へ送られる。油田規模が小さいと、かかる大規模な方法は経済的に実施できない。そこで、浮遊式の生産施設を用いてプラットホームの建設を省略したり、坑井を海底仕上げするなどの方法でコストの減少を図る。今後マージナル油田とよばれる採算限界油田の開発が急務になっているので、小規模海底油田の採油装置の研究は盛んになると思われる。
[田中正三]
油層に坑道を掘り油を含んでいる岩石を地表で乾留したり、坑道にしみ出した油をくみ上げる坑道掘採油法の研究が行われている。わが国では1939年(昭和14)新潟県東山油田で油層内に9852メートルの坑道が掘られた実績がある。しかし坑道掘採油法の実施は将来の問題である。
[田中正三]
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