泉大津(市)(読み)いずみおおつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「泉大津(市)」の意味・わかりやすい解説

泉大津(市)
いずみおおつ

大阪府南西部にある市。大阪湾に臨む。1942年(昭和17)市制施行。市名は和泉(いずみ)国の国府(現、和泉市府中)の外港で、『土佐日記』の「小津の泊(おづのとまり)」の小津が転化したもの。市域は和泉海岸平野の北部、大津川の河口右岸に広がる。南海電気鉄道南海本線と国道26号が並行して南北に走り、大阪、和歌山両市に通じ、海岸線に沿って阪神高速道路湾岸線が走る。また堺泉北港(さかいせんぼくこう)は国際拠点港湾に指定され、フェリーが新門司(しんもじ)と結ぶ。この地の開発は古く、奈良時代すでに条里制の施行をみている。さらに、国府の外港として重きをなした。近世には、紀州街道の宿駅として栄え、また近郊農村のワタを原料とした縞木綿(しまもめん)、真田紐(さなだひも)の産地としても知られた。明治以降、ワタにかわって、牛毛利用の牛毛工業がおこり、ついで日清戦争ごろから綿毛布、さらに毛布工業に転換してきた。農業は衰退したが、市の産業の主体は毛布工業で、全国生産の約90%を占め、繊維博物館の市立織編(おりあむ)館もある。中小規模の町工場が多く、好不況に影響される悩みがある。そのほか堺・泉北臨海工業地帯の一部として、近年機械、パルプ、紙、ゴム工業などがある。和泉五社の一つ泉穴師神社(いずみあなしじんじゃ)は天武(てんむ)天皇ころの創建とされ、神像や江戸初期建立の本殿は国の重要文化財。紀州街道沿いに田中本陣が残る。面積14.33平方キロメートル、人口7万4412(2020)。

[位野木壽一]

『『泉大津市史』全6冊(1983~2004・泉大津市)』


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