泉熱(読み)いずみねつ(英語表記)Izumi fever

  • (子どもの病気)
  • いずみねつ いづみ‥
  • いずみねつ〔いづみ〕
  • 泉熱 Izumi Fever

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

猩紅熱 (しょうこうねつ) に似た全身性の発疹発熱を伴う急性感染症異型猩紅熱といわれたこともあるが,まったく別の独立疾患と考えられる。 1927年金沢地方に流行し,金沢医科大学教授の泉仙助が初めて報告した (1929) ので,その名がつけられた。病原体ウイルスとみられ,これを保有するネズミ糞尿で汚染された食品や水をとると感染する。

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家庭医学館の解説

[どんな病気か]
 飲食物を通じて感染する病気で、エルシニア菌の感染が原因です。
●かかりやすい年齢
 学童から思春期にかけての年代の人が、かかりやすい傾向があります。
●多発する季節
 春と秋に多発する傾向があります。集団発生することが多いのですが、散発することもあります。
[症状]
 潜伏期は4~10日です。急に38~40℃の熱が出て、寒け、頭痛、食欲不振がおこります。2日目ごろから、部位によって濃淡のある赤い発疹(ほっしん)が全身に現われますが、肘(ひじ)、手首、膝(ひざ)、足首などに密集して出る傾向があります。
 発疹はかゆく、舌がいちご舌になることもあります。
 5~6日して発疹が消えると、熱も37℃くらいまで下がります。これで治ることもありますが、その翌日あたりから熱が38~39℃に上がり、10日~2週間続くことが多いものです。この時期には、じんま疹(しん)のような発疹や結節性紅斑(けっせつせいこうはん)という発疹が、腕や下肢(かし)に現われることがあります。また、右下腹痛や1日数回の軽い下痢(げり)が多いのも、この病気の特徴です。
 2度目の解熱の後、さらに3度目の発熱が数日続くこともあります。
 余病をおこしたり、生命にかかわったりすることはありません。
[治療]
 テトラサイクリン系の抗生物質が効きます。
●家庭看護のポイント
 高熱が続きますが、苦しい思いはしません。高熱の間は床に寝かせ、気持ちのいい程度に頭を冷やします。腹痛が強ければ、右下腹部を冷湿布(れいしっぷ)します。
 寝起きは病人の気分にまかせていいのですが、熱が長引く病気ですので、医師の指示を守ってください。
[予防]
 この病原菌をもっているネズミの糞(ふん)や尿で汚染された井戸水や食物をたべたり、飲んだりして感染しますから、ネズミの駆除と飲食物の保管に注意します。

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世界大百科事典 第2版の解説

猩紅熱(しようこうねつ)に似た病気で,異型猩紅熱ともいわれる。1927年に流行したものを泉仙助(1888‐1979)が独立疾患として報告した(1929)ので,そのをとって泉熱と呼ばれるようになった。以来,50年代まで日本の各地でその流行がみられたが,近年はまれであり,外国にはこれに該当するものはないようである。 ウイルスによる感染症と考えられ,種々の疑わしいウイルスが分離されているが,どれが真の病因であるかは確認されていない。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

発熱、全身性の発疹(ほっしん)、消化器症状を主症状とする感染症で、病原体は一種のウイルスとされるが、決定されていない。5~9歳の学童期にもっとも多く、90%は19歳以下にみられる。1959年(昭和34)ごろから集団発生がみられたが、65年ごろから患者の発生はまれになった。1929年に独立疾患として初めて記載した泉仙助の姓をとって泉熱とよばれる。しょうこう熱に似たところから異型しょうこう熱といわれたこともあるが、まったく別の病気である。病原体を保有するネズミの糞尿(ふんにょう)に汚染された水や生の食物を食べて伝染し、潜伏期は4~10日。急に40℃前後の発熱があり、翌日ごろから全身にかゆい発疹が現れ、いずれも5日間ぐらい続く。頭痛、嘔吐(おうと)、食欲不振などもみられる。熱はいったん下がるが一両日後にふたたび上昇し、1~2週間続いてから下熱してくる二峰型の熱型をとることが多い。高熱期に右下腹部(回盲部)に痛みや圧痛を訴えることが多く、また二次疹や結節紅斑(こうはん)をみることがあるのも特徴である。経過が長くても合併症は少なく、予後は良好である。有熱時に安静にしている程度でよく、重症の場合にはテトラサイクリンやクロラムフェニコールなどの抗生物質を使うが、ペニシリンはまったく無効である。

[柳下徳雄]

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精選版 日本国語大辞典の解説

〘名〙 (報告者金沢医大泉仙助氏の姓による命名) しょうこう熱によく似た伝染病。病原体は一種のウイルスで、発疹と発熱を主症状とする。学童から思春期までの人がかかることが多く、飲食物を通して伝染する。昭和二年(一九二七)、金沢地方で流行した。

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 発熱、腹痛、発疹、下痢などを伴う病気で、山の湧き水、井戸水などの生水を介して感染します。川崎病と診断されたり、腎不全を合併することがあります。

原因は何か

 偽結核性(ぎけっかくせい)エルシニア菌による感染症です。

症状の現れ方

 突然の発熱、発疹、腹痛、嘔吐、下痢が現れます。発熱は2峰性(ほうせい)(短期間に2回発熱する)のことが多く、7~10日間続きます。イチゴ(ぜつ)口唇発赤(こうしんほっせき)、眼球充血、回復期には手指の皮が膜状にはがれるなど川崎病と区別できない例があります。冠動脈瘤も合併しますが、腹痛、下痢の強いことが特徴です。また、腎不全を合併することもあります。

検査と診断

 通常の細菌感染症と同じで、白血球の増加、炎症反応上昇がみられます。診断は便の低温増菌培養、血液の抗体検査によって行います。

治療の方法

 抗菌薬が投与されますが、効果は不十分です。川崎病の診断基準を満たす患者さんにはアスピリン、大量γ(ガンマ)­グロブリンが投与されます。腎不全を合併した場合には人工透析(とうせき)をしますが、腎機能障害を残すことはないようです。

病気に気づいたらどうする

 山の湧き水や井戸水を飲用したあとに発熱、腹痛、下痢などが現れた場合、とくに秋と春には本症を疑う必要があります。かかりつけの小児科医を受診し、川崎病や本症の疑いがあれば、小児循環器、腎の専門医のいる総合病院を紹介してもらいます。

脇口 宏

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