泉熱(読み)イズミネツ(その他表記)Izumi Fever

精選版 日本国語大辞典 「泉熱」の意味・読み・例文・類語

いずみ‐ねついづみ‥【泉熱】

  1. 〘 名詞 〙 ( 報告者金沢医大泉仙助氏の姓による命名 ) しょうこう熱によく似た伝染病病原体は一種のウイルスで、発疹と発熱を主症状とする。学童から思春期までの人がかかることが多く、飲食物を通して伝染する。昭和二年(一九二七)、金沢地方で流行した。

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家庭医学館 「泉熱」の解説

いずみねつ【泉熱 Izumi Fever】

[どんな病気か]
 飲食物を通じて感染する病気で、エルシニア菌の感染が原因です。
●かかりやすい年齢
 学童から思春期にかけての年代の人が、かかりやすい傾向があります。
●多発する季節
 春と秋に多発する傾向があります。集団発生することが多いのですが、散発することもあります。
[症状]
 潜伏期は4~10日です。急に38~40℃の熱が出て、寒け、頭痛、食欲不振がおこります。2日目ごろから、部位によって濃淡のある赤い発疹(ほっしん)が全身に現われますが、肘(ひじ)、手首、膝(ひざ)、足首などに密集して出る傾向があります。
 発疹はかゆく、舌がいちご舌になることもあります。
 5~6日して発疹が消えると、熱も37℃くらいまで下がります。これで治ることもありますが、その翌日あたりから熱が38~39℃に上がり、10日~2週間続くことが多いものです。この時期には、じんま疹(しん)のような発疹や結節性紅斑(けっせつせいこうはん)という発疹が、腕や下肢(かし)に現われることがあります。また、右下腹痛や1日数回の軽い下痢(げり)が多いのも、この病気の特徴です。
 2度目の解熱の後、さらに3度目の発熱が数日続くこともあります。
 余病をおこしたり、生命にかかわったりすることはありません。
[治療]
 テトラサイクリン系の抗生物質が効きます。
●家庭看護のポイント
 高熱が続きますが、苦しい思いはしません。高熱の間は床に寝かせ、気持ちのいい程度に頭を冷やします。腹痛が強ければ、右下腹部を冷湿布(れいしっぷ)します。
 寝起きは病人の気分にまかせていいのですが、熱が長引く病気ですので、医師の指示を守ってください。
[予防]
 この病原菌をもっているネズミの糞(ふん)や尿で汚染された井戸水や食物をたべたり、飲んだりして感染しますから、ネズミの駆除と飲食物の保管に注意します。

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改訂新版 世界大百科事典 「泉熱」の意味・わかりやすい解説

泉熱 (いずみねつ)
Izumi fever

猩紅熱(しようこうねつ)に似た病気で,異型猩紅熱ともいわれる。1927年に流行したものを泉仙助(1888-1979)が独立疾患として報告した(1929)ので,その姓をとって泉熱と呼ばれるようになった。以来,50年代まで日本の各地でその流行がみられたが,近年はまれであり,外国にはこれに該当するものはないようである。

 エルニシア菌による感染症で,感染経路としては,水・食物を介する経消化管感染が多く,ネズミの関与も考えられている。学童期以後の未成年者に,主として集団的に発症し,高熱(突然38~39℃の発熱)と発疹(1次疹。猩紅熱様,第1~2病日に出現)とをおもな特徴とする。典型的な場合には二峰性の熱型を示し,第5病日(発病5日目)ころに一時37℃前後に下がり,そのころに発疹も消えるが,1~2日のうちに再び体温が上昇して38~39℃となり,その際はしか(麻疹)様の発疹(2次疹)をみる。1~3週間のうちにしだいに解熱するが,発病後2~3週のころに結節性紅斑が下腿に出ることがある。第2次の発熱のころに腹痛・下痢(1日2~4回)を伴うことも多い。発疹の消えたあと皮膚の落屑(らくせつ)がみられる。そのほか,猩紅熱と異なり,苺舌(いちごした),咽頭炎,合併症(腎炎など)が軽く,予後はよい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「泉熱」の意味・わかりやすい解説

泉熱
いずみねつ

発熱、全身性の発疹(ほっしん)、消化器症状を主症状とする感染症で、病原体は一種のウイルスとされるが、決定されていない。5~9歳の学童期にもっとも多く、90%は19歳以下にみられる。1959年(昭和34)ごろから集団発生がみられたが、65年ごろから患者の発生はまれになった。1929年に独立疾患として初めて記載した泉仙助の姓をとって泉熱とよばれる。しょうこう熱に似たところから異型しょうこう熱といわれたこともあるが、まったく別の病気である。病原体を保有するネズミの糞尿(ふんにょう)に汚染された水や生の食物を食べて伝染し、潜伏期は4~10日。急に40℃前後の発熱があり、翌日ごろから全身にかゆい発疹が現れ、いずれも5日間ぐらい続く。頭痛、嘔吐(おうと)、食欲不振などもみられる。熱はいったん下がるが一両日後にふたたび上昇し、1~2週間続いてから下熱してくる二峰型の熱型をとることが多い。高熱期に右下腹部(回盲部)に痛みや圧痛を訴えることが多く、また二次疹や結節紅斑(こうはん)をみることがあるのも特徴である。経過が長くても合併症は少なく、予後は良好である。有熱時に安静にしている程度でよく、重症の場合にはテトラサイクリンやクロラムフェニコールなどの抗生物質を使うが、ペニシリンはまったく無効である。

[柳下徳雄]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「泉熱」の意味・わかりやすい解説

泉熱
いずみねつ
Izumi fever

猩紅熱 (しょうこうねつ) に似た全身性の発疹と発熱を伴う急性感染症。異型猩紅熱といわれたこともあるが,まったく別の独立疾患と考えられる。 1927年金沢地方に流行し,金沢医科大学教授の泉仙助が初めて報告した (1929) ので,その名がつけられた。病原体はウイルスとみられ,これを保有するネズミの糞尿で汚染された食品や水をとると感染する。

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栄養・生化学辞典 「泉熱」の解説

泉熱

 発熱,発疹,消化器疾患を起こす急性伝染病の一つで,発見者の名前から命名された.

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