( 1 )「医語類聚」(一八七二)に「Scarlatina, 猩紅熟」とあるが、「熟」は「熱」の誤りであろう。
( 2 )病名のいわれは、発疹の現われた皮膚の赤さが中国の想像上の動物、猩猩の顔に似ているとされたところから。
A群β溶連菌の感染による感染症。かつては法定伝染病に指定されていたが,1999年の感染症新法で,隔離などの法的規則はなくなった。この溶連菌の感染で発病するものにはほかに咽頭炎,扁桃炎,丹毒,急性糸球体腎炎などがあり,さらに反復感染の後にリウマチ熱を起こすこともある。この菌で猩紅熱になることはむしろ少なく,また近年,本症は軽症化が目だち,不完全型が多くなって,猩紅熱と診断されずに溶連菌感染症といわれている場合もある。
猩紅熱は5~7歳の小児に多い病気で,38~39℃の発熱,咽頭痛,頭痛,吐き気,嘔吐などの症状で始まり,ときには強い腹痛がある。扁桃は発赤腫張し,膿がついたり,重症の場合には潰瘍を生じ,ジフテリアと区別がつきにくいこともある。1~2日以内に発疹が現れる。頸,腋窩(えきか),鼠径(そけい)部に淡紅色の細かい発疹が毛孔と一致して現れ,しだいに全身に広がりながら融合して一面に赤くなる。顔も赤くなるが,口の周囲は発疹ができないのでかえって青白く見える。約1週間くらいで消えるが,第2~3病週から細かく皮がむけはじめる(落屑(らくせつ))。落屑は鼠径部,ひざ,ひじから始まって指の先端まで及ぶが,手掌や足の裏は膜様に大きくむける。近年では膜様にむけることは少なくなった。落屑は1~3週間にわたる。舌は発病初期は白い苔で覆われているが,4~5日すると白苔はとれ,舌乳頭が発赤腫大するので,赤い点がたくさんみられるようになる(苺(いちご)舌)。
合併症としては第1病週にはリンパ節炎,中耳炎,副鼻腔炎,第2~3病週には腎炎,関節炎があり,症状が消失した後1~5週くらいたってからリウマチ熱がみられることがある。異常経過の猩紅熱としては軽症型があり,これでは発疹や全身症状が非常に軽く,落屑や合併症が出現してから診断されることがある。また高熱が続き,意識混濁,うわごとなどの神経症状が出現する中毒性猩紅熱というものもあるが,近年はみられなくなった。
治療は安静を守らせ,抗生物質療法を行う。ペニシリンが最適であるが,ペニシリンアレルギーのあるときにはエリスロマイシンを使用する。口唇のただれには10%ホウ砂グリセリンを塗布する。
抗ストレプトリシンO antistreptolysin-Oの略で,ASOとも略す。ストレプトリシンOはA群溶連菌が産生する溶血毒素であるので,A群溶連菌の感染があったときにはストレプトリシンOに対する抗体,すなわちアスローの値が高くなる。この反応は俗にリウマチ反応といわれることがあるので,アスローが高いとリウマチと考えられがちであるが,菌の感染を受けたという反応であるから,この値が高いことだけで病気とはいえない。すでに述べた病気の場合にも上昇するし,健康学童で10~15%に高いという報告もある。高値が長く続いている場合は溶連菌が体のどこかにいるということなので,ペニシリンの服用を要することもある。この菌は広く分布しているものである。
執筆者:渡辺 言夫
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…猩紅熱(しようこうねつ)に似た病気で,異型猩紅熱ともいわれる。1927年に流行したものを泉仙助(1888‐1979)が独立疾患として報告した(1929)ので,その姓をとって泉熱と呼ばれるようになった。…
※「猩紅熱」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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