法テラス(読み)ほうてらす

日本大百科全書(ニッポニカ) 「法テラス」の意味・わかりやすい解説

法テラス
ほうてらす

日本司法支援センター愛称。日本司法支援センターは、2004年(平成16)制定総合法律支援法(平成16年法律第74号)により設置された機関(法務省所管の法人)であり、2006年4月に設立された。国民への法的支援を行う機関であることから、法で社会を「照らす」あるいは燦燦(さんさん)と陽(ひ)が差す「テラス」のイメージからこの愛称がつけられた。2001年に出された『司法制度改革審議会意見書』は、日本の社会がより自由で公正な社会となるために、それまでの過度の行政規制による社会から、司法の役割が重要となる社会へと転換されるべきことを提言し、その一環として総合法律支援法が制定された。この法律の目的は、これからの日本の社会では、法による紛争解決がいっそう重要になることから、紛争解決のための制度の利用をより容易にし、弁護士司法書士その他の法律専門職のサービスをより身近に受けられるための総合的な法的支援体制を整備することにあるとされ、そのための機関として日本司法支援センターが設けられ(総合法律支援法1条)、あまねく全国において、民事刑事を問わず、法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられることとされた(同法2条)。日本司法支援センターは独立行政法人とされ、全国にその地方事務所・支部・出張所が置かれている。

 法テラスによる法律支援の内容として、おもに以下のものがある。(1)法による紛争解決のための制度に関する情報および弁護士など法律専門職の業務に関する情報などの提供を行うこと(同法3条、30条1項1号)。その業務として、利用者からの問い合わせの内容に応じて、法制度に関する情報と相談機関・団体等(弁護士会、司法書士会、地方公共団体の相談窓口等)に関する情報を無料で提供することなどが行われている。(2)資力の乏しい者にも民事裁判等の手続の利用をより容易にする民事法律扶助を行うこと(同法4条、30条1項2号)。その業務として、経済的に余裕がない人が法的紛争にあったときに、無料で法律相談を行い(法律相談援助)、弁護士・司法書士の費用の立替えを行うこと(代理援助・書類作成援助)などがある。なお、2016年の総合法律支援法の改正により、認知機能が不十分な高齢者・障害者あるいは認知機能が不十分な者で近隣に居住する親族がいない者に対する民事法律扶助の拡充(同法30条1項2号・3号)、ストーカー被害者・DV(ドメスティック・バイオレンス:家庭内暴力)被害者等に対する援助制度の新設(同法30条1項5号)などがなされた。(3)弁護士等がその地域にいないことその他の事情により法律事務の依頼に困難がある地域において(いわゆる司法過疎地域)、適当な契約弁護士等に法律事務を行わせること(同法30条1項7号)。(4)迅速かつ確実に国選弁護人を指名し、また国選付添人、国選被害者参加弁護士を選定すること(同法5条、30条1項6号)。国選弁護人制度については、国選弁護人等契約弁護士のなかから国選弁護人等の候補を指名して裁判所等に通知し、この通知に基づき国選弁護人に選任された契約弁護士にその事務を取り扱わせることとされている。なお、2016年の刑事訴訟法改正により、被疑者の国選弁護対象事件が拡大され、勾留(こうりゅう)されたすべての被疑者の事件がその対象となった。国選被害者参加弁護士は被害者参加制度により導入されたもので、国選弁護人と同様に選定される。国選付添人制度は、少年事件につき、裁判所の職権により弁護士を少年の付添人として選任する制度である。国選弁護制度、国選被害者参加弁護士制度および国選付添人制度はそれぞれ刑事事件および少年事件に限られており、民事事件には適用されない。(5)犯罪被害者の刑事手続への関与、被害者が受けた損害または苦痛の回復などを図る制度を利用するための援助をすること(同法6条、30条1項9号)などである。

[田口守一 2018年4月18日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法テラス」の意味・わかりやすい解説

法テラス
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