法的な紛争解決のための情報やサービスが全国どこでも広く利用できるよう、総合的な支援の実施および体制の整備についての基本事項と、その中核となる日本司法支援センターの組織および運営について定めた法律。平成16年法律第74号。
日本では、司法の現実は「2割司法」と酷評されてきた。社会の紛争や法律問題のうち、司法の場で解決されるのは2割だけで、残りは、権利侵害を受け、もめ事に巻き込まれ、警察に捕まっても、政治家や闇(やみ)社会に頼るか、あきらめることが多く、法的なルールで公正に解決されることがなかったというのである。とにかく司法や法に関する情報が足りない、頼りになる法律家が少なく、近くにいない、過疎地では弁護士がいないか1人しかいない(いわゆるゼロワン地域)、訴訟にかかる費用の負担に耐えられないことなどもその大きな原因である。
1990年代末ごろから進められている司法改革では、利用者の立場にたって、法の支配を実現しようとしている。その一環として制定された総合法律支援法は、あまねく全国において、民事、刑事を問わず、裁判その他の法による紛争の解決のために必要な情報を提供し、弁護士その他の隣接法律専門職者(司法書士、弁理士、行政書士、社会保険労務士、土地家屋調査士、税理士、公認会計士、外国法事務弁護士)のサービスをより身近に受けられるようにするため、総合的な支援を行う基本法である。
その運営主体として、政府の出資により日本司法支援センターが2006年(平成18)に設立された。独立行政法人の一種である。「法で社会を明るく照らしたい」「日当たりのよいテラスのように皆様が安心できる場所にしたい」という願いを込めて、「法テラス」と称している。
その主たる事業としては、たとえば少額訴訟や成年後見制度などの情報提供、資力の乏しい者にも民事裁判等手続(裁判所における民事事件、家事事件または行政事件に関する手続をいう)の利用をより容易にする民事法律扶助事業(無料法律相談、裁判代理費用、書類作成費用の立替え)、国選弁護人の選任態勢の確保、被害者等の援助等に係る態勢(刑事手続への適切な関与、被害者等が受けた損害・苦痛の回復または軽減を図るための制度)の充実、国・地方公共団体・弁護士会および隣接法律専門職者団体・裁判外における法による紛争の解決を行う者・被害者等の援助を行う団体ならびに高齢者または障害者の援助を行う団体等多数の者の間における連携の確保および強化がある。
支援センターは弁護士にその業務を依頼する。弁護士は専門職であるので、独立してその職務を行う。ただ、弁護士会推薦で裁判所から任命されていた国選弁護人が、法務大臣の指揮監督下にあるこのセンターにより選任されるようになったことで、刑事事件で検察と戦う弁護士が選任されなくなる可能性がある。また、このセンターの運営に必要な弁護士を多数確保することができるかどうかも課題となる。
この法律は、2004年6月に一部施行、2006年秋に完全施行され、民事法律扶助事業について定めていた民事法律扶助法は廃止された。また、それまで法律扶助協会が実施していた民事法律扶助事業は支援センターに移管された。
[阿部泰隆]
『古口章著『司法制度改革概説5 総合法律支援法/法曹養成関連法』(2005・商事法務)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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