洗い張り(読み)アライハリ

デジタル大辞泉 「洗い張り」の意味・読み・例文・類語

あらい‐はり〔あらひ‐〕【洗い張り】

着物を解いて洗い、のりをつけて広げた布を、張り板に固着させたり、伸子しんしで張ったりして乾かす方法

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「洗い張り」の意味・わかりやすい解説

洗い張り
あらいはり

和服を解き洗いして仕上げる方法。着物などの形になっているものを全部解き離して、糸くず、ごみを除き、洗濯をする。そのあと布に応じて次の仕上げ方法をする。

(1)板張り仕上げ 木綿レーヨン、交織地(こうしょくじ)など、ぬれても縮まない布に適する。張り板(一度にするときは1反で4枚は必要)、刷毛(はけ)、ふのり、または合成糊料(こりょう)を用いる。張る布は裏を外にして棒に巻いておき、張り板は水平に腰の高さに置く。これにふのりを刷毛で引きながら、布裏が板につくように順次広げ、縦、横の布目を通しながら張る。板を立てかけて、自然乾燥させる。

(2)伸子(しんし)張り仕上げ 光沢や風合いがよく仕上がるので、縮緬(ちりめん)、お召(めし)、大島、紬(つむぎ)など高級な絹織物に向く。張り手棒2本または4本、伸子針(竹の細棒の両端に針のついたもの)約300本、刷毛、ふのりを用意する。解き離した布はあらかじめ、裁断前の反物の形になるように縫い合わせておく(端縫いという)。布の両端を張り手棒で挟んで引っ張り、伸子の針を布の両耳に打ち、布裏から糊(のり)を刷毛で引いて干す。乾燥後、端縫いのところだけ針を残して(飛(とび)伸子という)、耳に水をつけて針刺しのあとを消す。

(3)湯のし仕上げ 用具は湯のし釜(がま)、巻き棒2本。縮緬など強撚糸(きょうねんし)のものや、ぬれると幅が縮む絞りなどによい方法である。糊をつけないので、ふっくらとした仕上がりになる。布の両端をあわせて縫い、輪にしたところに2本の棒を通し、蒸気を当てながら引っ張って幅出しをして仕上げる。

(4)アイロン仕上げ 糊つけして乾かした布全体に霧吹きをして、布裏を内側にして棒に巻き、湿布で包み、しばらくねかしておく。裏からアイロンをかけて別の棒に巻き取る。

 洗い張りは、第二次世界大戦までは家庭ですることが多かったが、現在は染物屋、関西では悉皆屋(しっかいや)に依頼することが多い。

[岡野和子]


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