北海道中央南部にあり、北海道の脊梁南部を占める山脈。地帯構造からは蝦夷―サハリン系の隆起軸にあって、大雪火山山系から南で東北海道と中央北海道を分ける範囲であるが、通常、十勝地方と日高地方の境界を分ける山脈をいう。北の
山脈の形成要因は、以前は地向斜造山論に基づき、中生代ジュラ紀、白亜紀の地向斜海盆の厚い海底堆積物に地下深くから深成岩が貫入、地向斜堆積物を変質させながら西へ衝上して日高帯を形成した日高造山運動とされた。
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北海道中央部の山脈。北の狩勝(かりかち)峠(644m)から南端の襟裳(えりも)岬まで,南北約150kmにわたって連なり,北海道を東西に分け,十勝支庁と日高支庁の境界をなす。東西の幅は約50kmで,南にいくほど狭く,主稜線からの山脈の幅は西の日高側で広く,東の十勝側で狭い。東側は断層崖の急斜面で,北半を流れる札内川,戸蔦別(とつたべつ)川などは谷口に広大な扇状地を形成して十勝平野で十勝川に合流し,南半を流れる川は直接海に注ぐ。このため,十勝平野からみると日高山脈は屛風を立てたように連なって見える。これに対し西側は数段の階段断層をなして海岸近くまで達する緩斜面で,沙流(さる)川,新冠(にいかつぷ)川などが谷をつくり,海岸段丘を切って海に注ぐ。
日高山脈北部は最高峰の幌尻岳(2053m)のほか,ピパイロ岳(1917m),戸蔦別岳(1959m)などを含み,最も標高が高く,氷期につくられたカールなどの氷河地形が広く分布し,高山的な山容を呈する。しかし芽室(めむろ)岳(1754m)以北では急速に高度が下がり,山容もおだやかとなって,日勝(につしよう)峠,狩勝峠に至っている。中部はエサオマントッタベツ岳(1902m),札内(さつない)岳(1896m)から南に連なり,カムイエクウチカウシ山(1980m)を主峰とし,コイカクシュサツナイ岳(1721m),ヤオロマップ岳(1794m)などを経てペテガリ岳(1736m)へ至る。深い谷が両側に連なり,稜線はやせて急峻な山地をなす。カール地形は主として脊梁の東側にみられる。南部は中ノ岳(1519m)以南で,ピリカヌプリ(1631m)を主峰とし,ソエマツ岳(1618m),神威(かむい)岳(1601m)を除くといずれも1500m以下の山からなる。明瞭なカール地形はトヨニ岳(1493m)以南ではみられなくなり,さらに十勝岳(1457m)や楽古(らつこ)岳(1472m)を経て襟裳岬に至っている。標高は低いが山地は急峻である。
日高山脈は中生代後期から第三紀にかけての日高造山運動でできた山脈で,脊梁部には日高変成岩が帯状に分布し,その両側にはジュラ系~白亜系の日高層群が広く露出する。森林限界はカール底付近(北部で標高1500m,南部で1600m)にあり,それ以下はエゾマツ,トドマツなどの密な針葉樹林からなっている。登山者も少なく登山道もないため,沢登りによってしか山頂に到達できない山も多い。種々の高山植物や,ヒグマ,ナキウサギなどの動物がみられるが,山脈西部の新冠川の新冠ダム,静内川の高見ダムの建設や森林伐採のための著しい林道開発によって,日高山脈の原始性は破壊される危険にさらされている。1981年山脈一帯は日高山脈襟裳国定公園に指定され,開発が規制されている。現在,山脈を横断する交通路としては根室本線と国道38号線が狩勝峠を越えるほか,北部の日勝峠を越える国道274号線と南端の襟裳岬を回る国道336号線がある。
執筆者:小野 有五
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北海道の脊梁(せきりょう)山地の南部を構成する高峻(こうしゅん)な山脈。北は佐幌岳(さほろだけ)(1059メートル)から南は襟裳岬(えりもみさき)に至り、延長150キロメートル余。主分水嶺(ぶんすいれい)は東に偏り、東側は十勝(とかち)平野に急傾斜し、平野と接する所には広大な高位扇状地面が展開して雄大な景観をみせる。西側は緩傾斜面で、一部階段状をなして太平洋岸の段丘に終わり、同山脈の奥深さを感じさせる。主峰幌尻岳(ぽろしりだけ)(2052メートル)をはじめ、2000~1500メートルの山嶺が連なり、頂上付近に氷食によるカール(圏谷)をもつものが多い。とくに戸蔦別岳(とつたべつだけ)(1959メートル)のカールでは二段のモレーン(氷堆石(たいせき))があり、日高山脈に二度の氷期があったことを示す。中軸部には混成岩、変成岩、深成岩からなる日高変成帯が山陵に沿い、その西に白亜紀層があり日高層群とよばれる。これが隆起し変成作用を受けて形成された。
日高山脈は北海道の東西交通の大きな障害となっているが、古くからの狩勝峠(かりかちとうげ)(644メートル)のほか、第二次世界大戦後は日勝峠(にっしょうとうげ)(1023メートル)が利用され、南の襟裳岬経由とともに3本の国道が開かれ、JRの根室(ねむろ)本線と石勝(せきしょう)線は新狩勝トンネルで結ばれる。専門家以外の登山はあまり行われないが、一部は日高山脈襟裳国定公園に指定されている。
[柏村一郎]
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