弥生時代の文様。1条の線あるいは2~二十数条の平行線を横方向にまっすぐのばし,C字状に反転して逆方向にまっすぐのばすことを反復する。反転部分が左右相称に並ぶとX字状を呈して美しい。中・近世の水の絵画表現に似ることからこの名があり,水を表したものと信じる人もある。畿内を中心とする地方の土器(壺(つぼ),壺の蓋(ふた),鉢),木器(容器,竪杵(たてぎね),ヘアバンド),骨角器(髪飾,弭(ゆはず)状角製品その他)や銅鐸にみられる。
土器の流水文には赤彩,篦(へら)描き(ともに前期),櫛描き(中期)の別がある。赤彩および先が3本以上に分かれた工具による櫛描きの流水文は,条線そのものを描くのに対して,先が1本の工具による篦描き流水文は,周囲をくぼませて条線を浮き出させた浮彫風という点で,木器の流水文と共通する。銅鐸の流水文は,鋳型に陰刻されるため銅鐸そのものでは条線が突出している。流水文にはいろいろの型がある。器(うつわ)などのように環状に連なっていて横方向に端のない面を飾る場合には,横方向連絡するタイプが選ばれ,銅鐸の身のように区画によって上下左右が閉ざされた面を飾る場合には,その空間のなかで完結する型が選ばれる。ただし環状の装飾面も縦に区画すれば容易に後者の装飾面に変わるから,土器の流水紋にも後者の型はみられる。
流水文は銅鐸の身を飾る文様の代表例の一つをなしており,さまざまな種類がある。古い流水文銅鐸数例には,環状面を飾る流水文をそのまま採用したため終端が現れてしまったものがあり,土器の流水文が銅鐸に採用されたことを想定させる。
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…
[文様と絵画]
銅鐸のほぼ全面は文様で飾られている。斜格(斜格子)文,綾杉文,各種の渦文(渦巻文),斜めの平行線を三角形のなかにみたした鋸歯文,平行線のS字状曲折をくりかえした流水文などである。古段階を経て中段階にいたると部分部分によって飾る文様がかなり定まっている。…
※「流水文」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加