浅野総一郎(読み)アサノソウイチロウ

デジタル大辞泉 「浅野総一郎」の意味・読み・例文・類語

あさの‐そういちろう〔‐ソウイチラウ〕【浅野総一郎】

[1848~1930]実業家。富山の生まれ。渋沢栄一の助力を得て官営深川セメント工場の払い下げを受け、浅野セメントを設立。海運・炭鉱・造船など事業を多角化し、浅野財閥を築いた。

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精選版 日本国語大辞典 「浅野総一郎」の意味・読み・例文・類語

あさの‐そういちろう【浅野総一郎】

  1. 実業家。越中国富山県)出身。渋沢栄一の後援で官営セメント工場の払い下げを受け、以後各種事業に着手して浅野財閥を築く。嘉永元~昭和五年(一八四八‐一九三〇

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「浅野総一郎」の意味・わかりやすい解説

浅野総一郎
あさのそういちろう
(1848―1930)

浅野財閥の創設者。富山県に生まれる。少年時代より商才にたけ各種の商業を営んだが失敗し、1871年(明治4)東京へ出奔した。やがて薪炭、石炭などの商売から渋沢栄一の知遇を得るなど、後日の発展糸口をつかんだ。1884年渋沢の助力により官営深川セメント工場の払下げに成功し、以後、革新的な努力を傾注して浅野セメント(後の日本セメント、現太平洋セメント)を国内随一のセメント・メーカーに発展させた。また1891年東洋汽船を設立、日本最初の太平洋定期航路を開設した。さらに1913年(大正2)鶴見、川崎沿岸150万坪(約500万平方メートル)の埋立て事業に着手、昭和初期までに完工させた(現在の京浜工業地帯の一部)。そのほか炭鉱、造船、製鉄電力、貿易などの事業へ多角的拡大を図り、浅野財閥を築き上げた。なお安田善次郎安田財閥の創設者)から多くの資金援助を受けており、両者の関係については「浅野はエンジンで、安田は石炭」などとも例えられた。

[小早川洋一]

『浅野泰治郎・良三著『浅野総一郎』(1923・浅野文庫)』『高橋亀吉著『日本財閥の解剖』(1930・中央公論社)』『斎藤憲著『稼ぐに追いつく貧乏なし――浅野総一郎と浅野財閥』(1998・東洋経済新報社)』


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20世紀日本人名事典 「浅野総一郎」の解説

浅野 総一郎
アサノ ソウイチロウ

明治・大正期の実業家 浅野財閥創設者。



生年
嘉永1年3月10日(1848年)

没年
昭和5(1930)年11月9日

出生地
越中国氷見郡藪田村(富山県氷見市)

別名
幼名=泰治郎,前名=浅野 惣一郎

経歴
2度養子に行き、商売も失敗を重ね、明治4年24歳で上京。竹の皮屋、砂糖水売りなど転々としたあと、7年横浜で石炭商を始めた。8年廃物のコークスを官営の深川セメント工場に売り込み、莫大な利益を得る。14年渋沢栄一の援助で深川セメント工場の払い下げを受け、17年浅野工場を設立、以後政府の保護もあり、皇居造営、陸軍要塞などセメント事業を拡大。31年安田善次郎の後援で安田銀行から融資を得て浅野セメント合資会社(のちの日本セメント)を設立、大正元年株式会社とし、ついで4年北海道セメント、12年浅野ストレート、日本カーリット、13年木津川セメントなどを設立。この間、大正2年から京浜鶴見地区150万坪を埋立てて造船、製鉄、海運、石炭、電力など多彩な事業を展開した。7年には浅野同族会社を設立、9年末で直接関係会社36、傍系会社50といわれる浅野財閥を形成した。戦後財閥は解体された。

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改訂新版 世界大百科事典 「浅野総一郎」の意味・わかりやすい解説

浅野総一郎 (あさのそういちろう)
生没年:1848-1930(嘉永1-昭和5)

実業家,浅野財閥の創設者。越中国藪田(現,富山県氷見市)に百姓医者浅野泰順の長子として生まれた。1871年(明治4)上京,お茶の水橋で水売を始め,竹の皮商から薪炭商へ転じ,コークスの売込みで成功した。渋沢栄一の知遇を得て,投機商人から産業資本家への道が開けた。渋沢の保証で官営深川セメント製造所を貸与され,84年払下げを受け,浅野工場(のちの浅野セメント)を設立した。生産設備を改善・増強し,業界の首位を占め日本のセメント王となった。同郷の銀行家安田善次郎の援助で96年東洋汽船を創立,太平洋航路を開き,豪華船天洋丸,地洋丸を就航させたが,第1次世界大戦後の不況で衰退し,その経営を日本郵船に譲った。1913年安田の協力を仰ぎ鶴見・川崎海岸の埋立て造成に着手し,16年浅野造船所,18年浅野製鉄所(ともに,のち日本鋼管に吸収合併)を設立するなど,多面的な産業王国を築いた。
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百科事典マイペディア 「浅野総一郎」の意味・わかりやすい解説

浅野総一郎【あさのそういちろう】

実業家。浅野財閥の創始者。富山の人。1871年,上京して商売をはじめ,薪炭を商っていたとき横浜ガス事業の廃物(コークス,コールタール)に着眼,その売込に成功。渋沢栄一の知遇を得て官営深川セメント工場を獲得(1898年,浅野セメント合資会社設立),のちセメント王となる。また同郷の安田善次郎の後援を受け,東洋汽船を設立(1896年)。その後,鶴見・川崎海岸の埋立てに着手(1913年),浅野造船所・浅野製鉄所(のちの日本鋼管)などを設立した。
→関連項目日本セメント[株]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「浅野総一郎」の解説

浅野総一郎
あさのそういちろう

1848.3.10~1930.11.9

明治・大正期の浅野財閥を築きあげた実業家。越中国生れ。1873年(明治6)横浜で薪炭・石炭販売店を開設し,実業家としてスタート。83年渋沢栄一の斡旋で工部省深川工作分局のセメント工場を借りうけ,翌年払下げをうけてセメント事業に乗りだし成功を収めた。その後金融面で安田財閥のバックアップをうけて磐城炭鉱・東洋汽船など事業分野を広げ,明治末から第1次大戦前後にかけて事業の範囲を急速に拡大した。また京浜工業地帯の埋立事業を行い傘下の企業を誘致し,臨海工業地帯の建設に貢献した。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「浅野総一郎」の意味・わかりやすい解説

浅野総一郎
あさのそういちろう

[生]嘉永1(1848).3.10. 富山
[没]1930.11.9. 大磯
日本セメント産業の創設者,のちの浅野財閥の総帥。 1883年官営セメント工場深川工作分局の払下げを受け,これを基礎に 98年浅野セメント合資会社 (日本セメントの前身) を設立。関連事業として磐城炭礦,東京瓦斯,浅野石油,東洋汽船を設立,さらに鶴見-川崎間の遠浅の海岸を埋立てて大工業地帯を造成し,製鉄所,造船所も設立した。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「浅野総一郎」の解説

浅野総一郎 あさの-そういちろう

1848-1930 明治-大正時代の実業家。
嘉永(かえい)元年3月10日生まれ。明治6年横浜で薪炭・石炭販売店をひらく。17年渋沢栄一の助力で官営深川セメント工場の払い下げをうけ,浅野セメント(のち日本セメント)として発展させる。安田善次郎の資金援助をうけて海運,鉱山,造船,鉄鋼,電力など多角的に事業を展開,一代で浅野財閥をきずいた。昭和5年11月9日死去。83歳。越中(富山県)出身。

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旺文社日本史事典 三訂版 「浅野総一郎」の解説

浅野総一郎
あさのそういちろう

1848〜1930
明治〜昭和初期の実業家
越中(富山県)の生まれ。1884年,官営の深川セメント製造所の払下げをうけ,日本セメント業の先駆をなした。特に第一次世界大戦に乗じて発展,浅野セメントを中心に50社をこえる浅野財閥を樹立した。

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367日誕生日大事典 「浅野総一郎」の解説

浅野 総一郎(初代) (あさの そういちろう)

生年月日:1848年3月10日
明治時代;大正時代の実業家。浅野財閥創業者
1930年没

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世界大百科事典(旧版)内の浅野総一郎の言及

【日本セメント[株]】より

…1873年(明治6)に大蔵省土木寮建設局が東京深川に建設した摂綿篤(セメント)製造所がその前身。83年浅野総一郎が同所を借り受けて経営し,84年には払い下げられ,渋沢栄一と共同の匿名組合浅野工場として発足した。その後93年には門司工場を建設,1903年には深川工場に日本最初の回転窯を設置するなど事業を拡張した。…

※「浅野総一郎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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